転移したら研師になった。  この能力で全てを研ぎ澄ます

正海広竜

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第二十八話

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 そうして、イヴァリン達に連れて行かれた俺は沢山のテントの中の中央に着くと、其処で降ろされた。
 まぁ、俺のスキルを見たいだろうから、何かの武器で見せるつもりだろう。
 ふふふ、それを見て驚くが良い。

 イヴァリン達は同族の者達と話した。
 話していた同族の人は突如驚いた顔を浮かべた。
 そして、俺を見た。
 何だ? 何をさせるつもりだ?
 イヴァリンに促されて、同族の人はその場を離れて行った。
 
 さっきの人は何を驚いていたのだろう。其処が非常に気になる。
 そして、その驚いた顔を浮かべていた理由が直ぐに分かった。
 その人が連れて来たのは先程の厩舎の近くに獣舎に入っていたグリフォンであった。
 安全の為か、首に縄を繋がれた状態であった。
 
 なに? このグリフォンと戦えと言うのか?
 連れて来られるなり、戦闘か⁉と思っていたが、イヴァリンが布を持って来た。
「これは?」
「グリフォンの爪を磨く布だ。まずは、それでグリフォンの爪を磨け」
「・・・・・・普通、此処は武器だろうっ」
「馬鹿か。貴様っ、何処の馬の骨かも分からない者に我らの大切な武器を預けると思ったかっ」
 ぐっ、確かに正論だ。
 アマゾネスはどうも狩猟民族の様だから、武器は命と同じ位大事だ。
 
 それを何者か分からない俺に預けるなどどう考えてもしないだろう。
 それは分かる。分かるのだが。
 脳筋の奴らに言われると、何か悔しい。
 しかも、俺を強引に拉致した奴らが言うと余計にそう思う。
「グルルルルッ」
 俺を見るグリフォンは凄い警戒しているのが見て分かった。
 唸り声をあげながら、何時でも飛び掛かれる様に爪を出していた。

「こら、暴れるなっ」
 首に縄を持っている人は何とかグリフォンを抑えていた。
 そりゃあ、見慣れない人が居たら警戒するよな。
 う~ん。動物の宥め方とか知らないぞ。
 まして、グリフォンだからな、どうやって宥めれば良いんだ?

「ど、どうどう」
「ピイイイイッッ」
 声を掛けるが、余計に警戒心を抱かせてしまった。
 せめて、言葉が通じれば良いんだけどな。
「ピイイイイ(何だ。貴様っ。やるつもりかっ)」
 あっ、何か言葉が分かって来た。
 これが言語通訳のスキルのお蔭か。
 初めて、あのクソ女神に感謝したい気分になった。
「あ~、ちょっと話を聞いてもらえるかな」
 俺は声を掛けるが、グリフォンは警戒は解かないが話を聞く体勢を取った。
 其処で俺はグリフォンに俺の事情と、爪を磨く事を求めた。

「ピイイ(仕方ない。やらせてやろうではないか)」
「おお、ありがたい」
 ちょっと上から目線なのが気に障るが、此処は我慢だ。我慢。
 グリフォンが前足を突き出してくれたので、俺は貰った布で爪を磨いた。
 ふむ。前に親父の革靴を磨いた感じでやればいいな。
 この布も何かの油が沁み込んでいる様で、ちょっと鼻につく匂いだが、グリフォンの爪を磨くとピカピカになっていた。

「ピイ(うむ。上手いではないか。爪磨き役は十分だな)」
 何か上から目線なのが気になるが、とりあえず喜んで貰っている様なので良しとしよう。
「ピイイ(ついでだ。後ろの足も頼む)」
「へいへい」
 グリフォンに言われるがまま、俺は後ろ足を磨いた。
 そして、グリフォンの両足の爪が磨き、ピカピカとなった。
「これで良いか?」 
 俺がグリフォンに訊ねると、グリフォンは満足そうに頷いた。
「ピイイイッ(なかなか、やるな。他の同族にもやってくれるか?)」
「ああ~、そちらの方に頼んで連れてきたら、やってやるよ」
 
 俺がそう言うと、グリフォンは頷いて縄を持っている人に顔を向けた。
 一人と一匹は暫し見合った後、アマゾネスの人が頷いた後、縄を離し何処かに向かった。
 少しすると、獣舎に入って来たグリフォンを連れて来た。
 多分、全部だよな。
「一、二、三・・・・・・三十頭ぐらいいるな」
 これ、全部やるの? 
 そう思い、俺は先程のグリフォンを見た。
 グリフォンは当然とばかりに頷いた。
「・・・・・・やってやるよ。こんちくしょうっ」
 半ば自棄になりながら、俺はグリフォン達の爪を磨いた。
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