異世界の焼き肉屋

正海広竜

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とあるOL 2

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 同僚と会社近くの居酒屋に入り飲む凛子。
 酒と肴を楽しみながら会話する二人。
 かなり飲んだのか分からないが、同僚が酔いで顔を赤くしていた。
 だが、凛子は酔った様子を見せずまだ飲める様であった。
 同僚に比べると、凛子は酒に強いようであった。
 同僚の顔を見た凛子はそろそろお開きにした方が良いと思い店員を呼んで勘定にして貰った。
 辛うじて意識がある同僚と割り勘にして店を出る凛子。
「じゃあ、またね~~」
 酔いで良い気分になった同僚とは店前で別れた凛子。
(お腹が空いて来たな。明日は休みだし、何か食べて帰ろう)
 何処かに食べ物を出す店はないかと探す凛子。
 そうして、探していると二階建て一軒造りの店を見つけた。
 店の扉には『open』と書かれた札が掛けられいた。
 店名が書かれた物は無く、暖簾も掛かっていなかったが何かの食べ物屋だと思う凛子。
 初めて見る店なので入ろうか迷っていると、換気扇から美味しい匂いがしてきた。
 その匂いに釣られて凛子はこの店に入る事に決めた。
 何を食べさせてくれるのだろうと思いながら引き戸に手を掛けてガラガラと音を立てて開いた。
 開かれた扉の先にまず目に着いたのは黒いエプロンを着た蜥蜴人間であった。
「・・・・・・いらっしゃい」
 その蜥蜴人間は凛子を見るなりそう言った後見もしないでカウンター席の向かいにある厨房で作業しだした。
 異世界と交流する様になった昨今では、蜥蜴人間だろうがゴブリンだろうがよく見かける様になった。
 その為、凛子は蜥蜴人間の店長を見ても何とも思わなかった。
 扉を開けた以上入るのが礼儀だと思い扉を潜り店に入る凛子。
 そして、空いているカウンター席に腰を下ろした。
「メニューをどうぞ」
 ボソリと重い声で言いながらアクリル板の中にあるメニューを渡し、ついでとばかりに水と氷が入ったガラスのコップを優しく置き、側に水が入ったピッチャーも置いた店長。
 メニューを渡された凛子は目を通した。
(ふ~ん。初めて入る店だけど。メニューは一品だけなのね)
 肉と飲み物が書かれているだけのメニューを見て、何の肉なのか気になる凛子。
「・・・・・・すいません。肉を中大で焼き方はレアで」
「・・・・・・ん」
 店長はそう言うと同時に奥に引っ込んだ。
 肉ってどんな肉が出てくるのだろうと内心ドキドキしながら待つ凛子。
 水を飲み気を落ち着かせる事にした。
「あっ、美味しい」
 思っていたよりも美味しい水であったので凛子はコップの水が空になるまで飲み続けた。
 喉を鳴らしながら美味しいそうに飲んでいく姿は、誰かが見ていたら飲みたいと思えるほどであった。
 そして、お代わりを注いで今度はチビチビと味わうように飲んでいく。
 ちびちびと飲んでいっても、何も頼んでいないので水だけ飲むしかなかった。
 二杯目の水が無くなりお代わりしようかと思っていた所に奥に居た店長が奥から皿を持って戻って来た。
「お待ち。肉の中大サイズ。焼き方はレアです。味付けはお好みで」
 店長はそう言って凛子の前に色々な調味料を置いた。
 塩胡椒。中濃ソース。ウスターソース。ケチャップ。マヨネーズ。タバスコ等々。
 色々な調味料が置かれた。
「・・・・・・」
 皿に盛られた肉はマンガ肉であった。
 香ばしく焼かれた肉は胃袋を刺激する匂いを醸し出していた。
 凛子はその肉を見て思わず生唾を飲み込んでしまった。
「美味しそう。どんな味がするのかな」
 凛子は骨の両側を取り肉を近づける。
 そして、口を大きく開けてそのまま齧り付いた。
 齧りついた部分を噛み千切り口内で咀嚼すると、うっとりとした顔をする凛子。
(美味しい!)
 塩と胡椒だけしかかかっていないのに美味しかった。
 咀嚼する度に肉汁が溢れ出ていた。
 焼き方はレアであったが、中身の部分は赤いままであったが、中まで火が通っていた。
 この店長は良い腕をしているわと思う凛子。
 噛み切れるほどに柔らかいので顎が疲れる事無く食べ続ける事が出来た。
 そして、美味しい肉にもっと味わおうと齧りつく凛子。
 両側の骨を持って齧りつくので、口の周りは脂でテカテカしていた。
 口の周りがどれだけ汚れようと食べすすんでいく凛子。
 その食べっぷりは周りに誰が居ようと構わない様であった。
 そうして、食べすすんでいく凛子であったが、途中から目から涙が出て来た。
「・・・・・・ふ、ふぐ、ぐす、ううううう」
 食べている最中で突然泣き出す凛子。
 そんな凛子を見た店長は何も言わなかった。
 ただ、奥に引っ込んだ。
「う、ううううう、めつきがわるいって、こんなのうまれつきだから、なおしようがないでしょうが、そんなことをいうんだったら、こくはくするまえにきづけ・・・・・・・ばかっ、うわああああっっっ」
 知り合いが一人も居ない店という事でが、誰にも打ち明けられない感情を吐き出す凛子。
「うわあああ、ぐすぐす、このにくおしいい、ほんとうにおいしい・・・・・」
 泣きながら肉の味の感想を述べる凛子。
 ある程度味わうと、今度はマスタードとケチャップを取り肉に満遍なくかけて行った。
「・・・・・・ふぐうう、ますたーどのからみとけちゃっぷのさんみが、にくのあぶらをうちけして、いくらでもたべれそう・・・・・・うううっっっ!」
 マスタードとケチャップで口の周りと赤と黄色に染めていく凛子。
 口を拭う事なく肉を食べ進めていった。
 肉を食べ終えると、ようやく口を拭いだした。
「ふぅ・・・・・・もう一本いけるかな?」
 凛子は同じサイズのをもう一本注文しようかなと思っていると、店長がお盆を持って戻って来た。
「サービス・・・・・・」
 そう一言言って凛子の前に丸く形づくられた氷が一つ入ったロックグラスを置かれた。
 そして、店長の手には瓶が握られていた。
 瓶の蓋を開けると、グラスに中身を注いだ。
 トクトクと音を立てながら注がれていく透明な液体。
 七分目ほど注がれると其処で注ぐのを止めた。
「あ、どうも・・・・・」
 意外に良い人なのかも?と思いつつグラスを手に取り匂いを嗅ぐ凛子。
「・・・・・・お酒の匂い。ウイスキーかしら?」
 凛子が呟くと同時にグラスを傾けて、グラスの液体を喉に流し込んだ。
「・・・・・・んん⁉ 日本酒だと思っていたら、これブランデーだわ‼」
 何かのハーブで香りづけされていたせいでか清涼感を感じさせた。
 と同時に強いアルコールを持っていた。
 喉だけではなく胃袋もかっと熱くさせた。
 それでいて甘かった。
「故郷の酒だ。ドラゴンのミルクと言われている」
 店長がそう言いだした。
 どういう由来なのか訊ねようとしたら、店長はピッチャーを取りグラスに注いだ。
 すると、透明であった液体が少しずつ白濁していった。
「へぇ、水を注ぐと白く濁るのね。どんな味かしら」
 凛子がグラスを手に取り口をつけた。
「・・・・・・うん。何か落ち着く味ね」
 初めて飲む酒なのに、何故か懐かしいと思える味であった。
 飲んでいると飽きないなと思いながら、もう一口飲む凛子。
「・・・・・・お代わり貰えるかしら?」
「サービスだ」
 そう言って店長は凛子に注いだ酒の瓶を置いた。
 好きなだけ飲んで良いという意味だと受け取る凛子。
「じゃあ、追加で肉をさっきと同じサイズで・・・三本。焼き方も同じで」
「ん・・・・・・」
 凛子の注文を聞いた店長は奥に引っ込んでいった。
 注文した品が届くまでサービスで貰った酒を飲んでいく凛子。
「へぇ、水の量で味が変わるんだ。これは良い酒ね」
 値段は見ていないがサービスで貰ったので無くなるまで飲む事にした凛子。
 やがて、注文した肉が届いた。
 凛子は振られた事を吹っ切る様に肉と酒を味わった。
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