31 / 103
第一章 日下部さん家の四姉妹
27.次女はキュートな魔法少女②
しおりを挟む「こちらス〇ーク。対象の尾行を開始する!」
僕はあるミッションを達成するために、ダンボール箱を被って街に繰り出していた。
冷蔵庫を入れるダンボール箱は1人の人間を隠すには十分なサイズがあり、すっぽりと身体を覆いつくすことができている。
ダンボール箱がズリズリと地面を擦って移動しているのは、さぞや奇妙な光景だろう。
しかし、それを見咎める者はいない。『忍び歩き』のスキルを使用したことで、周りは僕に気づいてもいなかった。
「……うん、だったらダンボール箱いらないんじゃね……って気がするけど、まあ、気分だもんな。様式美ってやつだよ」
などと誰にともなく言い訳しつつ、僕は箱にあけた穴から外を窺った。
ダンボールごしに見る外の風景。その中心には1人の女性の姿があった。
日下部飛鳥――通称・飛鳥姉。日下部家の次女。僕にとっては血がつながらない2番目のお姉ちゃんだ。
飛鳥姉は駅前にある広場で誰かと待ち合わせをしている最中。いつになくオシャレさんな服装をしており、スマホで時間を確認している。僕はそんな彼女の尾行をしている真っ最中である。
「……あの飛鳥姉がわざわざオシャレをして出かけるなんて尋常の沙汰じゃない。絶対に何かがあるはず」
飛鳥姉には恋人はいない。
いないはず。たぶん、絶対にいないと思う。いないと信じている。
「だが……勘違いしないでくれ。僕は決して、男とデートに行っているかもしれない飛鳥姉が気になって尾行しているわけじゃない。変な嫉妬心から飛鳥姉を追いかけているわけじゃないんだ!」
ダンボール箱に隠れたまま、僕は誰にともなく言い訳の言葉を口にした。
そう、別に僕は飛鳥姉がオシャレをして出かけたのを見て、「まさか飛鳥姉がデートに……!?」と嫉妬に駆られて追いかけてきたわけではない。本当に。マジで。
僕は少し前に日下部四姉妹の2人の女性の秘密に触れた。
三女である風夏は超能力者であり、おかしな組織同士の抗争に巻き込まれていた。
長女である華音姉さんは陰陽師であり、人知れずに悪霊やら妖魔やらと戦いを繰り広げている。
そんな姉妹の秘密を知ったことで、ひょっとしたら他の2人にも何か秘密があるのではないかという考えに至ったのである。
次女の飛鳥姉、四女の美月ちゃんの動向を以前から注意していたところ……今日になって偶然にも飛鳥姉が休日にオシャレをして出かけたのを見て、ダンボール箱を被って尾行をすることにしたのである。
「絶対に何かがあるに違いない……飛鳥姉が危ないことに巻き込まれているのなら、何を置いてでも助けなくっちゃ」
そうつぶやいて、僕はダンボール箱の穴から飛鳥姉を注視する。
別に家族の秘密を暴きたいわけじゃない。秘密があっても一緒にいられるのが家族だというのが僕の持論である。
だが……危険なことに遭っているというのであれば話は別である。家族の一員として絶対に助けなくてはいけない。
そう思って見守る僕であったが……そんな僕の目にとんでもない光景が飛び込んできた。
「飛鳥ちゃん、お待たせ―!」
広場にある奇妙なオブジェの前に立っていた飛鳥姉の前に、同年代くらいの男性が現れたのだ。
現れたのは涼しげな顔立ちのイケメン男子。いかにも「女慣れしてますよ」といった風体のイケメン野郎である。
「…………!?」
思いもよらぬ事態。あるいは、意図的に意識を背けようとしていた事態を受けて、僕はショックのあまり目を大きく見開いたのである。
208
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる