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第6話 怪盗シャドウ抹殺計画
(3)
しおりを挟むその日の夜、怪盗シャドウはローウィ・サンダロンの屋敷へと忍び込んだ。
静まり返った屋敷には人の気配がほとんど感じられない。
「・・・妙だな。いくらなんでも静かすぎる」
事前に屋敷には予告状を送ってある。
当然ながら大勢の警備が待ち構えていることを予想していたのだが、見事に肩透かしを食らってしまった。
「これは本格的に罠みたいだな・・・さて、何が待ち構えているやら」
屋敷の塀を乗り越えたシャドウは慎重な足取りで庭を進んでいった。ブービートラップのようなものはなさそうである。
『やあ、よく来てくれたね。怪盗シャドウ』
「・・・お前は」
あと少しで屋敷にたどり着きそうだというところで、突然、声が鳴り響いた。
声がする方向を向くと、そこには一人の老人の姿があった。
『ここまでご足労いただいて感謝するよ! ぜひとも我々の歓待を受けてくれ!』
「へえ・・・」
シャドウは即座に魔法を発動させた。
第2階梯魔法【火弾】。
サッカーボール大の火の玉が老人へと勢いよく向かっていく。
『フフフフ、そんなことをしても無駄じゃよ!』
「・・・やっぱり、幻影か」
『いかにも! これぞワシが開発したマジックアイテム【遠隔幻影】! 地面の下に埋め込んだ装置によりワシの姿を立体映像として映し出して、音声までも届けることができるマジックアイテムじゃ!』
「似たような物を学園の迷宮でも見たな。それで、あんたがローウィ・サンダロンでいいんだよな?」
シャドウが問いかけると、老人はニヤリと笑ってうなずいた。
『いかにも! いかにもじゃ! ワシこそが世紀の大発明家、ローウィ・サンダロン! マジックアイテム研究において世界最高を誇る大賢者じゃ!』
「大賢者、ねえ・・・」
シャドウは皮肉気に唇を歪める。
確かに目の前の立体映像は大したものだと思うが、マジックアイテムの開発において人類は魔族よりも大きく劣っている。
それはオーバーアイテムの拡散により、世界に様々な問題が生じていることからも明らかである。
『ふん! 魔族ごとき劣等種、すぐにワシが追い抜かしてやるわい!』
「そうかい、それで? 俺をここにおびき出してどうするんだ? マジックアイテムを自慢したかったわけじゃあないんだろ?」
『くくくく・・・当然じゃ!』
ローウィは愉快そうに笑って、パチリと指を鳴らしてみせる。
『怪盗シャドウ、お主にはワシが開発したマジックアイテムの実験台となってもらおう!』
「なに?」
『賢者級と称される大泥棒が、ワシの最高傑作を相手にどこまで耐えられるかな?』
屋敷の庭に魔法陣が浮かび上がる。以前にも見たことがある『転移』の魔方陣だ。
明滅する光の中から現れたものは・・・
「お前は確か・・・マティルダ・マルストフォイ?」
行方知れずになっている女騎士。マティルダ・マルストフォイの姿であった。
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