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精霊暴走編
第5話 風の精霊
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カントリー風を思わせる可愛いらしい宿屋の食堂に、強面ごっついトトさんとルゥくん、その弟ルカくんと私達親子で円卓を囲んで座っている。
トトさんの背後には、やっぱり強面ゴッツイおじ様達が取り囲むように立っていて、こちらを威圧している。
(…怖いです)
「あんたが聖母か…」
ボソリとトトさんが呟いた。
(一部の人が勝手にそう呼んでるんです!)
何故こんな事になっているかと言うと、私がその場の乗りで『聖母の名のもと~』とか言っちゃったからである。
『嬢ちゃんが聖母!?どういうことだルゥ!』
トトさんが騒ぎだし、あれよあれよと言う間にお店にいたお客さん達も巻き込んだ為、仕方なしにルゥくんは事の経緯を話す事となった。
その後、何処からか現れたムキムキマッチョなおっさん達に取り囲まれてしまったのである。
(たぶん、普通にお客さんとして来ていたおじさんだと思う)
で、この状況である。
「んで、ちっこい嬢ちゃんが巫女か…」
トトさんが呟くたび、後ろの怖い顔のおじ様達がコチラを見るので困る。
(ひぃ~怖いよ~!!)
「あんたが聖母だと言うなら頼みがある!!」
バン!!と両手でテーブルを叩きつけ頭を下げるトトさん。
テーブルは亀裂が入り頭の形にへこんでしまっていた。
(えぇ~!!何やってるんですかー!!)
「話を聞きますから!!やめて下さい!!!!」
トトさんだけでなく、後ろの強面ゴッツイおじ様達まで頭を下げられてしまった。
(何だろう…ヤクザとかに頭を下げられてる気分です)
トトさんは頭を上げると、私の顔をジッとみて険しい表情をした。
「海が荒れ果てかれこれ10年まともに漁に出られねぇ。それと言うのも風の精霊が海で暴れまわっていてな、こっちの言うことなんか聞きゃしねぇ」
「あの…さっきのお魚とかは?」
「心配するな、今はコイツが何とか風の精霊に頼んで1時間ほど止めてもらってる」
ポンポンとルカくんの頭を撫で、ニッと笑った。
「その間に何とか漁に出ている。俺らが食う分は何とかなるんだが、他の市場に卸せねぇ。この町は元々豊かだ。海も山も畑もある。海を渡ればすぐ王都だ。だが他の町に品を売りに行けねぇと金が廻らねぇそうすっとどうなるか分かるか?」
「町が疲弊しますね」
「そうだ。今のままでも生きて行くのには困らねぇだろうな。だがそれもいつまでもつか分からん。だいたい風の精霊ってのは、気まぐれな奴で頼んだ所で漁に出られるどうかも分かったもんじゃない。んでだ!!あんたの出番ってわけだ!」
「はぁ、私が精霊にお願いするんですね」
(つい今朝方、精霊歌はしばらく御免だなって思ったばかりなのに)
「頼めるか?」
私があからさまに嫌な顔をしたのでトトさんは不安げな顔でこちらの様子を伺っている。
その耳は小さくショゲていた。
そう!トトさんにもフサフサの耳があった。
ただその耳はルゥくんやルカくんのような大きさはなく、人の耳ほどの小さいものだった。
(ルゥくんの叔父さんなんだからふさふさに決まってるわよね…尻尾はどうなっているんだろう?)
トトさんの尻尾は服に隠れているのか見えなかった。
きっと黒くて立派なもふも…尻尾なんだろう。
(見えないなぁ)
私が違うことに気を取られているのに気づいたのかルゥくんはジト目で肘でコツいてきた。
(…う、別にトトさんにもモフモフしようとか思ってないよ?ただちょっと見たいなぁ…ちょっとだけなら触ってもいいかなぁ)
「おい」
「…ごめん」
小声でルゥくんに謝って、私はトトさんの言葉を思い出していた。
(大変なんだろうけど…でも)
「嫌なわけじゃないですよ?ただ精霊歌ってすごく疲れるんです。朝に歌ってるんで今から歌うのはちょっと…」
「ああ、そりゃ今から頼むとは言わねぇよ。もう夜も更けた、今日はゆっくり休んで考えてくれねぇか?」
「そうですね、分かりました」
(まぁ~間違いなく歌うことになるのだけど)
一宿一飯の恩もあるし、何よりルゥくんとルカくんの故郷。
ルゥくんにはお世話になりっぱなしだし、それに…精霊歌歌ったらもふもふさせてくれるかもしれないという下心もある。
(…ぐふふふふふ。ルゥくんでもルカくんでもどっちでもいいよぉ~)
ゾクリ!!と寒気を感じたのか、ルゥくんとルカくんが青い顔で、ブルッと身震いをしていたのであった。
宿屋での話しを終えた私達は、ルゥくんの家に戻っていた。
ソファに腰かけると、子供達も疲れていたのだろう一緒になってごろごろしている。
今日もなんだかんだと慣れない土地で疲れた。
いつになったら家に帰れるんだろう、まだ2日目だけどすごく長く感じる。
(…お風呂でほっこりしたい)
いつも当たり前のようにしていたことが出来なくて、精神的にも疲れてくる。
(あ~そうだ、いい加減オムツが無くなりそうだったんだ。こっちのオムツってやっぱり布かな?紙オムツあるといいな。明日、ルゥくんに頼んで市場に買い物に行こう……お金ないけど)
「はぁぁ~お風呂入りたいなぁ」
「お風呂?あるよ。こっち」
予想外だった。
ルカくんは当然のように答えて、お風呂場まで案内してくれた。
それは檜風呂を思わせる木のお風呂だった。
ただ、蛇口がない。
その代わりに浴槽縁に、小さな精霊さんが2人チョコンと足をブラブラさせながら座っていた。
(可愛い~!!)
手のひらサイズの精霊さんに疲れも吹っ飛んだ。
《おふろ?はいるの?》
「うっうん!!」
《わ~い》
水の精霊さんが水をジャバジャバだして、火の精霊さんがその水を温かくしている。
あっという間にお湯を張り終えた精霊さん達は、また縁に座って足をバシャバシャさせ遊び始めた。
(成る程。精霊さんが風呂自動代りなのね!便利ね~温度も丁度いい湯加減だし)
「杏ちゃん!苺ちゃん!お風呂入るよ~」
「やった~お風呂入りたかったの~」
「は~い!ちゃいちゃい!」
と私達が服を脱ぎ出したので、ルカくんは顔を真っ赤にして慌てて出て行こうとしていた。
もちろん私がガシッと掴んで離さないのだけど。
「どこ行くの?ほらお風呂入るよ!」
「えっ!?俺も!!ちょっまっ」
問答無用に服を剥いでいく。
「なに恥ずかしがってんの?まだ子供でしょ!」
「うわぁー!!俺7才なんだぞ!!」
「子供じゃない」
「にいちゃーん!!!!助けてぇー!!!!」
かっぽーん!
因みに、ルゥくんとシツジは何やら話し込んでいるので助けは来ない。
その内容はあまり聞きたくない気がする。
諦めたルカくんは腰にタオルを巻き、不機嫌な顔をしている。
その頬は赤く染まっているのだった。
「ほらほら順番に洗ってくよ~」
まずは我が子達から綺麗に洗っていく。
するとビックリするほどもっこもこの泡の中に包まれてしまった。
「ぷっ、ふふふ!なにこれぇ~面白~い!」
「ねぇ~ね!ひつじさん!」
「うん!いっちゃんもひつじさん!ママ!これすごいねぇ!雲みたい!」
「ほんとだね~!ルカくん見てみて~!」
ふう~と泡に息を吹き掛けると、シャボン玉になって浴室内に舞った。
「…ねぇちゃん子供みたい」
「すごいよこれ!楽しい!こんな石鹸初めてだよ!」
はしゃぐ私達をルカくんは何処か戸惑いながらも一緒になって遊んでくれている。
「そろそろ流すよ~」
「ええぇ~!!」
子供達は残念そうだけど、浴室内は泡に占拠されてしまいそうな勢いで増えている。
(ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったな)
早く流さないと泡に溺れそうだ。
まだまだ不満そうな子供達を洗い流すと、シャボン玉や泡はパチンと弾けて消えていった。
さて、ルカくんはまだ洗っていないのだが、頑なに拒否している。
杏ちゃんと苺ちゃんはまた自分達で小さな泡を作って遊びだしている。
私はルカくんを取っ捕まえて前に座らせた。
頭をワシャワシャと泡立てるともこもことまた泡が増えていく。
(これやっぱり楽しいなぁ!)
「綺麗な髪の毛だね~。お母さんかお父さんどっちに似たの?」
「――どっちも違う。変な色だろ?兄ちゃんやトト叔父さんみたいな色じゃないし」
何やら逆鱗に触れてしまったみたいです。
ルカくんの濡れた耳がシュンと小さく項垂れてしまった。
確かにルゥくんは銀色に黒が混じった感じだし、叔父さんは完璧に目も髪も黒。
少し気になったんだけど、両親のどっちかが金髪なのかな程度にしか思っていなかった。
(お母さんは金髪じゃないのか…)
「私はすごく綺麗だと思うよ」
「……」
(泣いてる?)
バサァーとお湯をかけて泡を洗い流すと後ろからギュッと抱き締めた。
「ルカ君の髪も尻尾も耳も私は好きな色だよ。だから泣かないの!お母さんだって同じように言ってたでしょ?」
「――母さん、覚えてない。小さい時に死んだから。…それに、泣いてないからな!!あと離れろぉー!!!!」
(チッ!!さりげなく頬で耳をスリスリしてたのに気づいたか!!)
スベスベしていて気持ち良かったです。
「ほらほら!体洗うわよ~」
「えっ!!それくらい自分でできる!!離れろ!!!!なんだその怪しい手の動きは!!!!」
「綺麗にしたげるよ~尻尾とかしっぽとかシッポ」
「尻尾だけじゃねーかー!!!!」
残念だけど、からかうのはこれくらいにしといて、私は自分を洗うのだった。
「…ありがと」
とっても小さな声でボソっとルカくんが言った。
私はその言葉ににっこりと微笑み、またルカくんをぎゅ~と抱きしめるのだった。
「やめろぉ~!!!!」
その後、湯船に子供達とゆっくり浸かって、上がろうとするルカくんを引きずり込んで一緒にのんびり入ったのだった。
お風呂からあがると何やらデッドヒートしている2人が居たが完全スルーしとこう。
こっちに飛び火しそうだ。
「ルカくん、私達が寝る部屋ある?」
「うん!でもいいの?兄ちゃん達…」
「ほっときなさい!巻き込まれるわよ!」
「うん、…それはイヤだな」
「ママぁ眠い~」
目を擦りながら欠伸をする杏ちゃんを、ルカくんが手を繋いで寝室へと連れていく。
それだけで絵になる可愛い光景に胸がキュンとときめいた。
案内された部屋はとっても可愛いらしく、多分女性の部屋じゃないかな?花柄で統一されている。
「…母さんの部屋だったんだって、でも今は空き部屋だから好きに使って」
「ありがと!」
「ベットおっきー」
「ふかふか~」
子供達はベッドの上でポヨンポヨンしている。
「お兄ちゃん!早く!」
「にぃ~にぃ!ねんねよ~」
「えっ!?俺は…」
「いいからいいから!一緒に寝よ!」
杏ちゃんも苺ちゃんもすっかりルカお兄ちゃんとなついて、一緒になって手招きしている。
そんな2人にルカくんは嬉しそうに笑った。
私達が静かに寝入った頃。
ルゥくんとシツジが寝ている私達の顔を覗きこんでいた。
「ルカが何で一緒に寝てるんだ?」
《さぁ?何故でしょう?》
ルカくんをサンドイッチするように、苺ちゃんと杏ちゃんが寝ていて、苺ちゃんの隣に私が寝ていた。
《意外なライバル登場ですね!》
「だから違うと言っているだろ!」
《誰しも最初はそう言うんです!ですが!気付いた時には時、既に遅し!ですよ!子供と言えど男の子です!侮れません!!》
「まだ子供だ!それに、俺は違うと言っているだろ!何度言わせる気だ!」
《ハッ!まさか…私の気を引こうと?いくら私が美しいからと…いえ、惚れてしまう気持ちは分かりますよ!ですが私にはそっちの気は生憎ありません!》
「な、ふざけるな!誰がお前なんか!俺は女が好きだ!!この、へぼ精霊!!」
《あ~、好きだという気持ちの裏返しと言う奴ですね!》
「冗談じゃない!いい加減にしろよ…」
女性の寝ている部屋に無断で入っただけでは飽き足らず、くだらない話を延々と話し続けられ…目が覚めてしまった。
(――煩い!!コイツらは私達が寝てるのを完全に忘れているようね?)
ぎゃあぎゃあと耳元で騒ぎ立てる二人に、私は顔を引きつらせてにこりと笑った。
《風の精霊さん!!コイツら家の外に叩きだして!!!!》
「えっ!?」
《まっ!?》
「《ギャーーー!!!!!!!!》」
夜、二人の悲鳴が木霊すのだった。
次の日の朝、散歩をしていたお爺さんが道の真ん中で倒れている2人を発見していた。
寝ている子供達を起こさないよう起きると、鏡の前で桶に水を精霊に頼んで入れてもらい、洗顔を済ませた。
ふと鏡を見るとお肌のはりが良いような気がする。
というより若い気がする。
(うん!20代くらいかしらね!!)
初めに若いだのなんだの言ってたのが何となく理解できたけど、でも十代にはどう考えても見えない。
(若返るのはいいけど、帰ったら浦嶋太郎にならないだろうね?地球に帰ったらお婆ちゃんとかだったらどうしよう!)
桶の水を外に流し、台所へと向かった。
(えーとこれは冷蔵庫?なのかしら?)
小さな氷の精霊さんが木箱の上にやっぱりチョコンと座っている。
開けると、冷たい空気がふわりと肌に伝わって、中には野菜やお肉、お魚が色々入っていた。
キッチンの角にはパンが沢山入った籠があった。
「ん~サンドイッチでも作るか」
火の精霊さんに釜戸に火をいれてもらう。
冷蔵庫の中に卵が無かったので、何かのお肉の燻製、ベーコン?をフライパンで焼いていく。
(なんのお肉なんだろう?)
ホウレン草のような形の葉っぱをかじってみると、シャキシャキしていてレタスのようで、味はほんのり甘かった。
葉っぱを水洗いして置いておくと、パンを軽く焼いて真ん中に切れ目を入れ、葉っぱと焼いたベーコン?を挟んだ。
多分これだけでも充分美味しいだろうけど、冷蔵庫の中にチーズがあったのだ!チーズを切ってお箸に突き刺し、釜戸の火で直接炙りとろりと溶けたところでパンに乗せた。
「パンが焼けたらもっと良いんだけどなぁ」
香りも見た目も食欲をそそるサンドイッチの完成!!
匂いに釣られたのか、子供達がぞろぞろと起きてきてテーブルの上に用意された朝御飯に釘つけになっていた。
「美味しそう~!!お腹空いた~」
「うわぁ~おいちそ~」
「これ、姉ちゃんが作ったの!?」
「そうよ~ごめんね勝手に使っちゃって、さぁ!朝ごはんにしよう!」
「いっただきま~す!!」
(うん!美味しい!!なんのお肉か分からないけどジュウシ~だわ!)
子供達もモリモリ口に頬張っている。
美味しくサンドイッチを食べていると、昨夜何処かに飛んでいったルゥくんとシツジが帰ってきた。
「町の反対側まで飛ばされたぞ!」
《まったくビックリしましたよ》
「あっお帰り、ご飯食べる?」
「あ、あぁ。貰おうってそうじゃない!!」
「食べないの?」
「兄ちゃん美味しいよ!」
「おいし~よ!」
「ねぇ~!」
「あぁ~もう!!食う!!食べるって!!」
「はいはいどうぞ」
ルゥくんは大きな口でかぶり付き驚いた顔をした。
「美味い!!お前が作ったのか!?」
「他に誰がいるのよ?ただ焼いて乗せただけでしょ。誰でも出来るわよ?」
普通のサンドイッチなんだけど、こっちの世界では挟んで食べたりしないのだろうか。
「この肉は旨いんだが、火加減が難しいんだ。俺でもここまで良い味は出せない!」
「そうなの?普通に焼いただけなんだけど…」
《いいお嫁さんになりますね!》
「またその話か!」
《ルゥ…私の事は諦めてください。カリン様なら応援しないでもないですから》
なにやら思い詰めた様子のシツジに、何故かルゥくんは拳を握りしめふるふると震えている。
「……」
(…何の話ですか?昨夜2人で一体何の話をしていたんだね?)
「んで?それはそうと、どうするの?風の精霊!!」
変な空気に耐えきれず、話題を変えようと二人の間に割って入った。
シツジを睨んでいたルゥくんの目線が私に移されると、表情が緩んだような気がした。
「頼んでいいのか?」
「何言ってんの?当たり前でしょ?お世話になってるのに」
「そうか!それなら食べたら早速頼む!王都にも出来るだけ早く着きたいしな」
「は~い!」
私はまた食べかけのサンドイッチを口に頬張った。
ルゥくんが意外と大食いだった。
作ったサンドイッチが足りずに、結構な量をもう一度作ったのだった。
朝御飯の後片付けを終わらせて、皆で港の方へとやって来た。
町中とは違って、スゴい風が吹き荒れている。
「うわぁ凄い風ね~!」
防風壁の役割を果たしていたと思われる木々は無惨にもなぎ倒され、その倒れた木々が飛び交っている。
(ここだけ台風直撃って感じね)
精霊の加護のお陰で、私達の回りだけ円を描くように風が止んでいた。
「どうしようかしら」
荒れ狂う海を眺めながら一点をジッと見つめると、何となくすごく遠くに何かの気配を感じた。
「何がだ?」
ルゥくんは私の見つめる先を見るが、恐怖を感じるくらいの大波しか見えなかった。
「風の精霊さんすごく遠くにいるみたい。ここで歌っても聞こえるかな~?」
海の向こうに、目を凝らして見ると何やら激しく動き回っている物が見えたような気がする。
それが恐らく風の精霊だろう。
「なら、トト叔父さんに頼んで船を出してもらうか」
「トトさん船持ってるの?」
「もともと漁師だからな」
「俺が走ってトト叔父さんに言ってくる!!」
ルカくんが宿屋に向かって走って行った。
その速いこと、さすが獣人!!身体能力半端ない!!
でっものの数分でルカくんとトトさんは地響きと砂埃りを上げて帰ってきた。
(ルカくんが追われてるように見えるのは気のせいだろうか…。)
「おぅ!!海に出るんだってな!!風の精霊ぶっ飛ばしてくれるんなら何でもするぞ!!」
「ぶっ飛ばしたらダメでしょ!」
トトさんは豪快に笑いながら港にある自分の船まで案内してくれた。
「船が転がってる…」
「ママ、お船壊れてる?」
「たぶん大丈夫。風で横に倒れただけだと思う」
トトさんは何の迷いもなく岸に上がっている船を軽々と持ち上げ海に投げ捨てた。
「ええぇ!?」
(今のなに!私いらないでしよ!!トトさんなら風の精霊ぶっ飛ばせるよ!!)
私が絶句している間に、皆さん軽々と荒波に揉まれている船に飛び乗っていく。
「嬢ちゃん達早く乗れ!海が荒れてんだ早くしねぇとまた岸にあがっちまう!」
(…うん無理。どんだけ跳躍力あるんですか!船と海の間、結構な距離あるよ!!)
「何をしてるんだ!!早く乗れ!!」
「ごめん無理。大丈夫あなた達だけで風の精霊ぶっ飛ばせるよ」
「また何を訳の分からん事言ってるんだ!!風の精霊ぶっ飛ばせたらこんな事になってないだろ!」
(ごもっともです。これ跳ぶの?ジャンプするの?いくら精霊の加護あっても、無理でしょ!!)
泣きそうな顔でルゥくんを見上げた。
「な、何なんだ!」
「船まで跳べない~」
「はっ?」
「あんなとこまで無理!怖くて跳べないってか死ぬよ私!!」
「っ!な、泣く事はないだろう!跳べないならそう言え!」
「だってぇ~」
ルゥくんは溜め息をつくと杏ちゃんと苺ちゃんを抱き上げ軽々と船まで跳んでいき、すぐに戻ってきた。
「行くぞ!」
そう言うとヒョイっと私をお姫さま抱っこで抱き上げた。
まさかこの歳になって初めてお姫さま抱っこ経験するとは思わなかったよ。
「しっかり掴まれ!!落ちるぞ!!」
(そっそれは困る!!えぇ!!怖いからガシッと掴まっときますよ!!)
私はルゥの首に手を回し、しがみついた。
その瞬間、体が宙に浮く感覚に襲われる。
「うきゃぁぁぁぁー!!!!」
(い~や~だ~!!私は絶叫系ダメなのよ~!!
若い頃は普通に乗ってたけど、今は無理ぃ~!!)
「おい!カリン!!もう着いたぞ?」
「ふぇ?」
ボロ泣きしながら顔を上げると船の上だった。
マジで怖かった、ものすごく高かった。
(あれはジャンプって言わない落ちるって言うのよ!!)
ボロボロ泣きながらルゥくんを睨みつけた。
「わっ悪かった。少し高く跳びすぎた。そんなに泣くな!」
「少しどころじゃなかったわよ~!!」
体が震えて仕方がない。
一瞬だったけど、あんな荒れ狂った海に向かって跳ぶとか…
ルゥくんは悪いと思ったのか、ずっと抱きついたままの私の頭を、泣きやむまでずっと撫で続けてくれたのだった。
「落ち着いたか?」
「うん…。ごめん、もう大丈夫」
一体私は何をやってるんだ…恥ずかしいたらありゃしない。
「――もふもふしていい?」
そしてどさくさ紛れに尻尾を要求。
「はぁ!?おま…ああクソ…少しだぞ!」
(勝った!!)
そりゃあんだけ泣いた後なら嫌とも言えまい。
「えへへ~ありがと~」
(ふわふわぁ~最高の癒しだよ)
私はルゥくんの尻尾に顔を埋めて、ふわっふわの感触をその肌で感じるとようやくガチガチの体から力が抜けたような気がした。
「…良い匂い」
(そう言う事、言うなよな…)
「おう!お前らイチャつくのもそろそろいいか?」
「兄ちゃん…」
「杏ちゃんもモフモフする~!!」
「いっちゃんも~!」
《まぁいつものことですね!》
(反省。やっぱり一目は気にしよう!)
さすがに顔が火を吹きそうです。
なのにルゥくんは顔色一つ変えずにもふもふされている。
(最初あんなに照れて嫌がってたのに…私だけ照れてなんか面白くないなぁ)
ルゥくんの尻尾を抱きしめながら子供達を見ると…ルカくんが我が子達に襲われているけど、まぁ放っとこう。
じゃれてるだけだし、ルカ君そこまで嫌がってないから。
「おう!!この辺で大丈夫か?」
「あっ!はい!!すみません!!頑張らせて頂きます!!」
「おっおう!頼んだぞ!!」
私がビービー泣いて、もふっている間に船は沖へと進み岸から大分離れていた。
無事にここまで来れたのは、波を静かにしてくれた、ルカくんのお陰だろう。
(私がするべきでした…)
ルゥくんの尻尾から離れて立ち上がると、すぐ近くに風の精霊の気配を感じられた。
海は大渦を巻き色んな物を呑み込んみ砕いていく。
静かに深呼吸すると風の精霊さんに願いながら言葉を発した。
その言葉は自然と精霊歌へと変化していく。
後はただひたすら歌うだけ。
「うわぁ!スゴい!!なんて綺麗なんだろ!!」
「ルカ!!気持ちは分かるが静かにしろ!」
「ごめん!兄ちゃん」
「おぅ…こいつは…驚いた」
皆さんやっぱり精霊歌に聞き惚れていらっしゃるのだけど…精霊との会話は面倒なものだと理解した。
《風の精霊さん、暴風止めてもらっていいですか?》
《お主誰じゃ!いっちょまえに精霊歌なんぞ歌いおって!!》
《花梨といいます、んで?止めてくれるの?》
《なんじゃその態度は!!》
《ごめん。疲れるのよこれ。えっと貴方は風の長なの?》
《まあ良い。長はどこぞ行って帰ってきて居らぬ。長に用であったのか?》
(あれ?確か水の長もいなかったよね?2人とも何してるんだろう?)
《とにかく、暴風止めて下さい!》
《良いぞよ》
《へっ?いいの?》
《うむ構わぬ。ちょうど飽きていた》
《そっそう…》
(飽きたって…町の人達が聞いたら怒りそう)
《後でやっぱり暇だって暴風にしたりしないでよ》
(氷と雪の精霊も似たような事を言ってたしなぁ)
《二言は無いぞ!》
とは言ってもこのままなのも心配なので私は風の精霊に一つ提案することにした。
《じゃあ、約束よ。暇だったら私の所に遊びに来て?その方がいくらかマッシだわ…》
《うむ!了解した》
こんなんでいいんだろうか?と思うが成るようにしかならない。
歌い終わって、皆に向き直ると、荒れていた風は静まり、空は晴れ渡っていた。
私は疲れてその場に座り込み、駆け寄った子供達を胸に抱いた。
トトさんの背後には、やっぱり強面ゴッツイおじ様達が取り囲むように立っていて、こちらを威圧している。
(…怖いです)
「あんたが聖母か…」
ボソリとトトさんが呟いた。
(一部の人が勝手にそう呼んでるんです!)
何故こんな事になっているかと言うと、私がその場の乗りで『聖母の名のもと~』とか言っちゃったからである。
『嬢ちゃんが聖母!?どういうことだルゥ!』
トトさんが騒ぎだし、あれよあれよと言う間にお店にいたお客さん達も巻き込んだ為、仕方なしにルゥくんは事の経緯を話す事となった。
その後、何処からか現れたムキムキマッチョなおっさん達に取り囲まれてしまったのである。
(たぶん、普通にお客さんとして来ていたおじさんだと思う)
で、この状況である。
「んで、ちっこい嬢ちゃんが巫女か…」
トトさんが呟くたび、後ろの怖い顔のおじ様達がコチラを見るので困る。
(ひぃ~怖いよ~!!)
「あんたが聖母だと言うなら頼みがある!!」
バン!!と両手でテーブルを叩きつけ頭を下げるトトさん。
テーブルは亀裂が入り頭の形にへこんでしまっていた。
(えぇ~!!何やってるんですかー!!)
「話を聞きますから!!やめて下さい!!!!」
トトさんだけでなく、後ろの強面ゴッツイおじ様達まで頭を下げられてしまった。
(何だろう…ヤクザとかに頭を下げられてる気分です)
トトさんは頭を上げると、私の顔をジッとみて険しい表情をした。
「海が荒れ果てかれこれ10年まともに漁に出られねぇ。それと言うのも風の精霊が海で暴れまわっていてな、こっちの言うことなんか聞きゃしねぇ」
「あの…さっきのお魚とかは?」
「心配するな、今はコイツが何とか風の精霊に頼んで1時間ほど止めてもらってる」
ポンポンとルカくんの頭を撫で、ニッと笑った。
「その間に何とか漁に出ている。俺らが食う分は何とかなるんだが、他の市場に卸せねぇ。この町は元々豊かだ。海も山も畑もある。海を渡ればすぐ王都だ。だが他の町に品を売りに行けねぇと金が廻らねぇそうすっとどうなるか分かるか?」
「町が疲弊しますね」
「そうだ。今のままでも生きて行くのには困らねぇだろうな。だがそれもいつまでもつか分からん。だいたい風の精霊ってのは、気まぐれな奴で頼んだ所で漁に出られるどうかも分かったもんじゃない。んでだ!!あんたの出番ってわけだ!」
「はぁ、私が精霊にお願いするんですね」
(つい今朝方、精霊歌はしばらく御免だなって思ったばかりなのに)
「頼めるか?」
私があからさまに嫌な顔をしたのでトトさんは不安げな顔でこちらの様子を伺っている。
その耳は小さくショゲていた。
そう!トトさんにもフサフサの耳があった。
ただその耳はルゥくんやルカくんのような大きさはなく、人の耳ほどの小さいものだった。
(ルゥくんの叔父さんなんだからふさふさに決まってるわよね…尻尾はどうなっているんだろう?)
トトさんの尻尾は服に隠れているのか見えなかった。
きっと黒くて立派なもふも…尻尾なんだろう。
(見えないなぁ)
私が違うことに気を取られているのに気づいたのかルゥくんはジト目で肘でコツいてきた。
(…う、別にトトさんにもモフモフしようとか思ってないよ?ただちょっと見たいなぁ…ちょっとだけなら触ってもいいかなぁ)
「おい」
「…ごめん」
小声でルゥくんに謝って、私はトトさんの言葉を思い出していた。
(大変なんだろうけど…でも)
「嫌なわけじゃないですよ?ただ精霊歌ってすごく疲れるんです。朝に歌ってるんで今から歌うのはちょっと…」
「ああ、そりゃ今から頼むとは言わねぇよ。もう夜も更けた、今日はゆっくり休んで考えてくれねぇか?」
「そうですね、分かりました」
(まぁ~間違いなく歌うことになるのだけど)
一宿一飯の恩もあるし、何よりルゥくんとルカくんの故郷。
ルゥくんにはお世話になりっぱなしだし、それに…精霊歌歌ったらもふもふさせてくれるかもしれないという下心もある。
(…ぐふふふふふ。ルゥくんでもルカくんでもどっちでもいいよぉ~)
ゾクリ!!と寒気を感じたのか、ルゥくんとルカくんが青い顔で、ブルッと身震いをしていたのであった。
宿屋での話しを終えた私達は、ルゥくんの家に戻っていた。
ソファに腰かけると、子供達も疲れていたのだろう一緒になってごろごろしている。
今日もなんだかんだと慣れない土地で疲れた。
いつになったら家に帰れるんだろう、まだ2日目だけどすごく長く感じる。
(…お風呂でほっこりしたい)
いつも当たり前のようにしていたことが出来なくて、精神的にも疲れてくる。
(あ~そうだ、いい加減オムツが無くなりそうだったんだ。こっちのオムツってやっぱり布かな?紙オムツあるといいな。明日、ルゥくんに頼んで市場に買い物に行こう……お金ないけど)
「はぁぁ~お風呂入りたいなぁ」
「お風呂?あるよ。こっち」
予想外だった。
ルカくんは当然のように答えて、お風呂場まで案内してくれた。
それは檜風呂を思わせる木のお風呂だった。
ただ、蛇口がない。
その代わりに浴槽縁に、小さな精霊さんが2人チョコンと足をブラブラさせながら座っていた。
(可愛い~!!)
手のひらサイズの精霊さんに疲れも吹っ飛んだ。
《おふろ?はいるの?》
「うっうん!!」
《わ~い》
水の精霊さんが水をジャバジャバだして、火の精霊さんがその水を温かくしている。
あっという間にお湯を張り終えた精霊さん達は、また縁に座って足をバシャバシャさせ遊び始めた。
(成る程。精霊さんが風呂自動代りなのね!便利ね~温度も丁度いい湯加減だし)
「杏ちゃん!苺ちゃん!お風呂入るよ~」
「やった~お風呂入りたかったの~」
「は~い!ちゃいちゃい!」
と私達が服を脱ぎ出したので、ルカくんは顔を真っ赤にして慌てて出て行こうとしていた。
もちろん私がガシッと掴んで離さないのだけど。
「どこ行くの?ほらお風呂入るよ!」
「えっ!?俺も!!ちょっまっ」
問答無用に服を剥いでいく。
「なに恥ずかしがってんの?まだ子供でしょ!」
「うわぁー!!俺7才なんだぞ!!」
「子供じゃない」
「にいちゃーん!!!!助けてぇー!!!!」
かっぽーん!
因みに、ルゥくんとシツジは何やら話し込んでいるので助けは来ない。
その内容はあまり聞きたくない気がする。
諦めたルカくんは腰にタオルを巻き、不機嫌な顔をしている。
その頬は赤く染まっているのだった。
「ほらほら順番に洗ってくよ~」
まずは我が子達から綺麗に洗っていく。
するとビックリするほどもっこもこの泡の中に包まれてしまった。
「ぷっ、ふふふ!なにこれぇ~面白~い!」
「ねぇ~ね!ひつじさん!」
「うん!いっちゃんもひつじさん!ママ!これすごいねぇ!雲みたい!」
「ほんとだね~!ルカくん見てみて~!」
ふう~と泡に息を吹き掛けると、シャボン玉になって浴室内に舞った。
「…ねぇちゃん子供みたい」
「すごいよこれ!楽しい!こんな石鹸初めてだよ!」
はしゃぐ私達をルカくんは何処か戸惑いながらも一緒になって遊んでくれている。
「そろそろ流すよ~」
「ええぇ~!!」
子供達は残念そうだけど、浴室内は泡に占拠されてしまいそうな勢いで増えている。
(ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったな)
早く流さないと泡に溺れそうだ。
まだまだ不満そうな子供達を洗い流すと、シャボン玉や泡はパチンと弾けて消えていった。
さて、ルカくんはまだ洗っていないのだが、頑なに拒否している。
杏ちゃんと苺ちゃんはまた自分達で小さな泡を作って遊びだしている。
私はルカくんを取っ捕まえて前に座らせた。
頭をワシャワシャと泡立てるともこもことまた泡が増えていく。
(これやっぱり楽しいなぁ!)
「綺麗な髪の毛だね~。お母さんかお父さんどっちに似たの?」
「――どっちも違う。変な色だろ?兄ちゃんやトト叔父さんみたいな色じゃないし」
何やら逆鱗に触れてしまったみたいです。
ルカくんの濡れた耳がシュンと小さく項垂れてしまった。
確かにルゥくんは銀色に黒が混じった感じだし、叔父さんは完璧に目も髪も黒。
少し気になったんだけど、両親のどっちかが金髪なのかな程度にしか思っていなかった。
(お母さんは金髪じゃないのか…)
「私はすごく綺麗だと思うよ」
「……」
(泣いてる?)
バサァーとお湯をかけて泡を洗い流すと後ろからギュッと抱き締めた。
「ルカ君の髪も尻尾も耳も私は好きな色だよ。だから泣かないの!お母さんだって同じように言ってたでしょ?」
「――母さん、覚えてない。小さい時に死んだから。…それに、泣いてないからな!!あと離れろぉー!!!!」
(チッ!!さりげなく頬で耳をスリスリしてたのに気づいたか!!)
スベスベしていて気持ち良かったです。
「ほらほら!体洗うわよ~」
「えっ!!それくらい自分でできる!!離れろ!!!!なんだその怪しい手の動きは!!!!」
「綺麗にしたげるよ~尻尾とかしっぽとかシッポ」
「尻尾だけじゃねーかー!!!!」
残念だけど、からかうのはこれくらいにしといて、私は自分を洗うのだった。
「…ありがと」
とっても小さな声でボソっとルカくんが言った。
私はその言葉ににっこりと微笑み、またルカくんをぎゅ~と抱きしめるのだった。
「やめろぉ~!!!!」
その後、湯船に子供達とゆっくり浸かって、上がろうとするルカくんを引きずり込んで一緒にのんびり入ったのだった。
お風呂からあがると何やらデッドヒートしている2人が居たが完全スルーしとこう。
こっちに飛び火しそうだ。
「ルカくん、私達が寝る部屋ある?」
「うん!でもいいの?兄ちゃん達…」
「ほっときなさい!巻き込まれるわよ!」
「うん、…それはイヤだな」
「ママぁ眠い~」
目を擦りながら欠伸をする杏ちゃんを、ルカくんが手を繋いで寝室へと連れていく。
それだけで絵になる可愛い光景に胸がキュンとときめいた。
案内された部屋はとっても可愛いらしく、多分女性の部屋じゃないかな?花柄で統一されている。
「…母さんの部屋だったんだって、でも今は空き部屋だから好きに使って」
「ありがと!」
「ベットおっきー」
「ふかふか~」
子供達はベッドの上でポヨンポヨンしている。
「お兄ちゃん!早く!」
「にぃ~にぃ!ねんねよ~」
「えっ!?俺は…」
「いいからいいから!一緒に寝よ!」
杏ちゃんも苺ちゃんもすっかりルカお兄ちゃんとなついて、一緒になって手招きしている。
そんな2人にルカくんは嬉しそうに笑った。
私達が静かに寝入った頃。
ルゥくんとシツジが寝ている私達の顔を覗きこんでいた。
「ルカが何で一緒に寝てるんだ?」
《さぁ?何故でしょう?》
ルカくんをサンドイッチするように、苺ちゃんと杏ちゃんが寝ていて、苺ちゃんの隣に私が寝ていた。
《意外なライバル登場ですね!》
「だから違うと言っているだろ!」
《誰しも最初はそう言うんです!ですが!気付いた時には時、既に遅し!ですよ!子供と言えど男の子です!侮れません!!》
「まだ子供だ!それに、俺は違うと言っているだろ!何度言わせる気だ!」
《ハッ!まさか…私の気を引こうと?いくら私が美しいからと…いえ、惚れてしまう気持ちは分かりますよ!ですが私にはそっちの気は生憎ありません!》
「な、ふざけるな!誰がお前なんか!俺は女が好きだ!!この、へぼ精霊!!」
《あ~、好きだという気持ちの裏返しと言う奴ですね!》
「冗談じゃない!いい加減にしろよ…」
女性の寝ている部屋に無断で入っただけでは飽き足らず、くだらない話を延々と話し続けられ…目が覚めてしまった。
(――煩い!!コイツらは私達が寝てるのを完全に忘れているようね?)
ぎゃあぎゃあと耳元で騒ぎ立てる二人に、私は顔を引きつらせてにこりと笑った。
《風の精霊さん!!コイツら家の外に叩きだして!!!!》
「えっ!?」
《まっ!?》
「《ギャーーー!!!!!!!!》」
夜、二人の悲鳴が木霊すのだった。
次の日の朝、散歩をしていたお爺さんが道の真ん中で倒れている2人を発見していた。
寝ている子供達を起こさないよう起きると、鏡の前で桶に水を精霊に頼んで入れてもらい、洗顔を済ませた。
ふと鏡を見るとお肌のはりが良いような気がする。
というより若い気がする。
(うん!20代くらいかしらね!!)
初めに若いだのなんだの言ってたのが何となく理解できたけど、でも十代にはどう考えても見えない。
(若返るのはいいけど、帰ったら浦嶋太郎にならないだろうね?地球に帰ったらお婆ちゃんとかだったらどうしよう!)
桶の水を外に流し、台所へと向かった。
(えーとこれは冷蔵庫?なのかしら?)
小さな氷の精霊さんが木箱の上にやっぱりチョコンと座っている。
開けると、冷たい空気がふわりと肌に伝わって、中には野菜やお肉、お魚が色々入っていた。
キッチンの角にはパンが沢山入った籠があった。
「ん~サンドイッチでも作るか」
火の精霊さんに釜戸に火をいれてもらう。
冷蔵庫の中に卵が無かったので、何かのお肉の燻製、ベーコン?をフライパンで焼いていく。
(なんのお肉なんだろう?)
ホウレン草のような形の葉っぱをかじってみると、シャキシャキしていてレタスのようで、味はほんのり甘かった。
葉っぱを水洗いして置いておくと、パンを軽く焼いて真ん中に切れ目を入れ、葉っぱと焼いたベーコン?を挟んだ。
多分これだけでも充分美味しいだろうけど、冷蔵庫の中にチーズがあったのだ!チーズを切ってお箸に突き刺し、釜戸の火で直接炙りとろりと溶けたところでパンに乗せた。
「パンが焼けたらもっと良いんだけどなぁ」
香りも見た目も食欲をそそるサンドイッチの完成!!
匂いに釣られたのか、子供達がぞろぞろと起きてきてテーブルの上に用意された朝御飯に釘つけになっていた。
「美味しそう~!!お腹空いた~」
「うわぁ~おいちそ~」
「これ、姉ちゃんが作ったの!?」
「そうよ~ごめんね勝手に使っちゃって、さぁ!朝ごはんにしよう!」
「いっただきま~す!!」
(うん!美味しい!!なんのお肉か分からないけどジュウシ~だわ!)
子供達もモリモリ口に頬張っている。
美味しくサンドイッチを食べていると、昨夜何処かに飛んでいったルゥくんとシツジが帰ってきた。
「町の反対側まで飛ばされたぞ!」
《まったくビックリしましたよ》
「あっお帰り、ご飯食べる?」
「あ、あぁ。貰おうってそうじゃない!!」
「食べないの?」
「兄ちゃん美味しいよ!」
「おいし~よ!」
「ねぇ~!」
「あぁ~もう!!食う!!食べるって!!」
「はいはいどうぞ」
ルゥくんは大きな口でかぶり付き驚いた顔をした。
「美味い!!お前が作ったのか!?」
「他に誰がいるのよ?ただ焼いて乗せただけでしょ。誰でも出来るわよ?」
普通のサンドイッチなんだけど、こっちの世界では挟んで食べたりしないのだろうか。
「この肉は旨いんだが、火加減が難しいんだ。俺でもここまで良い味は出せない!」
「そうなの?普通に焼いただけなんだけど…」
《いいお嫁さんになりますね!》
「またその話か!」
《ルゥ…私の事は諦めてください。カリン様なら応援しないでもないですから》
なにやら思い詰めた様子のシツジに、何故かルゥくんは拳を握りしめふるふると震えている。
「……」
(…何の話ですか?昨夜2人で一体何の話をしていたんだね?)
「んで?それはそうと、どうするの?風の精霊!!」
変な空気に耐えきれず、話題を変えようと二人の間に割って入った。
シツジを睨んでいたルゥくんの目線が私に移されると、表情が緩んだような気がした。
「頼んでいいのか?」
「何言ってんの?当たり前でしょ?お世話になってるのに」
「そうか!それなら食べたら早速頼む!王都にも出来るだけ早く着きたいしな」
「は~い!」
私はまた食べかけのサンドイッチを口に頬張った。
ルゥくんが意外と大食いだった。
作ったサンドイッチが足りずに、結構な量をもう一度作ったのだった。
朝御飯の後片付けを終わらせて、皆で港の方へとやって来た。
町中とは違って、スゴい風が吹き荒れている。
「うわぁ凄い風ね~!」
防風壁の役割を果たしていたと思われる木々は無惨にもなぎ倒され、その倒れた木々が飛び交っている。
(ここだけ台風直撃って感じね)
精霊の加護のお陰で、私達の回りだけ円を描くように風が止んでいた。
「どうしようかしら」
荒れ狂う海を眺めながら一点をジッと見つめると、何となくすごく遠くに何かの気配を感じた。
「何がだ?」
ルゥくんは私の見つめる先を見るが、恐怖を感じるくらいの大波しか見えなかった。
「風の精霊さんすごく遠くにいるみたい。ここで歌っても聞こえるかな~?」
海の向こうに、目を凝らして見ると何やら激しく動き回っている物が見えたような気がする。
それが恐らく風の精霊だろう。
「なら、トト叔父さんに頼んで船を出してもらうか」
「トトさん船持ってるの?」
「もともと漁師だからな」
「俺が走ってトト叔父さんに言ってくる!!」
ルカくんが宿屋に向かって走って行った。
その速いこと、さすが獣人!!身体能力半端ない!!
でっものの数分でルカくんとトトさんは地響きと砂埃りを上げて帰ってきた。
(ルカくんが追われてるように見えるのは気のせいだろうか…。)
「おぅ!!海に出るんだってな!!風の精霊ぶっ飛ばしてくれるんなら何でもするぞ!!」
「ぶっ飛ばしたらダメでしょ!」
トトさんは豪快に笑いながら港にある自分の船まで案内してくれた。
「船が転がってる…」
「ママ、お船壊れてる?」
「たぶん大丈夫。風で横に倒れただけだと思う」
トトさんは何の迷いもなく岸に上がっている船を軽々と持ち上げ海に投げ捨てた。
「ええぇ!?」
(今のなに!私いらないでしよ!!トトさんなら風の精霊ぶっ飛ばせるよ!!)
私が絶句している間に、皆さん軽々と荒波に揉まれている船に飛び乗っていく。
「嬢ちゃん達早く乗れ!海が荒れてんだ早くしねぇとまた岸にあがっちまう!」
(…うん無理。どんだけ跳躍力あるんですか!船と海の間、結構な距離あるよ!!)
「何をしてるんだ!!早く乗れ!!」
「ごめん無理。大丈夫あなた達だけで風の精霊ぶっ飛ばせるよ」
「また何を訳の分からん事言ってるんだ!!風の精霊ぶっ飛ばせたらこんな事になってないだろ!」
(ごもっともです。これ跳ぶの?ジャンプするの?いくら精霊の加護あっても、無理でしょ!!)
泣きそうな顔でルゥくんを見上げた。
「な、何なんだ!」
「船まで跳べない~」
「はっ?」
「あんなとこまで無理!怖くて跳べないってか死ぬよ私!!」
「っ!な、泣く事はないだろう!跳べないならそう言え!」
「だってぇ~」
ルゥくんは溜め息をつくと杏ちゃんと苺ちゃんを抱き上げ軽々と船まで跳んでいき、すぐに戻ってきた。
「行くぞ!」
そう言うとヒョイっと私をお姫さま抱っこで抱き上げた。
まさかこの歳になって初めてお姫さま抱っこ経験するとは思わなかったよ。
「しっかり掴まれ!!落ちるぞ!!」
(そっそれは困る!!えぇ!!怖いからガシッと掴まっときますよ!!)
私はルゥの首に手を回し、しがみついた。
その瞬間、体が宙に浮く感覚に襲われる。
「うきゃぁぁぁぁー!!!!」
(い~や~だ~!!私は絶叫系ダメなのよ~!!
若い頃は普通に乗ってたけど、今は無理ぃ~!!)
「おい!カリン!!もう着いたぞ?」
「ふぇ?」
ボロ泣きしながら顔を上げると船の上だった。
マジで怖かった、ものすごく高かった。
(あれはジャンプって言わない落ちるって言うのよ!!)
ボロボロ泣きながらルゥくんを睨みつけた。
「わっ悪かった。少し高く跳びすぎた。そんなに泣くな!」
「少しどころじゃなかったわよ~!!」
体が震えて仕方がない。
一瞬だったけど、あんな荒れ狂った海に向かって跳ぶとか…
ルゥくんは悪いと思ったのか、ずっと抱きついたままの私の頭を、泣きやむまでずっと撫で続けてくれたのだった。
「落ち着いたか?」
「うん…。ごめん、もう大丈夫」
一体私は何をやってるんだ…恥ずかしいたらありゃしない。
「――もふもふしていい?」
そしてどさくさ紛れに尻尾を要求。
「はぁ!?おま…ああクソ…少しだぞ!」
(勝った!!)
そりゃあんだけ泣いた後なら嫌とも言えまい。
「えへへ~ありがと~」
(ふわふわぁ~最高の癒しだよ)
私はルゥくんの尻尾に顔を埋めて、ふわっふわの感触をその肌で感じるとようやくガチガチの体から力が抜けたような気がした。
「…良い匂い」
(そう言う事、言うなよな…)
「おう!お前らイチャつくのもそろそろいいか?」
「兄ちゃん…」
「杏ちゃんもモフモフする~!!」
「いっちゃんも~!」
《まぁいつものことですね!》
(反省。やっぱり一目は気にしよう!)
さすがに顔が火を吹きそうです。
なのにルゥくんは顔色一つ変えずにもふもふされている。
(最初あんなに照れて嫌がってたのに…私だけ照れてなんか面白くないなぁ)
ルゥくんの尻尾を抱きしめながら子供達を見ると…ルカくんが我が子達に襲われているけど、まぁ放っとこう。
じゃれてるだけだし、ルカ君そこまで嫌がってないから。
「おう!!この辺で大丈夫か?」
「あっ!はい!!すみません!!頑張らせて頂きます!!」
「おっおう!頼んだぞ!!」
私がビービー泣いて、もふっている間に船は沖へと進み岸から大分離れていた。
無事にここまで来れたのは、波を静かにしてくれた、ルカくんのお陰だろう。
(私がするべきでした…)
ルゥくんの尻尾から離れて立ち上がると、すぐ近くに風の精霊の気配を感じられた。
海は大渦を巻き色んな物を呑み込んみ砕いていく。
静かに深呼吸すると風の精霊さんに願いながら言葉を発した。
その言葉は自然と精霊歌へと変化していく。
後はただひたすら歌うだけ。
「うわぁ!スゴい!!なんて綺麗なんだろ!!」
「ルカ!!気持ちは分かるが静かにしろ!」
「ごめん!兄ちゃん」
「おぅ…こいつは…驚いた」
皆さんやっぱり精霊歌に聞き惚れていらっしゃるのだけど…精霊との会話は面倒なものだと理解した。
《風の精霊さん、暴風止めてもらっていいですか?》
《お主誰じゃ!いっちょまえに精霊歌なんぞ歌いおって!!》
《花梨といいます、んで?止めてくれるの?》
《なんじゃその態度は!!》
《ごめん。疲れるのよこれ。えっと貴方は風の長なの?》
《まあ良い。長はどこぞ行って帰ってきて居らぬ。長に用であったのか?》
(あれ?確か水の長もいなかったよね?2人とも何してるんだろう?)
《とにかく、暴風止めて下さい!》
《良いぞよ》
《へっ?いいの?》
《うむ構わぬ。ちょうど飽きていた》
《そっそう…》
(飽きたって…町の人達が聞いたら怒りそう)
《後でやっぱり暇だって暴風にしたりしないでよ》
(氷と雪の精霊も似たような事を言ってたしなぁ)
《二言は無いぞ!》
とは言ってもこのままなのも心配なので私は風の精霊に一つ提案することにした。
《じゃあ、約束よ。暇だったら私の所に遊びに来て?その方がいくらかマッシだわ…》
《うむ!了解した》
こんなんでいいんだろうか?と思うが成るようにしかならない。
歌い終わって、皆に向き直ると、荒れていた風は静まり、空は晴れ渡っていた。
私は疲れてその場に座り込み、駆け寄った子供達を胸に抱いた。
0
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