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第37話 見知った顔が
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やがて、人だかりがなくなると、イヴァンはザガード達の下にやって来た。
「済まない。長く待たせてしまって」
「いえ、別にお気になさらないで」
「待たせ過ぎだ。馬鹿」
リエリナが気にしないでいいですよと言おうとしたら、被せる様にゼノミティアが口を開いた。
更に、イヴァンの額を小突いた。
「「っっ⁉」」
いきなりの暴挙に、ザガード達は言葉を失った。
「今日の主役はアマミヤード伯爵の孫娘だろうが、それなのにお前が目立ってどうするんだ? えぇ?」
イヴァンの額を小突きながら言うゼノミティア。
「い、いや、済まない。確かに、その通りだ」
額を小突かれているのにイヴァンは、止めろとも痛いとも言わない。
普通なら怒っても不思議ではない事なのに、何故かイヴァンは怒りもせずにゼノミティアの好きにさせていた。
それを見て、ザガード達が慌てた。
「お、お姉さま。な、仲が良いのは結構ですが、このような所で、そのように仲が良い所を見せなくても宜しいと思いますよ。ねぇ、ザガード」
「はいっ。自分もそう思いますっ」
幾ら婚約者でも、この国の次期国王になるかもしれない人の額を小突くなどしては駄目だろうし威厳に係わる事と思い、二人は止めるように促した。
「ふん。別に問題なかろう。見られても特に問題ない」
「「いや、あると思います」」
「いや、無いな。こいつが、わたしに好き勝手にさせている所を見て、それで、こいつを失望するというのであれば、そいつの目が節穴だという事だ」
ゼノミティアはイヴァンの額を小突くのを止めて、胸を張りながら言う。
それを聞いて、二人はそれは如何だろうなと思いつつも声には出さなかった。
それはともかくとして、リエリナはイヴァンが大丈夫なのか気になったので、顔を見た。
「あの、大丈夫ですか。御義兄様?」
「ああ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね。リエリナ」
赤くなっている額を撫でながら、笑顔を浮かべるイヴァン。
(この御方は本当に人が良いと言うべきか、器が大きいというべきか。こんな事されたら、普通は誰でも怒るだろうに)
ザガードはイヴァンがどうして怒らないのだろうと不思議に思っていた。
というよりも、公爵家の使用人達の中では、どうしてイヴァン皇太子はゼノミティアと婚約しただろうと不思議に思っている者が多い。
ザガードもその中の一人だ。
皇太子という立場であれば、それこそ自分にピッタリな女性など、それこそ星の数ほど居る。
それなのに、何故ゼノミティアを婚約者に選んだのか、ザガードは未だに不思議に思っていた。
「さて、阿呆の所為で時間が取られたが、何時までもこんな所に居ても仕方がない、会場に入るとするか」
「ああ、そうだね」
「お前が言うな。阿呆が」
ゼノミティアはイヴァンの背中を叩いた。
パシンッという肉を打つ音がしたが、イヴァンは何も言わなかった。
「ほら、二人共。行くぞ」
「え、ええ、行きましょうか。ザガード」
「はっ」
内心、良いのかなぁと思いつつ、二人はゼノミティア達の後を追いかけた。
会場に入ると、既に殆どの招待客は来ていたのか、会場内には音楽と共に話し声が聞こえて来た。
「はっはは、それは良いですな」
「ええ、どうです。良い話があるのですが。乗ってみませんか?」
「まぁ、それは面白い話ですわね」
「全くです。ですが、その話しには続きがありまして」
という話し声が至る所から聞こえて来る。
(ふぅ、そんなに話していて飽きないのか?)
ザガードはその話し声を聞きながら思った。
皆が話している事は儲け話や他家の貴族の醜聞などだ。
しかし、どれもこれも信憑性に欠けており、本当にそうなのか分からい物もあれば、事実無根の話もある。
それなのに、どうして話のタネにしているのかと言うと、見栄を張る為だ。
自分の家は、これだけの情報を手に入れられるコネがあるのだから偉いのだとか、自分にはこんな話が持ちかけられるという見栄を張りたいのだ。
その為には色々な情報を手に入れる。嘘か真かは別として。
(見栄を張り過ぎて、家を潰すという事を考えないのだろうな。この人達は。それとも、潰さない自信でもあるのだろうか?)
そんな事を考えているとザガード。
ゼノミティア達に初老の男性に寄って来た。
「ようこそ。イヴァン皇太子。ゼノミティア様。それとリエリナ様」
そう言って頭を下げて挨拶する男性。
「うむ。お招きに感謝する。アマミヤード伯爵」
この中で一番、身分が高いイヴァン皇太子が返礼した。
皇太子が返礼した人物こそ今日のパーティーの主催者であるマキサ=フォン=アマミヤード伯爵である。
「殿下が当家の屋敷に足を運んで頂き望外の喜びです。わたくしめは嬉しく思います」
「そうか。で、今日のパーティーの主役はどちらかな?」
「はい。こちらにおります。ヨナ」
アマミヤード伯爵が背後にいる女性に声を掛けた。
黄緑色の髪をエアリーボブにして、緑色の瞳をしていた。
目鼻立ちする顔立ち。身長はリエリナと同じ位だ。
その緑色のドレスを着ていた。
「あら?」
「貴方は」
リエリナとザガードはその女性を見て驚きの声をあげた。
その女性は学園の部活動の紹介に時に、弓道部で演舞をしていた女性だからだ。
「済まない。長く待たせてしまって」
「いえ、別にお気になさらないで」
「待たせ過ぎだ。馬鹿」
リエリナが気にしないでいいですよと言おうとしたら、被せる様にゼノミティアが口を開いた。
更に、イヴァンの額を小突いた。
「「っっ⁉」」
いきなりの暴挙に、ザガード達は言葉を失った。
「今日の主役はアマミヤード伯爵の孫娘だろうが、それなのにお前が目立ってどうするんだ? えぇ?」
イヴァンの額を小突きながら言うゼノミティア。
「い、いや、済まない。確かに、その通りだ」
額を小突かれているのにイヴァンは、止めろとも痛いとも言わない。
普通なら怒っても不思議ではない事なのに、何故かイヴァンは怒りもせずにゼノミティアの好きにさせていた。
それを見て、ザガード達が慌てた。
「お、お姉さま。な、仲が良いのは結構ですが、このような所で、そのように仲が良い所を見せなくても宜しいと思いますよ。ねぇ、ザガード」
「はいっ。自分もそう思いますっ」
幾ら婚約者でも、この国の次期国王になるかもしれない人の額を小突くなどしては駄目だろうし威厳に係わる事と思い、二人は止めるように促した。
「ふん。別に問題なかろう。見られても特に問題ない」
「「いや、あると思います」」
「いや、無いな。こいつが、わたしに好き勝手にさせている所を見て、それで、こいつを失望するというのであれば、そいつの目が節穴だという事だ」
ゼノミティアはイヴァンの額を小突くのを止めて、胸を張りながら言う。
それを聞いて、二人はそれは如何だろうなと思いつつも声には出さなかった。
それはともかくとして、リエリナはイヴァンが大丈夫なのか気になったので、顔を見た。
「あの、大丈夫ですか。御義兄様?」
「ああ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね。リエリナ」
赤くなっている額を撫でながら、笑顔を浮かべるイヴァン。
(この御方は本当に人が良いと言うべきか、器が大きいというべきか。こんな事されたら、普通は誰でも怒るだろうに)
ザガードはイヴァンがどうして怒らないのだろうと不思議に思っていた。
というよりも、公爵家の使用人達の中では、どうしてイヴァン皇太子はゼノミティアと婚約しただろうと不思議に思っている者が多い。
ザガードもその中の一人だ。
皇太子という立場であれば、それこそ自分にピッタリな女性など、それこそ星の数ほど居る。
それなのに、何故ゼノミティアを婚約者に選んだのか、ザガードは未だに不思議に思っていた。
「さて、阿呆の所為で時間が取られたが、何時までもこんな所に居ても仕方がない、会場に入るとするか」
「ああ、そうだね」
「お前が言うな。阿呆が」
ゼノミティアはイヴァンの背中を叩いた。
パシンッという肉を打つ音がしたが、イヴァンは何も言わなかった。
「ほら、二人共。行くぞ」
「え、ええ、行きましょうか。ザガード」
「はっ」
内心、良いのかなぁと思いつつ、二人はゼノミティア達の後を追いかけた。
会場に入ると、既に殆どの招待客は来ていたのか、会場内には音楽と共に話し声が聞こえて来た。
「はっはは、それは良いですな」
「ええ、どうです。良い話があるのですが。乗ってみませんか?」
「まぁ、それは面白い話ですわね」
「全くです。ですが、その話しには続きがありまして」
という話し声が至る所から聞こえて来る。
(ふぅ、そんなに話していて飽きないのか?)
ザガードはその話し声を聞きながら思った。
皆が話している事は儲け話や他家の貴族の醜聞などだ。
しかし、どれもこれも信憑性に欠けており、本当にそうなのか分からい物もあれば、事実無根の話もある。
それなのに、どうして話のタネにしているのかと言うと、見栄を張る為だ。
自分の家は、これだけの情報を手に入れられるコネがあるのだから偉いのだとか、自分にはこんな話が持ちかけられるという見栄を張りたいのだ。
その為には色々な情報を手に入れる。嘘か真かは別として。
(見栄を張り過ぎて、家を潰すという事を考えないのだろうな。この人達は。それとも、潰さない自信でもあるのだろうか?)
そんな事を考えているとザガード。
ゼノミティア達に初老の男性に寄って来た。
「ようこそ。イヴァン皇太子。ゼノミティア様。それとリエリナ様」
そう言って頭を下げて挨拶する男性。
「うむ。お招きに感謝する。アマミヤード伯爵」
この中で一番、身分が高いイヴァン皇太子が返礼した。
皇太子が返礼した人物こそ今日のパーティーの主催者であるマキサ=フォン=アマミヤード伯爵である。
「殿下が当家の屋敷に足を運んで頂き望外の喜びです。わたくしめは嬉しく思います」
「そうか。で、今日のパーティーの主役はどちらかな?」
「はい。こちらにおります。ヨナ」
アマミヤード伯爵が背後にいる女性に声を掛けた。
黄緑色の髪をエアリーボブにして、緑色の瞳をしていた。
目鼻立ちする顔立ち。身長はリエリナと同じ位だ。
その緑色のドレスを着ていた。
「あら?」
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