1 / 103
第一章 日下部さん家の四姉妹
プロローグ
しおりを挟む
どうも。皆さん、はじめまして。
僕の名前は八雲勇治。17歳の男子高校生だ。
平凡な容姿。平凡な成績。
趣味は読書……というかマンガの購読。特に少年誌系のマンガがお気に入り。
部活には入っていない。目立った特技や才能らしきものもない。
自他共に認めるモブキャラの僕だったが……つい最近、ちょっとした事件に巻き込まれることになったので報告させてもらいたい。
自分に起こった出来事を簡単に説明させてもらうと――『異世界に召喚されて勇者になった件』という感じだろうか?
……
…………
うんうん、言いたいことはわかる。
テンプレだよな。ありふれた話だよな。
マンガやラノベ、アニメなどで使い古された設定で新鮮味に欠けているよね。
僕もそう思う。
我ながらありきたりな展開に巻き込まれてしまったものだと、呆れたくなる状況だと思っている。
だけど……どうか勘違いをしないでもらいたい。
僕がみんなに聞いて欲しいのは――異世界に召喚された僕が大冒険の末、仲間と絆を深めて魔王を打ち倒す冒険譚ではない。
これから語るのは、勇者の冒険の後日譚。
魔王を倒した僕が日本に帰還して、隣に住んでいる四姉妹と絆を深めるだけの物語。
血のつながりはない、けれど実の家族以上に大切な彼女らとの交流を描いただけのお話なのだ。
退屈だと思うが、どうか最後まで聞いて欲しい。
優しくて、可愛くて、美人で、愉快な……日下部さん家の四姉妹の話を。
△ △ △
「そろそろ死んどけええええええええええッ!!」
「グワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
まばゆいばかりの光を放ちながら、聖剣が魔王の胸を貫いた。
邪悪なる存在を打ち砕く力を持った剣に心臓を刺され、漆黒の服をまとった魔王が膝をつく。
「馬鹿な、まさか余が人間ごときに破れるなど……! 何故だ、あと少しで人類を滅ぼせたというのに……どうしてこんなことに……!」
口からゴポリと血を吐きながら、魔王が怨嗟の声を上げる。
勇者である僕が魔王と一騎打ちをはじめて、すでに1時間が経過していた。
長い長い死闘にもとうとう終わりの時がやってきたようである。
「ハア、ハア……悪いね。僕は別に君に恨みとかはないんだけど、個人的な事情で倒させてもらうよ」
「個人的、だと……」
「ああ、そうさ。僕は君を倒して家に帰るんだ……ただ、それだけのために君を倒す。正義とか信念とかじゃない。君が僕に倒されたのはそれだけの理由なんだよ」
「ーーーー」
魔王は口を開いて何事かを口にしようとする。
怨嗟の恨み言か、それともみっともない命乞いか。
はっきりと声にならなかった言葉は僕の耳に届くことなく、魔王の身体は地面に叩きつけられた陶器人形のように粉々に砕け散った。
「……終わった。とうとう終わった」
激しい疲労から仰向けに倒れる。
僕の完全勝利だ。
魔王の城。玉座の間の天井を見上げ、僕は安堵の溜息をついた。
魔王が倒されれば、この世界を覆っていた魔族の脅威も消えることになる。
僕を魔王のもとに送り出すために遠くで戦っている仲間達も、僕を召喚した王国の人々も、みんなが救われることになるだろう。
この世界に召喚されてもう5年になるが……僕はとうとうやり遂げたのだ。
「ん……?」
四肢を投げ出して倒れた僕の身体を柔らかな光が包み込む。
慌てて身体を起こすと……気がつけば魔王城が消え失せており、周囲360度を雲のような白いモヤで覆われていた。
驚きはしない。この場所にやってくるのはこれが2度目なのだから。
「ここに来たってことは、もしかして……」
「はい、よくぞやり遂げてくれました。八雲勇治さん」
目の前に金色の髪をなびかせた女性が現れる。
ミロのヴィーナスのように完成された美貌。薄手の衣に包まれた豊満なスタイルはひどく目を惹きつけるものでありながら、邪な欲望を抱くことすらためらう清浄さをまとっている。
「この世界に呼ばれたとき以来ですか、女神様?」
この完璧な美女こそが、僕を異世界に召喚した女神である。
女神はゆっくりと頷いて、慈愛に満ちた微笑みをこちらに向けてきた。
「貴方のおかげでこの世界は救われました。偉大なる勇者に最大の感謝を捧げます」
「それはどうも。それで……女神様が来てくれたということは、僕は元の世界に帰れるんですよね?」
単刀直入。
余計なことは何も言わずに、1番大事なことを尋ねた。
僕はこの世界にやって来て勇者になったわけだが……それは決して、自分で納得したことではない。
多くのライトノベルの主人公がそうであるように、自分の意思とは無関係にこの世界に召喚されて断ることも許されずに勇者になったのだ。
目の前の女神様とは、無事に魔王を倒せたら元の世界に帰してもらえるように約束している。
魔王は倒した。今度はあっちが約束を果たす番だ。
「もちろんです。神として約束を違えることはいたしません。ですが……」
女神は眉尻を下げて、どこか悲しそうな顔になる。
「本当に元の世界に帰ってもよろしいのですか? 貴方は魔王を倒した英雄です。多くの人々が貴方の功績をたたえることでしょう。あらゆる富を得て、望む地位に就くことができるチャンスがあるのです。その機会をふいにして、元の世界に帰っても良いのですか?」
「ああ、もちろんだ。仲間との別れは戦いの前に済ませてあるし、この世界に未練なんてないよ」
僕は間髪入れずに断言した。
別にこの世界に嫌な思い出があるわけではない。無理やり召喚されたことには思うところがあるが、この世界の人間が魔族に追い詰められていたことを考えると仕方がないことだと思っている。
異世界召喚もので流行の展開として、召喚された勇者が現地民に迫害されたり差別されたりするパターンもあるが……僕の場合はそんなことはなかった。この世界の人々は、勇者として召喚された僕に相応の敬意をもって接してくれた。
しかし……それが元の世界への帰還をためらう理由にはならない。
無理やりに召喚されて、魔王を倒さなくては元の世界に帰れないと突きつけられたからやむなく勇者になっただけど、『帰りたい』という意思は最初から変わっていなかった。
「けれど、貴方は元の世界に血縁者がいないはずです。家族もいない世界に帰る理由があるのでしょうか?」
「む……」
なおも女神が食い下がってきて、僕はわずかに表情をしかめた。
僕が勇者に選ばれた最大の理由は、目の前にいる女神の『加護』と相性が良かったこと。
だが……別の理由として、僕が元の世界で天涯孤独の身の上で、肉親が誰もいないことがあった。
僕は小学校の頃に両親を亡くしている。
親戚もおらず、年の離れた兄と2人きりで暮らしてきたのだが……そんな兄も僕が召喚される1年前に事故で命を落としていた。
僕が死んでも悲しむ家族はいない。
非常に腹立たしい理由であるが……それが勇者に選ばれた理由だったりする。
「……いいや、帰るよ。断固として帰還を希望する」
内心でちょっとだけイラっとしつつ、僕は譲ることなく胸を張る。
この世界が嫌いというわけではないが……別に好きでもない。
食べ物は確実に日本のほうが美味しい。マンガやアニメといった娯楽については比べるまでもない。
この世界に骨を埋める気はない。絶対に日本に帰ってやる。
「それに……家族だったらちゃんといるよ。血のつながりはないけど、心から大切だと断言できる人達がいる」
「…………」
「彼女達を放っておくことなんて出来ない。これまでお世話になった恩は返さなくちゃいけないし、これから先も見守ってあげたいとも思っている。だから……僕は帰るんだ。元の世界に」
「……そうですか。そういうことでしたら仕方がありませんね」
女神様は肩を落として、残念そうに首を振った。
「出来ることならこの世界で結婚してもらい、勇者の子孫を作って欲しかったのですが……そこまで意志が固いとなれば是非もありません。これから貴方を元の世界に送らせていただきます」
「ああ、よろしく頼むよ。確認だけど……ちゃんと召喚された時間に帰れるんだよね? あっちの世界でも5年が経ってるとかは勘弁して欲しいんだけど?」
「もちろんですよ。そういう約束ですから……間違いなく、召喚された場所と時間に送らせてもらいます。ちゃんと肉体も若返らせますので、ご心配なく」
「うん、それを聞いて安心したよ」
「それと……貴方が所有しているスキルや加護もそのままにしておきます。アイテムボックスに入っているお金や武器なども報酬として持ち帰っていただいて構いません。成功報酬として王国から渡されるはずだった金貨も、そちらの通貨として受け取れるようにしておきます。後で確認してください」
「おおっ、それは嬉しいな! 助かるよ!」
どうやら、この世界で過ごした日々。過酷な戦いは無駄ではなかったらしい。
魔王討伐の報酬として、僕は王国から一生遊んで暮らせる額を受け取る約束になっていた。
両親や兄の遺産があり、あちらの世界でも経済的に困っているわけではなかったが……お金はいくらあっても邪魔にならない。生活に余裕ができたのは素直にありがたいことである。
「至れり尽くせりだな。ありがとうよ」
「御礼を言うのはこちらです。貴方の意思を無視して召喚してしまったことに謝罪を。そして、もう1度心からの感謝を捧げます」
足元に魔法陣のような図形が現れた。
どうやら、帰還の時がやってきたらしい。目の前の女神の姿が薄れていく。
意思を無視して召喚されたことには恨みもあったが……少なくとも、この女神は僕に対して嘘はつかなかった。
世界を救うためにやむを得ないことだったことも理解している。ゆえに、僕はぺこりと頭を下げる。
「さようなら、どうかこの世界に永遠の平和があらんことを」
「貴方にも祝福を。どうかこれからの人生が幸多いものでありますように」
魔法陣がいっそう輝き出した。
虹彩に焼きつくような光を最後に、女神の姿が消え失せる。
「っ……!」
まぶしさのあまり目を閉じた。
次に瞳を開いた僕が目にしたものは……
僕の名前は八雲勇治。17歳の男子高校生だ。
平凡な容姿。平凡な成績。
趣味は読書……というかマンガの購読。特に少年誌系のマンガがお気に入り。
部活には入っていない。目立った特技や才能らしきものもない。
自他共に認めるモブキャラの僕だったが……つい最近、ちょっとした事件に巻き込まれることになったので報告させてもらいたい。
自分に起こった出来事を簡単に説明させてもらうと――『異世界に召喚されて勇者になった件』という感じだろうか?
……
…………
うんうん、言いたいことはわかる。
テンプレだよな。ありふれた話だよな。
マンガやラノベ、アニメなどで使い古された設定で新鮮味に欠けているよね。
僕もそう思う。
我ながらありきたりな展開に巻き込まれてしまったものだと、呆れたくなる状況だと思っている。
だけど……どうか勘違いをしないでもらいたい。
僕がみんなに聞いて欲しいのは――異世界に召喚された僕が大冒険の末、仲間と絆を深めて魔王を打ち倒す冒険譚ではない。
これから語るのは、勇者の冒険の後日譚。
魔王を倒した僕が日本に帰還して、隣に住んでいる四姉妹と絆を深めるだけの物語。
血のつながりはない、けれど実の家族以上に大切な彼女らとの交流を描いただけのお話なのだ。
退屈だと思うが、どうか最後まで聞いて欲しい。
優しくて、可愛くて、美人で、愉快な……日下部さん家の四姉妹の話を。
△ △ △
「そろそろ死んどけええええええええええッ!!」
「グワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
まばゆいばかりの光を放ちながら、聖剣が魔王の胸を貫いた。
邪悪なる存在を打ち砕く力を持った剣に心臓を刺され、漆黒の服をまとった魔王が膝をつく。
「馬鹿な、まさか余が人間ごときに破れるなど……! 何故だ、あと少しで人類を滅ぼせたというのに……どうしてこんなことに……!」
口からゴポリと血を吐きながら、魔王が怨嗟の声を上げる。
勇者である僕が魔王と一騎打ちをはじめて、すでに1時間が経過していた。
長い長い死闘にもとうとう終わりの時がやってきたようである。
「ハア、ハア……悪いね。僕は別に君に恨みとかはないんだけど、個人的な事情で倒させてもらうよ」
「個人的、だと……」
「ああ、そうさ。僕は君を倒して家に帰るんだ……ただ、それだけのために君を倒す。正義とか信念とかじゃない。君が僕に倒されたのはそれだけの理由なんだよ」
「ーーーー」
魔王は口を開いて何事かを口にしようとする。
怨嗟の恨み言か、それともみっともない命乞いか。
はっきりと声にならなかった言葉は僕の耳に届くことなく、魔王の身体は地面に叩きつけられた陶器人形のように粉々に砕け散った。
「……終わった。とうとう終わった」
激しい疲労から仰向けに倒れる。
僕の完全勝利だ。
魔王の城。玉座の間の天井を見上げ、僕は安堵の溜息をついた。
魔王が倒されれば、この世界を覆っていた魔族の脅威も消えることになる。
僕を魔王のもとに送り出すために遠くで戦っている仲間達も、僕を召喚した王国の人々も、みんなが救われることになるだろう。
この世界に召喚されてもう5年になるが……僕はとうとうやり遂げたのだ。
「ん……?」
四肢を投げ出して倒れた僕の身体を柔らかな光が包み込む。
慌てて身体を起こすと……気がつけば魔王城が消え失せており、周囲360度を雲のような白いモヤで覆われていた。
驚きはしない。この場所にやってくるのはこれが2度目なのだから。
「ここに来たってことは、もしかして……」
「はい、よくぞやり遂げてくれました。八雲勇治さん」
目の前に金色の髪をなびかせた女性が現れる。
ミロのヴィーナスのように完成された美貌。薄手の衣に包まれた豊満なスタイルはひどく目を惹きつけるものでありながら、邪な欲望を抱くことすらためらう清浄さをまとっている。
「この世界に呼ばれたとき以来ですか、女神様?」
この完璧な美女こそが、僕を異世界に召喚した女神である。
女神はゆっくりと頷いて、慈愛に満ちた微笑みをこちらに向けてきた。
「貴方のおかげでこの世界は救われました。偉大なる勇者に最大の感謝を捧げます」
「それはどうも。それで……女神様が来てくれたということは、僕は元の世界に帰れるんですよね?」
単刀直入。
余計なことは何も言わずに、1番大事なことを尋ねた。
僕はこの世界にやって来て勇者になったわけだが……それは決して、自分で納得したことではない。
多くのライトノベルの主人公がそうであるように、自分の意思とは無関係にこの世界に召喚されて断ることも許されずに勇者になったのだ。
目の前の女神様とは、無事に魔王を倒せたら元の世界に帰してもらえるように約束している。
魔王は倒した。今度はあっちが約束を果たす番だ。
「もちろんです。神として約束を違えることはいたしません。ですが……」
女神は眉尻を下げて、どこか悲しそうな顔になる。
「本当に元の世界に帰ってもよろしいのですか? 貴方は魔王を倒した英雄です。多くの人々が貴方の功績をたたえることでしょう。あらゆる富を得て、望む地位に就くことができるチャンスがあるのです。その機会をふいにして、元の世界に帰っても良いのですか?」
「ああ、もちろんだ。仲間との別れは戦いの前に済ませてあるし、この世界に未練なんてないよ」
僕は間髪入れずに断言した。
別にこの世界に嫌な思い出があるわけではない。無理やり召喚されたことには思うところがあるが、この世界の人間が魔族に追い詰められていたことを考えると仕方がないことだと思っている。
異世界召喚もので流行の展開として、召喚された勇者が現地民に迫害されたり差別されたりするパターンもあるが……僕の場合はそんなことはなかった。この世界の人々は、勇者として召喚された僕に相応の敬意をもって接してくれた。
しかし……それが元の世界への帰還をためらう理由にはならない。
無理やりに召喚されて、魔王を倒さなくては元の世界に帰れないと突きつけられたからやむなく勇者になっただけど、『帰りたい』という意思は最初から変わっていなかった。
「けれど、貴方は元の世界に血縁者がいないはずです。家族もいない世界に帰る理由があるのでしょうか?」
「む……」
なおも女神が食い下がってきて、僕はわずかに表情をしかめた。
僕が勇者に選ばれた最大の理由は、目の前にいる女神の『加護』と相性が良かったこと。
だが……別の理由として、僕が元の世界で天涯孤独の身の上で、肉親が誰もいないことがあった。
僕は小学校の頃に両親を亡くしている。
親戚もおらず、年の離れた兄と2人きりで暮らしてきたのだが……そんな兄も僕が召喚される1年前に事故で命を落としていた。
僕が死んでも悲しむ家族はいない。
非常に腹立たしい理由であるが……それが勇者に選ばれた理由だったりする。
「……いいや、帰るよ。断固として帰還を希望する」
内心でちょっとだけイラっとしつつ、僕は譲ることなく胸を張る。
この世界が嫌いというわけではないが……別に好きでもない。
食べ物は確実に日本のほうが美味しい。マンガやアニメといった娯楽については比べるまでもない。
この世界に骨を埋める気はない。絶対に日本に帰ってやる。
「それに……家族だったらちゃんといるよ。血のつながりはないけど、心から大切だと断言できる人達がいる」
「…………」
「彼女達を放っておくことなんて出来ない。これまでお世話になった恩は返さなくちゃいけないし、これから先も見守ってあげたいとも思っている。だから……僕は帰るんだ。元の世界に」
「……そうですか。そういうことでしたら仕方がありませんね」
女神様は肩を落として、残念そうに首を振った。
「出来ることならこの世界で結婚してもらい、勇者の子孫を作って欲しかったのですが……そこまで意志が固いとなれば是非もありません。これから貴方を元の世界に送らせていただきます」
「ああ、よろしく頼むよ。確認だけど……ちゃんと召喚された時間に帰れるんだよね? あっちの世界でも5年が経ってるとかは勘弁して欲しいんだけど?」
「もちろんですよ。そういう約束ですから……間違いなく、召喚された場所と時間に送らせてもらいます。ちゃんと肉体も若返らせますので、ご心配なく」
「うん、それを聞いて安心したよ」
「それと……貴方が所有しているスキルや加護もそのままにしておきます。アイテムボックスに入っているお金や武器なども報酬として持ち帰っていただいて構いません。成功報酬として王国から渡されるはずだった金貨も、そちらの通貨として受け取れるようにしておきます。後で確認してください」
「おおっ、それは嬉しいな! 助かるよ!」
どうやら、この世界で過ごした日々。過酷な戦いは無駄ではなかったらしい。
魔王討伐の報酬として、僕は王国から一生遊んで暮らせる額を受け取る約束になっていた。
両親や兄の遺産があり、あちらの世界でも経済的に困っているわけではなかったが……お金はいくらあっても邪魔にならない。生活に余裕ができたのは素直にありがたいことである。
「至れり尽くせりだな。ありがとうよ」
「御礼を言うのはこちらです。貴方の意思を無視して召喚してしまったことに謝罪を。そして、もう1度心からの感謝を捧げます」
足元に魔法陣のような図形が現れた。
どうやら、帰還の時がやってきたらしい。目の前の女神の姿が薄れていく。
意思を無視して召喚されたことには恨みもあったが……少なくとも、この女神は僕に対して嘘はつかなかった。
世界を救うためにやむを得ないことだったことも理解している。ゆえに、僕はぺこりと頭を下げる。
「さようなら、どうかこの世界に永遠の平和があらんことを」
「貴方にも祝福を。どうかこれからの人生が幸多いものでありますように」
魔法陣がいっそう輝き出した。
虹彩に焼きつくような光を最後に、女神の姿が消え失せる。
「っ……!」
まぶしさのあまり目を閉じた。
次に瞳を開いた僕が目にしたものは……
351
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる