賢者から怪盗に転職しました

レオナール D

文字の大きさ
72 / 85
第6話 怪盗シャドウ抹殺計画

(10) 完

しおりを挟む

「ふい~、今回は難儀したぜ」

「お疲れさまでした。大変だったみたいですね?」

 いつもの食堂で、いつものウェイトレスがお茶を入れてくれた。
 カゲヒコはやすい茶葉で淹れられた出涸らしのお茶を、やや顔をしかめながら喉へと流し込む。

「ローウィ・サンダロン・・・噂には聞いていましたが、想像以上に頭のネジが外れた方みたいですね」

 呆れた調子で言って、サーナはカゲヒコに同情の視線を向けた。

「あのじいさんとはいずれ決着をつけないとな。貸しを作ったままにするのは性に合わない」

 すでにローウィ・サンダロンはこの世にはいないのだが、それを知らないカゲヒコは真剣な表情でそんなことを口にした。

「まあ、怪盗として悪党の道を進むことを選んだ以上、ああいう手合いが出てくることは予想していたさ。それも承知で、こういう生き方を選んだんだからな」

「・・・窮屈じゃありませんか、あなたの生き方は」

 少し気を使ったような調子のサーナに、カゲヒコはニヤリと笑う。

「窮屈なだけじゃあないさ。少なくとも、退屈ではないからな」

「怪盗も辛いですね」

「闇ギルドほどじゃあないさ」

 カラン、コロン。食堂のドアベルが鳴った。どうやら新しい客が入ってきたようだ。
 カゲヒコはサーナから視線をはずして、手元のお茶と茶菓子を片付けにかかった。サーナもその場を離れて新しい客の元へ行く。

「いらっしゃいませー・・・あら?」

「一人だ・・・・・・静かに食べられる席にしてくれ」

「ん!?」

 聞き覚えのある声だった。バレないようにちらりと振り向くと、そこには鎧を身に着けた女騎士の姿があった。
 先日の夜に嫌というほど見た女、マティルダ・マルストフォイである。

 マティルダはカウンターの隅の席に座り、下をうつむきながらサーナへと注文を告げる。

「お酒・・・とにかく酒をくれ」

「ええと、今はお昼ですけど・・・大丈夫ですか?」

「いいんだ・・・飲まないとやっていられない」

 サーナが注文通りに酒の瓶を持っていくと、マティルダはそれをコップに注ぐことなくラッパ飲みをしだした。
 あまりにも豪快な飲みっぷりに、サーナも離れた席で見ていたカゲヒコも、そろって目を丸くしてしまう。

「ず、ずいぶんと良い飲みっぷりですね・・・その、何か嫌なことでもあったんですか?」

 サーナが恐る恐る尋ねると、マティルダはバッと顔を上げて爛々とした目でサーナを見つめる。

「ひっ・・・!」

「よくぞ聞いてくれた! ひどい目に遭ったんだ!」

 マティルダは怯えた様子のサーナへと、ここ数日の出来事を熱く語りだした。

 何者かに拉致されて監禁されたこと。
 おかしな薬品を注射されてそこから記憶がなくなってしまったこと。
 気が付けば、全裸にマントを羽織っただけの姿で廃墟で眠っていたこと。

「そのせいで・・・私はその格好で家に帰ることになったんだぞ!? あんな姿で、裸同然の格好で・・・!」

「そ、それは災難でしたね・・・」

 サーナがちらりと、カゲヒコのほうを睨みつけた。

「ええっと・・・確かに配慮が足りなかったかなあ?」

 新設のつもりでマントをかけてあげたのだが、よくよく考えても見ればそれだけで若い女性の肌を隠しきれるわけもない。
 ましてや、目の前にいる女騎士は見るからにグラマラスな体型をしているのだから。

「いっぱい見られた・・・! 知ってる人にも、知らない人にも、足やら胸やら見られてしまった・・・! もうお嫁に行けない・・・!」

 マティルダはボタボタと涙をカウンターへと落として、次の瞬間には憤怒の表情で猛然と立ち上がった。

「これも全部、怪盗シャドウのせいだ! 私を拉致して、裸で放り出したのもシャドウに違いない! あの変態泥棒目・・・! 絶対に見つけ出して殺してやるうううううっ!」

「うわあ・・・」

 カゲヒコは情けない声を出して、天を仰いだ。

 どうやら、殺人マシーン・マティルダに追いかけられる日々はこれからも続きそうであった。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

処理中です...