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第2話 異世界召喚。おや、背中に柔らかい感触が……?
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(ん……?)
わけもわからぬままに穴の中に引きずり込まれた琥珀であったが、急に明るくなって目をくらまされる。
両目が眩しさのあまりチカチカとして、視界がハッキリとしない。
思わず両手をパタパタと振って宙を掻いていると……何者かによって身体を抱きかかえられる。
(うわっ! なんだあっ!?)
「キュイッ!?」
驚きのあまり声を漏らしてしまう琥珀であったが……途端に違和感。
口からこぼれ出たのはまるで鳥のような声。声帯が思うように機能しなくて、まともな日本語を発生することができなかった。
「キュイ、キュイ?」
(アレ、僕の身体どうなって……何が起こってるんだ?)
「ん……大丈夫。こわがらないで、へいき」
(キュイ?)
背中に当たるフニャリとした感覚。
まるで極上の抱き枕に身をゆだねたような心地良さ。
「かわいい、ね……よしよし……」
「キュウ……」
優しい声と一緒に頭を撫でられた。
途端に襲ってくる圧倒的な安心感に身体の力が抜けて、背中の柔らかなクッションに身を預ける。
ここにきて、ようやく光にくらまされていた視界が正常に戻っていく。
パチクリと瞬きを繰り返すと、目の前に広がっているのは琥珀にとって忌まわしい光景。学校の教室のような部屋だった。
前方に黒板と教壇が設置されており、その前にいくつもの机とイスが並べられている。
琥珀が通っていた高校の教室とは明らかに別の場所だったが、どこかの学校が学習塾といった内装だった。
(アレ? でも、ここが学校とするとなんかサイズ感がおかしいような……?)
不思議なことに、周りにある全ての物品のサイズが大きい気がする。
自分の身体が小人になったような……とまではいかないものの、小学生くらいまで縮んでしまっているような感覚がある。
「キュイッ!?」
そして……ここに至って、ようやく気付かされる。
琥珀は現在進行形で誰かの膝の上に載せられており、頭とお腹をナデナデされていることに。
「キュイ、キュイ!」
「うん、だいじょうぶ……ここにいる、からね?」
慌てる琥珀であったが、上から声が降ってくる。
小さな首を巡らせて上に視線を向けると、そこには見慣れた優しそうな相貌が琥珀のことを見下ろしていた。
「キュ……」
(ヘリヤさん……!?)
琥珀を抱きかかえ、膝に乗せているのは北欧からの留学生であるヘリヤ・アールヴェントだった。
銀色の長い髪。緑色の瞳。処女雪のような穢れの無い肌……こんな完璧な美少女を見間違えるはずがない。
ヘリヤは慈母のような優しい顔で琥珀のことを撫でており、北欧人特有の白い肌をわずかに紅潮させていたのである。
「どうやら、召喚に成功したみたいですね。よくできました……ミス・アールヴェント」
愛おしそうに琥珀を撫でているヘリヤに誰かが声をかけてきた。
声の方に視線を向けると、そこには見慣れぬ白いスーツを着た若い女性が立っている。
女性は理知的な顔に眼鏡をかけていた。教室のような空間であることもあって、まるで女教師のような佇まいである。
「プッ……何だよ、それ!」
「いやいや、確かに召喚されたみたいですけど……あんまり強そうじゃないっすね?」
「雑魚っぽいなあ……まあ、ヘリヤちゃんには似合っているけどね。ぬいぐるみ抱いてるみたい」
「ッ……!」
琥珀の背筋にブワリと鳥肌が立つ。
聞き慣れた声。夢にまで見て魘された忌まわしい声。
弾かれたようにそちらを向くと、そこには琥珀をイジメていた中心人物であるクラスメイトが足を崩してイスに座っていた。
(久東、大嶽、それに咲村……!)
そこにいたのは三人の男子生徒。
いずれも琥珀に対してアレコレと嫌がらせをしており、登校拒否にまで追いやった連中だ。
「キュイ~……!」
(コイツらが、それにヘリヤさんがいるってことは……もしかして、俺って異世界にきちゃったのか!?)
慌てて周囲を見回すと、他のクラスメイトが物珍しそうにヘリヤに抱えられた琥珀のことを見つめている。
そして……窓の外に広がる光景。
青い空と白い雲。雲の隙間に浮かんでいる青い月。そして……月の下を飛んでいる謎の飛行物体。
(は……?)
人間を背に載せて颯爽と飛んでいるのは、トカゲにも良く似た爬虫類のような生き物。
緑色の鱗を生やした背中には大きな翼があって、バタバタと両翼をはためかせて大空を舞っている。
(アレはもしかして……ドラゴンって奴か!?)
「ピュイッ!?」
その光景を目にして、琥珀は確信する。
ここは日本ではない。地球でもない。
自分がクラスメイトに続いて、異世界にやって来てしまったことを確信する。
「ッ……!!!??」
そして、ふと窓に雲の影が差したことで、さらに驚くべき事実を思い知らされる。
外が暗くなったことで窓ガラスに部屋の内側が反射して、窓から外を見つめていた琥珀の姿もまた映し出されたのだ。
窓ガラスに反射した琥珀の姿は人間のものではなかった。
その身体は赤ん坊のように縮んでおり、黒と白の羽毛に覆われていたのである。
(まさか……ペンギンだって!?)
嘴と短い手足を目にして、琥珀は悟る。
自分がペンギンになっていることを。ペンギンになってヘリヤによって抱きかかえられ、全身をモフられていることを。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイッ!?」
あまりの出来事に錯乱して、琥珀は小さな嘴から絶叫の声を上げてしまうのであった。
わけもわからぬままに穴の中に引きずり込まれた琥珀であったが、急に明るくなって目をくらまされる。
両目が眩しさのあまりチカチカとして、視界がハッキリとしない。
思わず両手をパタパタと振って宙を掻いていると……何者かによって身体を抱きかかえられる。
(うわっ! なんだあっ!?)
「キュイッ!?」
驚きのあまり声を漏らしてしまう琥珀であったが……途端に違和感。
口からこぼれ出たのはまるで鳥のような声。声帯が思うように機能しなくて、まともな日本語を発生することができなかった。
「キュイ、キュイ?」
(アレ、僕の身体どうなって……何が起こってるんだ?)
「ん……大丈夫。こわがらないで、へいき」
(キュイ?)
背中に当たるフニャリとした感覚。
まるで極上の抱き枕に身をゆだねたような心地良さ。
「かわいい、ね……よしよし……」
「キュウ……」
優しい声と一緒に頭を撫でられた。
途端に襲ってくる圧倒的な安心感に身体の力が抜けて、背中の柔らかなクッションに身を預ける。
ここにきて、ようやく光にくらまされていた視界が正常に戻っていく。
パチクリと瞬きを繰り返すと、目の前に広がっているのは琥珀にとって忌まわしい光景。学校の教室のような部屋だった。
前方に黒板と教壇が設置されており、その前にいくつもの机とイスが並べられている。
琥珀が通っていた高校の教室とは明らかに別の場所だったが、どこかの学校が学習塾といった内装だった。
(アレ? でも、ここが学校とするとなんかサイズ感がおかしいような……?)
不思議なことに、周りにある全ての物品のサイズが大きい気がする。
自分の身体が小人になったような……とまではいかないものの、小学生くらいまで縮んでしまっているような感覚がある。
「キュイッ!?」
そして……ここに至って、ようやく気付かされる。
琥珀は現在進行形で誰かの膝の上に載せられており、頭とお腹をナデナデされていることに。
「キュイ、キュイ!」
「うん、だいじょうぶ……ここにいる、からね?」
慌てる琥珀であったが、上から声が降ってくる。
小さな首を巡らせて上に視線を向けると、そこには見慣れた優しそうな相貌が琥珀のことを見下ろしていた。
「キュ……」
(ヘリヤさん……!?)
琥珀を抱きかかえ、膝に乗せているのは北欧からの留学生であるヘリヤ・アールヴェントだった。
銀色の長い髪。緑色の瞳。処女雪のような穢れの無い肌……こんな完璧な美少女を見間違えるはずがない。
ヘリヤは慈母のような優しい顔で琥珀のことを撫でており、北欧人特有の白い肌をわずかに紅潮させていたのである。
「どうやら、召喚に成功したみたいですね。よくできました……ミス・アールヴェント」
愛おしそうに琥珀を撫でているヘリヤに誰かが声をかけてきた。
声の方に視線を向けると、そこには見慣れぬ白いスーツを着た若い女性が立っている。
女性は理知的な顔に眼鏡をかけていた。教室のような空間であることもあって、まるで女教師のような佇まいである。
「プッ……何だよ、それ!」
「いやいや、確かに召喚されたみたいですけど……あんまり強そうじゃないっすね?」
「雑魚っぽいなあ……まあ、ヘリヤちゃんには似合っているけどね。ぬいぐるみ抱いてるみたい」
「ッ……!」
琥珀の背筋にブワリと鳥肌が立つ。
聞き慣れた声。夢にまで見て魘された忌まわしい声。
弾かれたようにそちらを向くと、そこには琥珀をイジメていた中心人物であるクラスメイトが足を崩してイスに座っていた。
(久東、大嶽、それに咲村……!)
そこにいたのは三人の男子生徒。
いずれも琥珀に対してアレコレと嫌がらせをしており、登校拒否にまで追いやった連中だ。
「キュイ~……!」
(コイツらが、それにヘリヤさんがいるってことは……もしかして、俺って異世界にきちゃったのか!?)
慌てて周囲を見回すと、他のクラスメイトが物珍しそうにヘリヤに抱えられた琥珀のことを見つめている。
そして……窓の外に広がる光景。
青い空と白い雲。雲の隙間に浮かんでいる青い月。そして……月の下を飛んでいる謎の飛行物体。
(は……?)
人間を背に載せて颯爽と飛んでいるのは、トカゲにも良く似た爬虫類のような生き物。
緑色の鱗を生やした背中には大きな翼があって、バタバタと両翼をはためかせて大空を舞っている。
(アレはもしかして……ドラゴンって奴か!?)
「ピュイッ!?」
その光景を目にして、琥珀は確信する。
ここは日本ではない。地球でもない。
自分がクラスメイトに続いて、異世界にやって来てしまったことを確信する。
「ッ……!!!??」
そして、ふと窓に雲の影が差したことで、さらに驚くべき事実を思い知らされる。
外が暗くなったことで窓ガラスに部屋の内側が反射して、窓から外を見つめていた琥珀の姿もまた映し出されたのだ。
窓ガラスに反射した琥珀の姿は人間のものではなかった。
その身体は赤ん坊のように縮んでおり、黒と白の羽毛に覆われていたのである。
(まさか……ペンギンだって!?)
嘴と短い手足を目にして、琥珀は悟る。
自分がペンギンになっていることを。ペンギンになってヘリヤによって抱きかかえられ、全身をモフられていることを。
「キュイイイイイイイイイイイイイイイッ!?」
あまりの出来事に錯乱して、琥珀は小さな嘴から絶叫の声を上げてしまうのであった。
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