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第二章 : 夢堕ちする者達よ
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私達が降り立った場所は、町外れの公園。いきなり人が現れて驚かれる事も無い場所。
「でも、今の悪魔の姿では、けがれた魂の持ち主である人間にしか見えないからね。天使。」
そう言ったお兄ちゃんは、何か辛い事でも思い出してるかの様に顔をこわばらせてる。なんだろう。私が知らない事でもあるのかな?
「一応、人間姿に戻っておこう。面倒事は避けやすくなる。」
黒い羽根に赤い角、黒い尻尾を無くした人間姿では飛べない。足を使って歩いて移動しなければならない。不便だけど、人間の変な独り言を周りに聞かされて、怪しまれるよりはマシだ。
『…誰か、お願い。助けて。』
突然聞こえて来たその声は、小学生位の幼い男の子の様な高い声だった。
「お兄ちゃん、男の子の声が聞こえた。『助けて』って。」
「うん。俺にもハッキリと聞こえた。お!こっちだ!美味しそうな匂いがする。」
そう言って、お兄ちゃんが歩いていく方向を見つめると、男の子が地面に這いつくばって泣いていた。私もお兄ちゃんの後に続いて歩く。
「君、大丈夫か?何があった?自分の名前言える?」
先に男の子の所へ辿り着いたお兄ちゃんが、男の子に対して職務質問みたいな事をしていた。
「僕の名前は勇太。佐々木勇太。お兄ちゃん達は?」
「んー、お兄ちゃん達はお兄ちゃん達って呼んでくれればいいよ。名前の知らない正義のヒーローが現れて、助けに来たって何だか恰好いいでしょ?」
お兄ちゃんがこう言ったのには理由がある。人間等の下界の生き物が私達悪魔の名前を呼ぶ。それは契約行為になるのだ。契約した人間がサーバントの悪魔に差し出すモノは、魂では無い。痛覚、五感、感情、自我等を差し出す。悪魔は徐々に、人間の身体を魂だけが存在する人形にしていくのだ。
大人ならまだいいが、子供はキツい。純粋な子供の洗脳は楽だが、心を支配しにくいのだ。
「お兄ちゃん達、何でも出来るの?ヒーローなの?悪の組織に勝てるの?」
「そう、何でも。お兄ちゃん達は人助けする特別な力があるんだ。でも、悪の組織に勝てるかは分からないかな?戦った事無いからね。じゃあ、このノートに…」
お兄ちゃんはいつもの様に、ノートを取り出して勇太君に見せている。
「何それ?デスノート?」
「違う違う。百円位で売ってる普通のノート。名前書いても死なないから大丈夫だよ。此処に君の名前、願い事を書けば大丈夫。お兄ちゃん達、願い事はちゃんと叶えてあげたいんだ。でも記憶力に自信が無くってさ。…玲音、頼んだ。」
「分かった。」
目を閉じる。そして、開眼!
私は視覚が発達している。千里眼で感情や心情等を見る事が出来るのだ。いわゆる、魔眼。でも、生き物を石に変えたり、一度だけ何でも命令出来たりはしない。紅く輝く見た目だけ。
因みにお兄ちゃんは、犬より何倍も優れている嗅覚。勇太君の居場所を匂いで突き止めたのだ。
私が視えたモノは、辛い、苦しい、嫌い、孤独、そんな負の連鎖の言葉ばかり。
一体、何があったのだろう?
「お兄ちゃん達、これでいい?」
「ありがとう。大丈夫だよ。フフッ、じゃあ、おやすみなさい。」
お兄ちゃんが笑みを浮かべて、勇太君の頭を撫でる。すると、勇太君は糸を切った操り人形の様に地面に崩れ落ちた。まるで、機能を失くしたロボットだ。
「玲音、この子に悪夢を見せてあげて。その時に食べる恐怖が一番美味しいから。味見味見。」
「うん。お兄ちゃん、ありがとう。」
私が倒れた勇太君の額に手を当てると、勇太君の顔がこわばり、辛そうな表情を浮かべる。私はこの瞬間が辛い。けど、お兄ちゃんの嬉しそうな顔が見られる少ない機会なのだ。
「いやぁ、けがれた魂の持ち主とはいえ、しょせんは子供だね。扱いやすいよ。ん、やっぱ美味しいなぁ。最高。よし、行こっか。」
お兄ちゃんが恐怖を食べてるからか、勇太君も落ち着いてきてる。
「えっと…こっち。」
今、千里眼で、勇太君の家を探し出して、向かっている所だ。勇太君はお兄ちゃんに抱えられている。勿論、私達は悪魔姿に戻って、飛んで移動。
「あそこだよ。勇太君の家。」
何故、今勇太君の家に向かっているかというと、勇太君はノートにこう記したからだ。
『ぼくをおとうさんからかいほうして。ささきゆうた』
解放して、という言葉を小さい子が使うとは思わなかった。何か辛い事情があるのかもしれないが、あまり他人が触れてはいけない気がした。
でも、私達悪魔にとっては、好都合なのかもしれない。
将来を背負う子供に、辛い思いをさせる自分勝手な大人は、とてもけがれた魂の持ち主だ。
勇太君の家のドアの前に降り立ち、人が居ない事を確認してから、人間姿に変化する。魔力はちゃんと使えるから、大丈夫。ただ、飛べないだけ。
勇太君の家は、住宅街の中にある紺色の屋根とクリーム色の壁を持つ一軒家だった。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」
お兄ちゃんがドアをノックしようとした時に、ドアがガチャっと音を立てて開いた。でも、全開では無く、警戒したように少しだけしか開けてくれない。
「何の用だ。こっちは忙しいんだ。とっとと用件を済ませてくれ。」
イライラしてるのか、警戒心剥き出しなのか、勇太君のお父さんという人は、私達をにらんでる。初対面だし仕方ないか。
「お宅のお子様が道端で倒れていて、彼に案内してもらいながら、家に着いたという事です。疲れたのか、さっき寝ちゃいましたけど。」
さすがお兄ちゃん。全く動じてない。私は言葉を並べるのでもやっとだっていうのに。
「全く、どこをほっつき歩いてたんだ?わざわざありがとうございます。その子にちゃんと言いつけておきますので。」
勇太君のお父さんは、やっとドアを全開に開けた。そして、こっちに手を伸ばしてくる。私達よりもずっと怖い魔の手だ。
「この子は、あなたに渡しません。辛い思いをしてるのに、ね?玲音。」
お兄ちゃんに言われる前に私は行動していた。素早く勇太君のお父さんの背後に周り込む。
それと同時に、すぐに魔力を使って、魔法陣を出現させる。場所は勿論、勇太君のお父さんの足元。
「お前ら、一体何者なんだ!」
「んー、知らない方が得だよ?冥土の土産っていうものが俺達の情報でいいの?」
お兄ちゃんは口角を上げながら、魔法陣にかかった勇太君のお父さんを見て、こう言ったのだ。
「おやすみなさい。」
「お兄ちゃん、食べないの?」
勇太君のお父さんを眠らせ、二人だけがぽつんと残された感覚。一応ここに人は四人いる。
「んー、ただの犯罪者の恐怖食べても不味いだけだからいらない。それに、もっともっと苦しんで貰わないとね?ほらこういう顔、悪い人間が苦しんでる姿を見るのは最高のおかずでしょ?ただ、魂は貰うよー。誰かにお裾分けすればいい話。次いでに、この子の魂も頂くよ。」
お兄ちゃんはそう言いながら、二人の人間の魂を同時に肉体から切り離した。
勇太君の魂は透き通る青、勇太君のお父さんの魂は黒。まるで、ブラックホール。
子供は、何があっても純粋な心の持ち主なのだ。
「でも、今の悪魔の姿では、けがれた魂の持ち主である人間にしか見えないからね。天使。」
そう言ったお兄ちゃんは、何か辛い事でも思い出してるかの様に顔をこわばらせてる。なんだろう。私が知らない事でもあるのかな?
「一応、人間姿に戻っておこう。面倒事は避けやすくなる。」
黒い羽根に赤い角、黒い尻尾を無くした人間姿では飛べない。足を使って歩いて移動しなければならない。不便だけど、人間の変な独り言を周りに聞かされて、怪しまれるよりはマシだ。
『…誰か、お願い。助けて。』
突然聞こえて来たその声は、小学生位の幼い男の子の様な高い声だった。
「お兄ちゃん、男の子の声が聞こえた。『助けて』って。」
「うん。俺にもハッキリと聞こえた。お!こっちだ!美味しそうな匂いがする。」
そう言って、お兄ちゃんが歩いていく方向を見つめると、男の子が地面に這いつくばって泣いていた。私もお兄ちゃんの後に続いて歩く。
「君、大丈夫か?何があった?自分の名前言える?」
先に男の子の所へ辿り着いたお兄ちゃんが、男の子に対して職務質問みたいな事をしていた。
「僕の名前は勇太。佐々木勇太。お兄ちゃん達は?」
「んー、お兄ちゃん達はお兄ちゃん達って呼んでくれればいいよ。名前の知らない正義のヒーローが現れて、助けに来たって何だか恰好いいでしょ?」
お兄ちゃんがこう言ったのには理由がある。人間等の下界の生き物が私達悪魔の名前を呼ぶ。それは契約行為になるのだ。契約した人間がサーバントの悪魔に差し出すモノは、魂では無い。痛覚、五感、感情、自我等を差し出す。悪魔は徐々に、人間の身体を魂だけが存在する人形にしていくのだ。
大人ならまだいいが、子供はキツい。純粋な子供の洗脳は楽だが、心を支配しにくいのだ。
「お兄ちゃん達、何でも出来るの?ヒーローなの?悪の組織に勝てるの?」
「そう、何でも。お兄ちゃん達は人助けする特別な力があるんだ。でも、悪の組織に勝てるかは分からないかな?戦った事無いからね。じゃあ、このノートに…」
お兄ちゃんはいつもの様に、ノートを取り出して勇太君に見せている。
「何それ?デスノート?」
「違う違う。百円位で売ってる普通のノート。名前書いても死なないから大丈夫だよ。此処に君の名前、願い事を書けば大丈夫。お兄ちゃん達、願い事はちゃんと叶えてあげたいんだ。でも記憶力に自信が無くってさ。…玲音、頼んだ。」
「分かった。」
目を閉じる。そして、開眼!
私は視覚が発達している。千里眼で感情や心情等を見る事が出来るのだ。いわゆる、魔眼。でも、生き物を石に変えたり、一度だけ何でも命令出来たりはしない。紅く輝く見た目だけ。
因みにお兄ちゃんは、犬より何倍も優れている嗅覚。勇太君の居場所を匂いで突き止めたのだ。
私が視えたモノは、辛い、苦しい、嫌い、孤独、そんな負の連鎖の言葉ばかり。
一体、何があったのだろう?
「お兄ちゃん達、これでいい?」
「ありがとう。大丈夫だよ。フフッ、じゃあ、おやすみなさい。」
お兄ちゃんが笑みを浮かべて、勇太君の頭を撫でる。すると、勇太君は糸を切った操り人形の様に地面に崩れ落ちた。まるで、機能を失くしたロボットだ。
「玲音、この子に悪夢を見せてあげて。その時に食べる恐怖が一番美味しいから。味見味見。」
「うん。お兄ちゃん、ありがとう。」
私が倒れた勇太君の額に手を当てると、勇太君の顔がこわばり、辛そうな表情を浮かべる。私はこの瞬間が辛い。けど、お兄ちゃんの嬉しそうな顔が見られる少ない機会なのだ。
「いやぁ、けがれた魂の持ち主とはいえ、しょせんは子供だね。扱いやすいよ。ん、やっぱ美味しいなぁ。最高。よし、行こっか。」
お兄ちゃんが恐怖を食べてるからか、勇太君も落ち着いてきてる。
「えっと…こっち。」
今、千里眼で、勇太君の家を探し出して、向かっている所だ。勇太君はお兄ちゃんに抱えられている。勿論、私達は悪魔姿に戻って、飛んで移動。
「あそこだよ。勇太君の家。」
何故、今勇太君の家に向かっているかというと、勇太君はノートにこう記したからだ。
『ぼくをおとうさんからかいほうして。ささきゆうた』
解放して、という言葉を小さい子が使うとは思わなかった。何か辛い事情があるのかもしれないが、あまり他人が触れてはいけない気がした。
でも、私達悪魔にとっては、好都合なのかもしれない。
将来を背負う子供に、辛い思いをさせる自分勝手な大人は、とてもけがれた魂の持ち主だ。
勇太君の家のドアの前に降り立ち、人が居ない事を確認してから、人間姿に変化する。魔力はちゃんと使えるから、大丈夫。ただ、飛べないだけ。
勇太君の家は、住宅街の中にある紺色の屋根とクリーム色の壁を持つ一軒家だった。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」
お兄ちゃんがドアをノックしようとした時に、ドアがガチャっと音を立てて開いた。でも、全開では無く、警戒したように少しだけしか開けてくれない。
「何の用だ。こっちは忙しいんだ。とっとと用件を済ませてくれ。」
イライラしてるのか、警戒心剥き出しなのか、勇太君のお父さんという人は、私達をにらんでる。初対面だし仕方ないか。
「お宅のお子様が道端で倒れていて、彼に案内してもらいながら、家に着いたという事です。疲れたのか、さっき寝ちゃいましたけど。」
さすがお兄ちゃん。全く動じてない。私は言葉を並べるのでもやっとだっていうのに。
「全く、どこをほっつき歩いてたんだ?わざわざありがとうございます。その子にちゃんと言いつけておきますので。」
勇太君のお父さんは、やっとドアを全開に開けた。そして、こっちに手を伸ばしてくる。私達よりもずっと怖い魔の手だ。
「この子は、あなたに渡しません。辛い思いをしてるのに、ね?玲音。」
お兄ちゃんに言われる前に私は行動していた。素早く勇太君のお父さんの背後に周り込む。
それと同時に、すぐに魔力を使って、魔法陣を出現させる。場所は勿論、勇太君のお父さんの足元。
「お前ら、一体何者なんだ!」
「んー、知らない方が得だよ?冥土の土産っていうものが俺達の情報でいいの?」
お兄ちゃんは口角を上げながら、魔法陣にかかった勇太君のお父さんを見て、こう言ったのだ。
「おやすみなさい。」
「お兄ちゃん、食べないの?」
勇太君のお父さんを眠らせ、二人だけがぽつんと残された感覚。一応ここに人は四人いる。
「んー、ただの犯罪者の恐怖食べても不味いだけだからいらない。それに、もっともっと苦しんで貰わないとね?ほらこういう顔、悪い人間が苦しんでる姿を見るのは最高のおかずでしょ?ただ、魂は貰うよー。誰かにお裾分けすればいい話。次いでに、この子の魂も頂くよ。」
お兄ちゃんはそう言いながら、二人の人間の魂を同時に肉体から切り離した。
勇太君の魂は透き通る青、勇太君のお父さんの魂は黒。まるで、ブラックホール。
子供は、何があっても純粋な心の持ち主なのだ。
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