ペンギン転生 異世界でペンギンになったが美少女に飼われたので別に良い

レオナール D

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第32話 ダンジョンにリベンジする

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 ダンジョンの入口である大扉をくぐると、そこには平原が広がっていた。
 見知った場所。前回と同じくダンジョンの『草原エリア』である。

「さっそく、魔物だ。気をつけろ」

「当たり前じゃん。前回みたいに油断しないから」

 揚羽が剣を構える。
 少し離れた場所に現れたのは、大型犬サイズのミミズのモンスター。
 非常に気持ちが悪い外見。前回の探索では遭遇しなかった敵である。

「あれは……リトルワーム? 珍しい魔物です」

 シャーロットが剣の柄に手をかけて、警戒した様子になる。

「リトルワームは文字通り、ワームの幼生体であるとされています。もしかすると……近くにワームがいるのかもしれません」

「マジで? だったら、早く離れた方がいいんじゃね?」

 ワームに食べられた経験がある柊木が顔をしかめた。

「キュイッ!」

「エアカッター」

 直後、琥珀が氷の息吹を吐いて、甘井が風の魔法を発動させた。
 少し離れた場所にいるリトルワームが凍りつき、切断されて消滅する。

「甘井さん?」

「生かしておいたら、親を呼ぶかもしれないわ。早くドロップアイテムを回収して離れましょう」

「キュイキュイ」

(甘井の言うとおりだ! ダンジョンに入って早々、あんな化け物と戦っていられない!)

 琥珀も同意する。
 五人はリトルワームが落とした皮のようなものを回収して、足早に先に進む。

 その後も何度となくモンスターに遭遇した。
 狼の魔物。虫の魔物。鳥の魔物。
 いずれも五人と一匹にとっては敵ではない相手であり、危なげなく倒すことができた。

「アンバー、つかれてない?」

「キュウキュウ」

(大丈夫だ。ヘリヤさんも大丈夫かな?)

「わたしはダイジョブ。みんなはどう?」

 ヘリヤが訊ねると、先陣を切って歩いていた揚羽が答える。

「私は大丈夫だ。このままゴール地点までいけるよ」

「アタシも平気。休憩はいらないから、さっさと行こーよ」

 柊木が珍しく文句を言うことなく、先を急がせる。

 あと少しで、チェックポイントである転移門のある区画に到着する。
 ここまで休憩することなく急いできた。
 ワームに出くわさないように、スピーディーな攻略を心掛けた結果である。

「次の階層に到着したら、すぐに外に出られるのかしら?」

「いいえ、そう簡単にはいきません」

 甘井の問いに、シャーロットが答える。

「階層の最奥には次の階層への転移門、ダンジョンの外に出るための脱出門の二つがあります。転移門を使えば次の階層にいけますが、外に出るためには全滅するか、その階層の最奥にまで進まなければいけません」

「つまり、次の階層にたどり着いてセーブ。そのまま脱出というのはできないわけね」

 甘井が溜息を吐く。
 次の階層まで進んでいれば、次回以降には進んだ先の階層から探索を始めることができる。
 その代わり、外に出るためにはまた長い冒険をしなければいけない。
 死に戻りをするという手もあるが、手に入れたアイテムは失われてしまうのでリスクが高い。
 ダンジョンの中では死ぬことがないという点は有り難いが、それ以外は意地の悪いダンジョンである。

「とりあえず、今日のところは第二階層を目指そう。その先のことは後で考えたらよいだろう」

「アゲハの言う通りですね。ただ……気をつけてください。スタート地点となる階層を更新するためには、五人全員で次の階層に進まなければいけません。一人でも欠けた状態で次の階層に進んだとしても、やり直したときには前の階層からのスタートになります」

 シャーロットが続けて、説明する。
 つまり、メンバーの一人だけが次の階層に進んで更新。
 残りのメンバーは手に入れたアイテムを持って、先に脱出という都合の良いことはできないということである。

「キュイ?」

 そのまま進んでいく一行であったが……琥珀が立ち止まる。
 進行方向上。まだ距離はあるが、不穏な気配を感じ取ったのである。

「どうしたの、アンバー」

「キューキュー」

(気をつけてくれ! 何かヤバいのがいるぞ!)

「……どうやら、ペンちゃんが警戒しているようだな。注意していこう」

 琥珀の様子に揚羽や他のメンバーも怪訝に感じて、警戒を深める。

 そうして、五人と一匹は慎重に歩を進めていくが……結果的に、その警戒は意味がなかった。

「キュ……!」

 目指す先、転移門と脱出門があるべき場所に『ヤツ』がいた。

 巨大なミミズのようなイモムシ……ワームが『門』を塞ぐようにとぐろを巻いており、五人と一匹を待ち構えていたのである。
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