ANVIL

東松 蒼璃朱

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第四章 : お兄ちゃんは一人だけ

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「大人しく闇を捨てて光となれ!紗音!」
「っ…嫌だ!嫌!止めて!」
でもやっぱり、光音お兄ちゃんの方が力が強い。光に呑まれる闇は大人しく待たないといけないのか。
何度斬ろうとしても弾かれる。完全に行動が読まれてる。ただでさえ、動ける範囲が狭い結界の中。どんどん端に追いやられる。
このままじゃ、私は斬られておしまいだ。相手は天使だから、そんな残酷な事は出来ないと思われてるのかもしれないが、天使は悪魔より残酷な生き物だ。自分は正義なのだと信じる生き物。悪には容赦なく襲いかかって来る筈だ。
たとえ、その天使が実の兄だとしても。
「早く私を魔界に戻して!私は此処に居てはいけないの!早く!」
「まだそんな事を言ってるのか?お前を魔界に行かす訳にはいかないんだよ!」
「どうして?光音お兄ちゃんだって、たった一人の妹を捨てたくせに。」
「それは……。」
思い出したくない事を言われたのか、光音お兄ちゃんの力は弱まってるのが分かる。もう強い光の力を感じない。私は剣を離した。その瞬間、剣は霧となり、消えた。 光音お兄ちゃんも槍を離して、口を開いた。
「俺は、弱かったから母さんに負けた。お前を守れなかった。ごめんな、紗音。」
「何言ってるの?私の味方は天界には誰も居ないの!だから、悪魔として過ごしてきた。夜斗お兄ちゃんと一緒に。羽根を失った状態で下界に長くいれば、消える。決して天使は人間にはなれない。転生でもしない限り。羽根が無いから、天界には一人では戻れない。」
「だから、俺も助けに行けなかった。『助けに行かないなら、羽根を残しておきます。』と母さんに言われたから。何処かで元気に過ごしてくれればと願うしかなかった。たとえ、そこが魔界でも。そして今日、紗音を見つけた。最初は複雑な気持ちだった。女神の子である紗音が、堕天使として魔界に居るってね。でも、戻って来てくれてありがとう。」
光音お兄ちゃんは、涙を流しながら強く唇を噛み締めてそう言った。そうして、もう一度、私を抱きしめた。天使の涙は、当たると痛い。ピリピリする。
その時、結界にヒビが入った。大きな亀裂がバキッと音を立てながら広がっていく。
数秒後、結界は破られた。卵の殻が飛び散っていくみたいに。
「うっわ、俺と顔そっくり。まるで同一人物。」
私は今、その声に安心したかもしれない。
「夜斗お兄ちゃん!」
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