82 / 105
連載
137.決勝戦だよ
しおりを挟む
控え室を出たウータが試合会場にいくと、そこにはすでに決勝戦の対戦相手であるエンジェが待ち構えていた。
「来たのね」
「来たよ」
「そう……残念だわ」
エンジェが持っているのはミスリル製の大剣である。
以前持っていた武器とは違う物だ。小柄なドワーフである彼女の身長よりも大きい。
「何というか……そういうでっかい武器を持っている女子ってちょっとロマンだよね。マンガとかでよく出てくるやつだね」
「何を言っているのかわからないわよ。ドワーフは女でも力持ちだから、これくらはい別に当然じゃない」
「ああ、そうなんだね。だったら問題ないね」
ウータが肩をすくめた。
外見と腕力が釣り合っていないくらい、魔法が存在する世界では何も不自然はない。
「それじゃあ、始めようか」
「いえ……審判がまだ来ていないわよ。試合が始められないわ」
試合会場にいるのはウータとエンジェのみ。審判役がまだ来ていなかった。
「あー……うん、ソウダネー」
「どうして、片言なの?」
「いやいやいや、知らないけどね?」
審判役のドワーフであれば、ウータの控え室で塵の山になっている。ここに来られるわけがなかった。
いくらウータでも、それを口に出すことはしない。
理由はわからないが怒られそうな気がしたからである。
「えー、お集まりの皆さん。すぐに審判が参りますのでもう少々お待ちください」
いつまでも始まらない試合に会場がざわつきだす。
運営側からアナウンスが入り、騒いでいる観客を落ち着かせる。
何人かの運営スタッフが審判役のドワーフを探しに行くが……もちろん、みつかるわけがない。
しばらくすると、別のドワーフが審判役として現れた。
「お待たせいたしました。私が代わりに審判を務めさせていただきます」
新たにやってきたのは女性のドワーフだった。
前の審判役のように高圧的な部分はなく、むしろ穏やかな口ぶりである。
「『土』の女神アースに誓って、公平な審判を行わせていただきます。それでは、お二人とも下がってください」
「…………」
「…………」
新しい審判の指示を受けて、ウータとステラが三メートルほどの距離を取って向かい合う。
ウータはいつも通りののんびりとした歩き方で、エンジェはどことなく足取りが重くて緊張したような歩き方で。
「改めて、確認です。本試合はミスリルの武器を使用した武術戦となります。魔法の使用は構いませんが補助的なものに限ります。純粋な魔法攻撃では有効打として認められない場合がありますのでそのつもりで」
わざわざ確認をしてくるあたり、やはり前の審判役よりも対応が丁寧である。
何となくではあるが……ウータはこれまでのように一方的に忖度をされない気がした。
(あの審判が特別酷かったのかな? まあ、死んだ人のことはどうでも良いけどね)
「それでは……決勝戦、試合開始!」
そして……試合開始が宣言された。
最初に動いたのはエンジェである。地面を蹴って、巨大な剣を振りかぶって斬りかかってくる。
その速度は機敏そのもの。身の丈以上の大剣を持っているとは思えないほどのスピードである。
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「…………」
ウータはどこか必死な形相で大剣を振り下ろしてくるエンジェに目を細めて、無言で後方に跳んだのであった。
「来たのね」
「来たよ」
「そう……残念だわ」
エンジェが持っているのはミスリル製の大剣である。
以前持っていた武器とは違う物だ。小柄なドワーフである彼女の身長よりも大きい。
「何というか……そういうでっかい武器を持っている女子ってちょっとロマンだよね。マンガとかでよく出てくるやつだね」
「何を言っているのかわからないわよ。ドワーフは女でも力持ちだから、これくらはい別に当然じゃない」
「ああ、そうなんだね。だったら問題ないね」
ウータが肩をすくめた。
外見と腕力が釣り合っていないくらい、魔法が存在する世界では何も不自然はない。
「それじゃあ、始めようか」
「いえ……審判がまだ来ていないわよ。試合が始められないわ」
試合会場にいるのはウータとエンジェのみ。審判役がまだ来ていなかった。
「あー……うん、ソウダネー」
「どうして、片言なの?」
「いやいやいや、知らないけどね?」
審判役のドワーフであれば、ウータの控え室で塵の山になっている。ここに来られるわけがなかった。
いくらウータでも、それを口に出すことはしない。
理由はわからないが怒られそうな気がしたからである。
「えー、お集まりの皆さん。すぐに審判が参りますのでもう少々お待ちください」
いつまでも始まらない試合に会場がざわつきだす。
運営側からアナウンスが入り、騒いでいる観客を落ち着かせる。
何人かの運営スタッフが審判役のドワーフを探しに行くが……もちろん、みつかるわけがない。
しばらくすると、別のドワーフが審判役として現れた。
「お待たせいたしました。私が代わりに審判を務めさせていただきます」
新たにやってきたのは女性のドワーフだった。
前の審判役のように高圧的な部分はなく、むしろ穏やかな口ぶりである。
「『土』の女神アースに誓って、公平な審判を行わせていただきます。それでは、お二人とも下がってください」
「…………」
「…………」
新しい審判の指示を受けて、ウータとステラが三メートルほどの距離を取って向かい合う。
ウータはいつも通りののんびりとした歩き方で、エンジェはどことなく足取りが重くて緊張したような歩き方で。
「改めて、確認です。本試合はミスリルの武器を使用した武術戦となります。魔法の使用は構いませんが補助的なものに限ります。純粋な魔法攻撃では有効打として認められない場合がありますのでそのつもりで」
わざわざ確認をしてくるあたり、やはり前の審判役よりも対応が丁寧である。
何となくではあるが……ウータはこれまでのように一方的に忖度をされない気がした。
(あの審判が特別酷かったのかな? まあ、死んだ人のことはどうでも良いけどね)
「それでは……決勝戦、試合開始!」
そして……試合開始が宣言された。
最初に動いたのはエンジェである。地面を蹴って、巨大な剣を振りかぶって斬りかかってくる。
その速度は機敏そのもの。身の丈以上の大剣を持っているとは思えないほどのスピードである。
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「…………」
ウータはどこか必死な形相で大剣を振り下ろしてくるエンジェに目を細めて、無言で後方に跳んだのであった。
41
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。