悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第35話 パーティー会場に向かう

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 学園を出たザガード達は屋敷へと戻った。
 屋敷の玄関を開けて入ると、使用人達が出迎えた。
「「「お帰りなさいませ。お嬢様」」」
 使用人達に出迎えられたリエリナは思う事なく歩いて行く。
 そして、執事長が前に出てきた。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
「ただいま。爺」

 リエリナが爺と呼んだ者は、この屋敷で古株といえる者で名をウェイン=フォン=ワリーンという者だ。
 見た目の年齢は六十代くらいの老人なのだが、現当主とのオイゲンの祖父が生まれた頃から、全く見た目が変わらないと言う摩訶不思議な人物だ。
 温厚で滅多な事では、驚く事も怒る事もないという性格で、使用人達からも信頼が篤い。
「お嬢様。本日はアマミヤード伯爵のパーティーですのでお準備を」
「分かっているわ。それにしても、はぁ、・・・あの方。普段は気の良い人なのですが、孫の事になると、どうにも常軌を逸するのよね」
 リエリナは溜め息をついた。

 今、話しに出たアマミヤード伯爵は御歳五十歳になる初老の男性で、貴族ながら優れた商才を持っており、国内でも有数の商会の会長をしている。
 性格は温和なのだが、孫の事になると普段とは打って変わって過激になる。
「まぁ、仕方がありません。孫は可愛いですから」
「爺。貴方って結婚していたの?」
 そんな事を言うので、リエリナは自分が知らない所でウェインは結婚していたんだと思った。
「いえ、わたしは妻帯しておりませんよ」
「って、じゃあ、どうしてそんな事が言えるのよ⁉」
「ちょっとした茶目っ気でございます」
「自分で言う⁉」
 
 リエリナは思わず突っ込んだ。
「お嬢様。淑女たるもの、みだりに大きな声をあげてははしたのうございます」
「誰の所為であげていると思っているの?」
「勿論、わたしでございます」
「分かっているのなら、そんな突っ込ませるような事を言わせないでくれる⁉」
「ほほ、お嬢様は反応が良いので、つい」
 好々爺みたいな笑みを浮かべるウェイン。
 そんな笑みを見て、リエリナは唇を尖らせた。
 自分ではウェインには口で敵わないのだと教えられて、不満そうであった。
「服の準備は出来ております。部屋に置いておりますので、お好きな物を」
「ええ、分かったわ。ああ、それと、お姉様は?」

「ゼノミティア様でしたら、用事があって屋敷に戻る暇がないので、現地で会おうとの事です。何でも、イヴァン様と一緒にパーティー会場に向かうとかで」
「ああ、そうなの。それにしても、あの二人って仲が良いわよね」
「左様でございますな」
 リエリナとウェインは遠い目をした。

 次期皇太子を縄で縛って、屋敷に連れ来た時は御家断絶になるかと思われたが、そんな事があっても、イヴァン皇太子は平然としいた。
 というよりも、何が気に入ったのか分からないが、それ以来、何かとゼノミティアと一緒に居る様になった。
 ゼノミティアも自分で選んだ男という事なのか、それとも皇太子の態度が気に入ったのか邪険に扱う事はしなかった。そかし、本人は邪険に扱っているつもりはなくても、傍から見たら、これはやり過ぎではという事は何度もあるのだが、イヴァン皇太子は何も言わないというよりも、そんな扱いをされても、本人は喜んでいる節があるのではと皆は思っている。

 なんやかんやと言われても、二人共仲が良いのは確かだ。
 ちなみに、ゼノミティアがイヴァン皇太子を縄で縛って公爵家に連れてきて、その縄を解いたのはこのウェインだ。その時の驚きぷっりは、普段のウェインからは想像もできない顔をしていた。

「さっと、じゃあ、部屋に行くわ。ザガード後でね」
「はい。お嬢様」
 ザガードは一礼すると、リエリナは自分の部屋へと向かった。
 リエリナが見えなくなると、ウェインはザガードを見る。
「ザガード。そなたも出掛ける準備をしなさい。危険は少ないだろうが、何があってもお嬢様方を守るのだ」
「はい。執事長」
 ザガードは胸を手を当てて頭を下げた。
 真面目に返事をするザガードを見て、ウェインは笑みを浮かべる。
「だが、無理はしなくていい。それと、リエリナはお嬢様は必ず守るのだが、ゼノミティアお嬢様は時と場合で考えて行動しなさい」
「・・・それはつまり、守らなくても宜しいという事ですか?」
「そうは言わない。だが、ゼノミティアお嬢様の事をよく考えてみなさい」
 ザガードはゼノミティアの事を考えた。
「・・・・・・特に守る必要はありませんな」
「であろう。あの方は守られるよりも、自分の身は自分で守る方が性に合っているとか言い出す御方だからな」
「ですね」

「まったく、どうしてあのような豪快な方になったのやら、幼い頃から活発な御方だと思っていたが、成長してもあの破天荒な性格は直らないとは」
 ウェインは溜め息を吐いた。
「自分は執事長みたいに長年お仕えしていないので分かりません」
「そうだな。いや、済まないな。歳を取ると、つい誰にでも愚痴をこぼす様になるな」
「は、はぁ、そうですか」
 年齢不詳だとは流石に突っ込めないザガード。
 何時までも、此処に居ても仕方がないので、ザガードは話を切り上げて、パーティに向かう服を着に自室へと向かった。
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