異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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120.足湯は楽しいよ

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「お?」

 そうしていると……不意に足の指先をつつかれた。
 見下ろすと、メダカほどの大きさの魚がウータの足に集まってきていた。

「これは……?」

「ヒーリングフィッシュというらしいですよ」

 ウータの疑問にステラが答える。

「お湯の中に棲んでいる魚で、悪い皮膚を食べてくれるそうです」

「へえ、ドクターフィッシュ的な奴なのか」

 日本にいた頃にテレビで見たことがあったが、直に目にするのは初めてである。
 ウータが興味深そうに見つめていると、魚がどんどん群がってきて、ウータとステラの足に吸いついてくる。

「おお、くすぐったい」

「ンッ……あっ……やあんっ……!」

 二人が……特にステラが鼻にかかったような声を上げる。
 どうやら、ステラはくすぐったがりなようだ。
 ヒーリングフィッシュが皮膚を撫でるたび、ピクピクと身体を震わせて甘ったるい声を漏らす。

「んあ……はんっ……あう……くううんっ……!」

 まるで男に愛撫されているような声を漏らし、身体をくねらせるステラ。
 ウータは他人事ではありながら、この場に自分以外の男がいなくて良かったとぼんやりと思う。

「ステラ、大丈夫?」

「だ、だひじょうぶ……はうんっ!」

「苦しいのなら、足を抜いたほうが良いんじゃないかな?」

「べ、別に苦しくはなひのでしゅ……ただ、くすったくて……!」

「うんうん、くすぐったいよね……何というか、ちょっと面白くなってきたよ」

 足をくすぐっただけでこの有様だ。
 もしも脇やら腹やらを撫でまくったら、どんな反応をするのだろう。

「…………」

 ウータの好奇心に火がついた。
 そっと指を伸ばして、ステラの首筋をツイーッと撫でる。

「ひゃあんっ!」

 ステラの身体が大きく跳ねた。

「う、ウータさんっ!? 何を……はううっ!」

「おお、ちょっと面白い」

 髪をつまんで、その先端でコショコショしてやった。
 さらに大きな反応が返ってくる。癖になりそうなリアクションだった。

「はううううううう~!」

「ういうい、うりうり」

「う、ウータさん……許してくださいいいいいいいい~!」

 そのままたっぷりと十分ほどステラを悶絶させて、ようやくウータが満足する。
 調教を……でなくて、悪戯を終えた時には、ステラは足を湯に突っ込んだまま息も絶え絶えに横たわっていた。

「も、もうおよめにいけません……」

「ああ、異世界にもそういう表現はあるんだね」

「はうう……」

「ああ、楽しかった……良いね、足湯。また来ようか」

 楽しみ方が完全に違っていたが……ウータは足湯に満足したようである。

「十分に楽しんだことだし……今日のところは、これくらいで宿に……」

「ああ、こんな所に居やがったか!」

「帰って…………うん?」

 足湯の入口から怒号が聞こえてくる。
 突然の不快音にウータが眉をひそめて振り返ると、そこに数人のドワーフが立っていた。

「君は………………ニワトコくん?」

「誰だそれは! 『嵐切』のデューラだ!」

 そこにいたのはニワトリのようなトサカ頭のドワーフである。
 背後には手下らしき他のドワーフが三人ほどいた。

「さっきはよくもやってくれやがったな! テメエのせいで、この俺様が初戦敗退だ!」

「えっと……もしかして、仕返しをしに来たのかな?」

 ウータがパチクリと瞬きをする。
 忘れかけていたが、流石に顔を見れば思い出す。
 そのトサカドワーフは武闘大会の一回戦で、ウータが倒したドワーフの男だった。

「この俺様を虚仮にしやがったんだ……ぶっ殺してやるから、覚悟しやがれ!」

「…………」

 どうやら、ウータを探してここまで追いかけてきたらしい。
 誰かに行き先を告げてきたわけでもないのに……聞き込みでもしたのだろうか。

「せっかく楽しかったのに……台無しだよね」

 リラックスしていたところに横やりを入れられて、ウータは困ったように眉尻を下げた。
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