賢者から怪盗に転職しました

レオナール D

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第7話 最後の挨拶

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 先代魔王の崩御によって、魔族サイドでも様々な変化が起こった。
 先代魔王は人類殲滅と世界征服を掲げて戦争を繰り返してきたが、その後を継いだ現・魔王は穏健派である。
 早々に人間サイドの国々と和平を結び、奪った領地も返還していった。

 先代魔王に忠誠を使っていた者の中にはそれに不満を抱き、魔王軍から抜けていく者もいた。
 魔王軍四覇天の一人、【闇欲】のクリョウカンもまたその一人であった。

「クリョウカンか・・・。一度だけ戦ったことがあったけど、すぐに引いていったな」

 黒いフードをかぶった小柄な魔法使いのようだったが、顔は見ていない。
 勇者パーティを部下に任せてすぐに逃げて行った。

「あれは言うなれば梟雄、つまり謀略家です。直接、敵と戦うよりも裏で糸を引くことを好む者です」

「その謀略家がどうして人間サイドに来ているんだよ」

「あれの目的は明らかです。再び魔族と人間の間に戦争を起こすつもりです」

 キャンティが目元を険しくさせながら言った。

「クリョウカンは先代様の側近中の側近。先代様のご遺志を継いで、魔族による世界征服を目論んでいます。しかし、今の魔王様は平和を愛するお方ですから、ご自分から人間に戦争を仕掛けることはないでしょう」

「戦争を起こす火種を蒔きに来たわけか。ご苦労なことだ」

 カゲヒコはうんざりした様子で息を吐き、ゴロリとベッドに横になった。
 許されるのなら全てが夢だったと割り切って眠ってしまいたいところだが、さすがにそれは許されないだろう。

 人間と魔族の戦争が再開されてしまえば、勇者パーティの仲間も戦場に立つことになるだろう。
 彼らが今、どこで何をしているのかはわからないが、これ以上、子供達が戦争に利用されるのはカゲヒコも避けたいところだった。

「そんな危険分子、魔王軍をやめた時点で殺しとけよ」

「・・・陛下はお優しい方ですから」

「優しさと甘さは別物だぜ? お前だってそれくらい、知ってるだろうが」

 カゲヒコの苦言に、むう、とキャンティは眉をひそめる。

「私は武人です。主君への侮辱は許しませんよ」

「侮辱じゃなくて忠告だっての。まったく・・・」

 カゲヒコはガリガリと頭を掻いて、腹筋に力を入れて起き上がる。
 キャンティが見ているのも構わずに寝間着を脱ぎ捨て、外出用の服へと着替えていく。

「クリョウカンの目的はわかってるのかよ?」

「申し訳ありませんが・・・ロクなことでないのは想像できますが」

「そうかよ。それじゃあおびき寄せるところから始めようか」

 カゲヒコは上着に袖を通して、部屋のドアを開く。
 謀略家であるクリョウカンの考えはカゲヒコにだって読むことはできない。
 それでも、奴が先代魔王の腹心であるとすれば、おびき寄せる方法はある。

「勇者パーティの賢者、黒野カゲヒコの出番だな。今回は怪盗はお休みだ」
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