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第26話 吐露
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「しかし、ローテス伯爵。この領地はセイレスト王国と地続きで繋がっているわけではないだろう? 帝国内で孤立してしまうのでは?」
「問題ありませんよ。この周辺の貴族らがまとめて王国に寝返る予定ですから」
「はあっ!?」
エベリアが目を剥いた。
ローテス伯爵領は帝国の中では西寄りにあってセイレスト王国とも近いが、あくまでも比較的にはという話である。
ここがセイレスト王国に併合されるとなると、帝国の十分の一ほどの領土がまとめて王国領となることになってしまう。
「今はまだ内緒にしておいてください。バレたら、プライドだけは高い皇帝が横やりを入れてくるかもしれませんから」
「そ、それはもちろん……」
むしろ、自分達にも話さないで欲しかった。
国家的な秘密の共有者にされてしまい、エベリアの肩がずっしりと重くなる。
「しかし、それでは王国が帝国から領地を奪った形になるだろう……戦争になってしまうのではないかな?」
「おそらく、戦争にはなりませんよ。今の皇室にそんな余裕はありませんから」
キンベルが口元に手を当てて、ハキハキと語る。
「今の帝国には皇帝陛下に不満を持った人間がたくさんいます。内乱を起こそうとしている者、陛下を暗殺しようとしている者、他国の軍勢を招き入れようとしている者……まあ、僕もそんな不穏分子の一人なんですけど」
「…………」
「完全に王国の庇護下に入ってしまえば、もはや帝国に手出しすることはできません。王国と戦争しながら他の不穏分子の相手ができるほど、もうこの国に余力はありませんからね」
「……そこまで来てしまっているのか、帝国は」
「はい。帝国の寿命は長くはないでしょう。だからこそ、亡国の混乱に巻き込まれる前に離脱したいんです」
エベリアには知る由もなかったが……キンベルは少し前、皇帝に直談判をしに行っていた。
自分達の領地を救って欲しいと必死になって訴えたのだが、その願いは一切聞き入れられなかった。
あの時、キンベルの帝国に対する忠義は死んだ。
同じように皇帝の圧政の被害を受けている地方貴族をまとめ上げ、セイレスト王国に売り込んだのである。
「アイシスさんも……貴女と会えて、本当に良かった」
「あ、うん」
キンベルがエベリアの後ろにいたアイシスの手を握る。
アイシスは目を白黒とさせており、首を傾げた。
「貴方とこれでお別れと思うと、胸が張り裂けそうです……しかし、生きていれば道が交わることもあるでしょう。どうかその日までお元気で」
この二週間。キンベルのアイシスに対する恋慕は弱くなるどころか、薪をくべたかのように燃え上がっている。
レーナとローナがその都度、邪魔に入っていなければ、求婚していたかもしれない。
「コラ、離れる!」
「調子に乗らないの、領主様!」
「ああ……!」
姉妹によってアイシスから引き離されて、キンベルが絶望したような声を漏らす。
しかし、すぐに咳払いをして、改めてアイシスに向き直る。
「また、是非とも帝国に来てください。今度は仕事ではなく、遊びに」
「うん、いいよ」
アイシスは気楽に返事をした。
「遊びに来るのは良いんだけど……さっきから話してたけど、帝国ってどういうこと? ここって、セイレスト王国じゃないの?」
「なっ……今さらか!?」
エベリアが驚きに身体をのけぞらせた。
「ここはエイルーン帝国だ! まさか、知らずにこの二週間、モンスターと戦っていたのか!?」
考えてもみれば……アイシスは事前に打ち合わせに参加しておらず、その後も詳しい情報は誰も話していない。
アイシス自身、ここが何処であるかなどどうでもいい。
アイシスという冒険者にとって大切なことは誰を殴るかであって、ここが何処であるかなど気にすることではないのだから。
「うっわあ……やっちゃったよ。私、帝国に来ちゃったの?」
だが……珍しく、アイシスが頭を抱えて落ち込んだ様子を見せる。
「アイシス……?」
「どうかしたの? 何か問題でもあった?」
レーナとローナが訊ねると、アイシスが「うえー」と呻きながら顔を上げる。
「私、帝国には入っちゃダメなんだよね……ママに叱られちゃう」
「……どういうことだ?」
エベリアも眉根を寄せて訊ねた。
「だって……ママが帝国から国外追放されてるから。国外追放は子孫にも及ぶらしいから、私も入っちゃダメなんだよ?」
「ええっ!?」
初耳の情報に、エベリアが驚きの声を上げた。
アイシス・ハーミット。
皇帝殺しの大罪人の子。悪役令嬢の娘。
隠していたわけではないが……あえて語ることが無かった母親の事情を、その日、初めて仲間に明かしたのであった。
「問題ありませんよ。この周辺の貴族らがまとめて王国に寝返る予定ですから」
「はあっ!?」
エベリアが目を剥いた。
ローテス伯爵領は帝国の中では西寄りにあってセイレスト王国とも近いが、あくまでも比較的にはという話である。
ここがセイレスト王国に併合されるとなると、帝国の十分の一ほどの領土がまとめて王国領となることになってしまう。
「今はまだ内緒にしておいてください。バレたら、プライドだけは高い皇帝が横やりを入れてくるかもしれませんから」
「そ、それはもちろん……」
むしろ、自分達にも話さないで欲しかった。
国家的な秘密の共有者にされてしまい、エベリアの肩がずっしりと重くなる。
「しかし、それでは王国が帝国から領地を奪った形になるだろう……戦争になってしまうのではないかな?」
「おそらく、戦争にはなりませんよ。今の皇室にそんな余裕はありませんから」
キンベルが口元に手を当てて、ハキハキと語る。
「今の帝国には皇帝陛下に不満を持った人間がたくさんいます。内乱を起こそうとしている者、陛下を暗殺しようとしている者、他国の軍勢を招き入れようとしている者……まあ、僕もそんな不穏分子の一人なんですけど」
「…………」
「完全に王国の庇護下に入ってしまえば、もはや帝国に手出しすることはできません。王国と戦争しながら他の不穏分子の相手ができるほど、もうこの国に余力はありませんからね」
「……そこまで来てしまっているのか、帝国は」
「はい。帝国の寿命は長くはないでしょう。だからこそ、亡国の混乱に巻き込まれる前に離脱したいんです」
エベリアには知る由もなかったが……キンベルは少し前、皇帝に直談判をしに行っていた。
自分達の領地を救って欲しいと必死になって訴えたのだが、その願いは一切聞き入れられなかった。
あの時、キンベルの帝国に対する忠義は死んだ。
同じように皇帝の圧政の被害を受けている地方貴族をまとめ上げ、セイレスト王国に売り込んだのである。
「アイシスさんも……貴女と会えて、本当に良かった」
「あ、うん」
キンベルがエベリアの後ろにいたアイシスの手を握る。
アイシスは目を白黒とさせており、首を傾げた。
「貴方とこれでお別れと思うと、胸が張り裂けそうです……しかし、生きていれば道が交わることもあるでしょう。どうかその日までお元気で」
この二週間。キンベルのアイシスに対する恋慕は弱くなるどころか、薪をくべたかのように燃え上がっている。
レーナとローナがその都度、邪魔に入っていなければ、求婚していたかもしれない。
「コラ、離れる!」
「調子に乗らないの、領主様!」
「ああ……!」
姉妹によってアイシスから引き離されて、キンベルが絶望したような声を漏らす。
しかし、すぐに咳払いをして、改めてアイシスに向き直る。
「また、是非とも帝国に来てください。今度は仕事ではなく、遊びに」
「うん、いいよ」
アイシスは気楽に返事をした。
「遊びに来るのは良いんだけど……さっきから話してたけど、帝国ってどういうこと? ここって、セイレスト王国じゃないの?」
「なっ……今さらか!?」
エベリアが驚きに身体をのけぞらせた。
「ここはエイルーン帝国だ! まさか、知らずにこの二週間、モンスターと戦っていたのか!?」
考えてもみれば……アイシスは事前に打ち合わせに参加しておらず、その後も詳しい情報は誰も話していない。
アイシス自身、ここが何処であるかなどどうでもいい。
アイシスという冒険者にとって大切なことは誰を殴るかであって、ここが何処であるかなど気にすることではないのだから。
「うっわあ……やっちゃったよ。私、帝国に来ちゃったの?」
だが……珍しく、アイシスが頭を抱えて落ち込んだ様子を見せる。
「アイシス……?」
「どうかしたの? 何か問題でもあった?」
レーナとローナが訊ねると、アイシスが「うえー」と呻きながら顔を上げる。
「私、帝国には入っちゃダメなんだよね……ママに叱られちゃう」
「……どういうことだ?」
エベリアも眉根を寄せて訊ねた。
「だって……ママが帝国から国外追放されてるから。国外追放は子孫にも及ぶらしいから、私も入っちゃダメなんだよ?」
「ええっ!?」
初耳の情報に、エベリアが驚きの声を上げた。
アイシス・ハーミット。
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隠していたわけではないが……あえて語ることが無かった母親の事情を、その日、初めて仲間に明かしたのであった。
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