色のついた心

たいち そらの

文字の大きさ
上 下
2 / 3

社会人に慣れた頃

しおりを挟む
わぁ。今日から社会人だ!
わたしは高校卒業して就職に決めた。

初恋の相手のことも、吹っ切れていた。
思えば…長かったなぁ。
忙しく働き。毎日充実してた。
もう、恋とか。正直面倒くさい…とやさぐれてた。
誰々さんかっこいい~!きゃー!目がハートな
女子を見て、<はぃはぃ、良かったねー>って
冷めてる自分に、がっかりだ~。
初恋が濃厚すぎて。忘れ切れてない自分の心の奥底と
あの、まりの得意げな口ぶりを思い出すだけで…
ぅおーーー。わたし。バカ。完全もてあそばれたー。
って、確信する。

いい思い出として、忘れていこう。って決めたのに。
何かの拍子に。初恋の彼の笑顔が、声が。
空想にふけちまう。ばっかだなー。
ダメだ、ダメダメ!吹っ切れ!
次に進めないぞ!頑張れわたし!目指せリア充!
仕事も順調だし、毎日楽しんでるし!
大丈夫!前に進んでるよね?!

あー。雨だ~。
昔っから雨って…嫌いだ。暗~くなるし。
そういう日に限って、傘…なーい(泣)
ついてないっす。
”大丈夫?傘ないの?車まで入っていくといいよ”
な、な、な、なんだ?!
王子か?
わーーーわー(多分。目がキラキラになってる、わたし)
”だ、大丈夫です。走って行くんで!”
なーに断ってんだわたし!チャンスなのか?
てか、どなた?この声の優しい彼は…
”同じ会社なんだし、遠慮しないで。
 風邪ひいたら困るでしょ”と、ニコっと微笑んだ。
秒速、ドキューン(キラキラ)
か、か、か、かっこいい~!
いや、紳士だ!やばい。
しかーも、同じ会社だったのかー。気づかなかった…
わたし…鈍感。間違いない。
”す、すみません。い、いや、でも。あ、
 でわ。お、お言葉に甘えて…”おどおどした私に、
ニコっと微笑みを浮かべ。
そっと傘をさして、私が雨に当たらないよう、私側に傘を傾けてそっと歩き出してくれた。
チラッと見ると彼は右肩かなり雨に打たれ…濡れている。
あ~。申し訳なさハンパない。
ひたすら下を向き歩く。
社員用の駐車場まで5分もかかるかくらいなのに。
とても長く感じた。
なんだ?このドキドキ感は…
久しぶりに感じるドキドキ感。
まるで初恋の時のような。もーーー。
やっと駐車場についた。
”あ、ありがとうございました。助かりました”
”それはよかった”ニコっと微笑み。
もー王子じゃん!
とにかく、顔も王子、声も王子、話し方なんか貴公子か!
キュン死寸前。
こんな人、いたんだー。どこの部署だろう。
ダメだ。ダメ。私が相手にしてもらえるような
お方ではない。どこどー見たってそぅだろう。
つかの間の夢を…ありがとうっす。

翌日、会社のイベントが行われるとの回覧板が。
へー。バーベキューね~。面倒くさいなあ。
”こんにちわ”
ん?ん?ん?聞き覚えのある、優しいこの声…
横に立つ男性をチラ見…え?
あーーーーー!!あ、あ、あの傘の人!
や、や、もぅパニックだ。
と、とりあえずお礼言わなきゃ。
”こないだは、傘、ありがとうございました”
とっさに立ち上がってお礼をやっとの声で伝えた。
”気にしないで!”ニコっと微笑み。
いやーーー。その微笑み、ホント天使だわ。
”この、バーベキューの企画、僕が幹事なんだ。
 よかったら手伝ってくれないかな?”
な、今、なんと?目が点…
”わたし?ですか?”
”もちろん! もぅ1人を僕が決めていいと上に言われたからね。直ぐに、君のこと思いついたんだ”
ぬぉーーーーー。この顔で、この声で…言われたら…
断れないっすよーーー。
”わたしなんかに出来ることがあるなら。
手伝わせて頂きます”
って、緊張感ハンパなーい。
”自己紹介遅れたけど、僕は、営業企画室の 本多春樹
です。よろしくね。”ニコっと微笑む。
は~~。目が点。目が点。目がーーーーー。
ドラマか?ドラマの世界に迷い込んだのかわたし?
いや、まて。企画を2人で…準備したり…するのか…
うぉぉぉぉぉ!!ヤバ!ダメだ。もぅ。
妄想で限界値超えた(汗)
妄想で鼻血でそうや。バカだわたし。やめんかわたし。
あー。どうしよう、、、
って、ここまでの妄想、約2秒ほどね(失笑)
”今日から、企画考えたいんだけど、仕事終わってからに
なっちゃうんだけど。今日、大丈夫?”
は!我に返った!
”あ、はいっ!大丈夫です!”たぶん…声デカっ!
その様子を見て、フッと笑って
”よかった。じゃあ、夕飯食べながら、どう?
 ご馳走するよ”
な、なに?!ゆ、ゆ、夕飯!瞳孔が一気に全開っす。
デートか?デートみたいじゃないか!
いやいや、企画、企画。妄想走りすぎだぞ!バカ!
”あ、はぃ。ぁりがとぅござぃます”なんだか小さい声。
”じゃ、18時にオフィスの一階で待ってるよ。
仕事頑張ってね”
て、て、天使だ(目がうるうる)

”おい。なにボーッとしてんだよ”
んあ?なんだ?なんか…聞き覚えのある…声だな…
パッと見て…
”ぅお!な、な、なんで”と声でちゃった。
久我。同級生の久我が立っていた。
”僕も、この会社の社員なんだけど?!
 気づくの遅いなぁ。忘れないでねって言ったのに”
は?なんだこの男。くそ。色んな悪夢がよみがえるじゃねーか。なんなんだよ。嫌な予感しかしないのは私だけか?
”本多先輩って、かっこいいよな。上はもちろん同僚の間でも高評価なんだってさ。”
へー。
って、なんだよこいつ。
”だから、なに?”冷たく返事して!仕事に取りかかった。
”別に~”と意味深に伸ばし、
”ま、同僚なんで、よろしくね!ユミちゃん!”と去っていった。
って名前で呼ぶんじゃねーよ。図書館事件といい。
なんなんだよ。頭の中でプンスカしてた。

””えー、新入社員紹介するぞ~””と部長の声。
こんな時期に入るんだなぁと…思い始めたところで…
目を疑った。は?
””新入社員の さなだまり くんだ。皆よろしくな””
”さなだまりです!よろしくお願いしま~す!”
きゃは!じゃねーよ!
あ?あ?は?
こいつもかよーーーーーー。
もー、目が多分半開きの白目状態。
一番会いたくなかったやつナンバーワン(怒)
よりによって、ここに入社してくんじゃねーよ。
最悪だ。最悪だ。悪夢だーーーーー。
楽しいはずの…社会人生…オワタ…
白馬の王子様の姿も、今日の約束も…一瞬だけ真っ白になった。わたしの~人生~なんですか~。って
頭の中で歌ってる場合じゃない。
仕事に没頭し、頭から外そう、かかわらないようにしよう。ぅん。そうしよう。
”ゆ~み!一緒だね!”すっごくニコニコして近づいてきた。
””ゆみくん、さなだまりくんに仕事教えてやってくれ。
  頼んだぞ””と部長。
は?なんで、わたし?冗談じゃない。と心よ中に思いつつも。
”はぃ”と小さな声で答えた。
”ねーねー。久我も、一緒なんだってね!”
なんで、目がキラキラしてんだこいつ。
”そーみたいね”一言。
”冷たいな~!友達でしょ!仲良くしよーよ!ね!
 先輩!よろしくね!”
いちいちムカつくなこいつ。
てか、同じ会社に入ってくるなんてストーカーかよ。
”で、何すればいいですか~?先輩!”
それ、やめてくれ。
”あ、じゃあ、書類。書類の整理からしようよ”
と。まぁ。こんな感じで変な会社生活が始まった。
定時17:30。
あーーー。やっと解放される~。
あ!約束。18時だったな。さっさと片付けて、用意しなきゃ。
”ね~、ユミ~!今日、暇?ご飯、行かない?”
”あ、ごめん、用事あるから。また”
”ふ~ん。そっか。デート?”
チッ。危ない。舌打ちしそうになっちまった。
”違います?”つい、キツイ口調になった。
”あ、そっ”とまりも。
はー?イライラしながら、オフィス部屋を後にした。
そもそもなんで、イラつくあんたとご飯行かなきゃなんないんだよ。一生ごめんだ。つい、歩く足に力が入った。
エレベーターで、オフィスビルの一階に着くと、本多さんが待っていた。急いで小走りに
”すみません。お待たせしてしまって”
”大丈夫だよ!さぁ、行こうか”と微笑んで、優しく背中を支え押してくれた。
はぁ~。なんだろうこの優しさ。包まれる感じ。
一瞬背中に感じた温もりが…
怒りのいの字もないようなこの人…
にじみ出てる人格。参りました。
もぅ!一瞬でも、やば~い。
だ ダメだ。妄想してはいけない。
あ~。でも妄想しちゃう。綺麗な完璧な彼女がいるんだろうなぁ。って考えるだけで、かなり落ち込むバカなわたし。なにせ。男の人と付き合った事がない。
分からない。
”どうしたの?”と本多さんが優しくささやいてきた。
口がまたパクパクしてしまった。
”ごめん。無理に付き合わせてしまったかな?”
”いえ!とんでもない!新人さんが入って
 今日から仕事教えるようにと部長に言われて。
 少し疲れちゃったのかな~。あははは”
って、うそつき。本当はイヤなヤツに再会しちまったんだよ(怒)とは…決して言えない。
”そっか、新人教えるのは、とても大変だよね。
 すごく分かるよ”と微笑んだ。
ぅお!!ヤバし。この状況でこの優しさ。
なんだろ~。この人。本当に。出来る人だ。
駐車場に着くと
”車、ここ置いておいて大丈夫なら、乗って”
え?え?この、この、このお方と2人…
いや、ただの打ち合わせだ。ぅん。
”あ、ありがとうございます”
”いえ。どうぞ”とドアを開けてくれた。
はー?!何?帰国子女?王子様~(キラキラとまらん)
しかも、助手席か~い!
は、は、初。男性助手席。
ドキドキとまらなすぎる。
乗ったのを気遣い、そっとドアを閉めてくれた。
”何、食べたい?打ち合わせもあるからね、
 もし、よかったら、いい場所あるんだ。”ニコっ。
あわわわわわわ。声。ヤバ。このしっとりした声。
”なんでも、食べられます”って声でかーくなっちった。
”あはっ。君って、面白いね!なんか見てて飽きないよ”
え?は?なんだ?わたしおかしいこと言ったか?
なんかすごーく恥ずかしくて、顔…たぶんかなり赤い。
顔が熱いぜーーーー。
”じゃあ、和食だけどね!気兼ねなく打ち合わせ出来るから、行こうか”
”お、お願いします”
なんか、静かな曲が流れてる。
心地いいな。
この人といると、なんか、落ち着く。
ふわっと。包み込まれてる感じ。優しい空気。空間。
緊張感より…安心感だ。

特に、会話もなく。着いた。
”着いたよ”ニコっ。
なんで、この人…いつも微笑んでるの?

食事しながら、なんか、会話も楽しかった。
打ち合わせもして、なんだかんだ時間が過ぎた。
若い私を気遣ってか、22時になろうとしたところで
”もぅ、いい時間になっちゃったね。さて、
 帰ろうか!また、続きの打ち合わせは詰めて行こう”
と、お会計をいつの間にか済まされていて。
”あの、お会計”
”大丈夫だよ!付き合ってもらったお礼!ってことで!”
なんだってーー?おぃおぃ、、こんな人周りにいなかったんですけど。
年。いくつの人なんだろ。若く見えるけど。
やる事めちゃ紳士だわ。
帰りの車の中…しーん。でも、なんか。居心地悪くない。
もぅすぐ会社の駐車場。
”あ、あの。失礼なこと聞いてもいいですか”
年を聞きたかった。
”何?”相変わらず。ニコっ。
”あのー。本多さんって、いくつなんですか?”
かなり真顔だったらしい。
”あはは。僕はねー。34なんだ。おじさんだね”
って、優しく答えてくれた。
”え?そうですか。”
”ふふ。もっと上に見えた?”
”ぃえ。ぎゃ、逆です。若く見えたので。
でも、紳士な方だなと思って…”
”あっははは。紳士って。君って。本当に面白いね”
え?またわたし変なこと言ったの?
面白いってなんだー。普通の会話が出来てないのか?
わたしの10コ上かぁ。大人って。すごいな。
こんな大人になりたいな。
って、いつの間にか憧れ感ハンパなーい。
”着いたよ”ニコっ。
はっ。妄想中に着いた。
”ありがとうございました”
”い~え。こちらこそ。楽しい時間ありがとう!
また明日!会社でね。”
”あ、はぃ”
”新人さん教育頑張って!ストレス溜まったら
いつでも話聞くから!じゃ、おやすみ”ニコっ。
ほぁ~~。やばい。落ちた。わたしの中でなんか。
なんか。なんかが溶けた。
なんか、初めてみたいな感情?気持ち?
モヤモヤする。
しばらく駐車場に停めた自分の車から、動けなかった。
帰ろ~っと。
コンコン。窓叩かれた。
超ビックリした。心臓飛び出る。
んだよ。いい気分に浸ってたのに。誰だよ。
?久我?こんな時間に何やってんだこいつ。
かかわりたくないなー。面倒くさい空気がにおう。
そっと、少しだけ窓開けた。
”よ!”よっ!じゃねーよ。
”何?てか、こんな時間に何してんの?”
”いや~。資料間違っちゃってさー。残業ってやつ”
”あっそ。お疲れ~”エンジンかける。
”ちょっと、冷たいなぁ。ね、お願いがあるんだけど”
チッ。なんか窓開けたこと後悔中。
”何?”
”そこの駅まで、乗っけてくれない?”
”歩けるじゃん”
”いや、お願い。この、時間の電車に乗りたくてさ。
頼むよ”
もーーーーー。面倒くさいなぁ。
”早く乗ってよ”後ろにって言おうとしたら
もう横に乗ってるしーーーーー。
おめー。昔っから人の話聞く前に行動すんなーーー。
イライラする。
”よろしく!”ちょー笑顔。
くっそー。なんでわたしが振り回されんだ。
駅にむかった。たった、車で5分ほど。
わけーんだから走れよ(怒)
”着いたよ”イライラ隠せない。
”ありがとね、助かったよ!
あ、ねー。本多先輩と。付き合ってんの?”
はーーーーーー?この去り際に何言い出したんだこいつ。
”付き合ってません。会社のイベントの打ち合わせ”
”ふ~ん。そっ”って残し、ドアを閉めてホームに走って行った。
あーーーー。後味悪っ!!
だいたい、誰と付き合おうが、あんたに関係あるんかい。
ブツブツ頭の中で言いながら自宅に戻った。

はぁ。誰もいない部屋は寂しいなぁ。
お風呂入ってスッキリしよーっと。



 
しおりを挟む

処理中です...