悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第43話 これは珍しい

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 コウリーン達にブラッシングを受けた翌日。

 ザガードの部屋に朝日が差しこんだ。
 その陽光により、目を覚ますザガード。
「・・・・・・・」
 そして、直ぐに昨日の事を思い出して、布団に包まる。

「~~~~~~~」
 ブラッシングを受けた翌日は、何時もこうして布団に包まる。
 そして、羞恥心を出来るだけ減らしてからベッドに出る。
 それがいつものパターンなのだが。
「うん?」
 ザガードはベッドに包まっていると、自分の身体に違和感を感じた。
 
 自分の身体に触れると、毛が深くない身体だ。
 なので、人狼ではなく人間の姿だ。
 それは分かるのだが、何故か尻の付け根あたりから、何かが動く感触があった。
 更には頭頂部にも動く何かがあった。

 ザガードはそれが気になり、ベッドから降りた。
 そして、洗面所に行き、鏡で自分の姿を見た。
「なっ⁉」
 ザガードは自分の姿を見て驚愕した。

 人間の頭の上に犬耳があったからだ。
 犬耳があるので、もしかしてと思い、ザガードは首を動かして、尻を見ると、其処には尻尾があった。
「これは、また・・・・・・」
 ザガードは今までにない事に言葉を失っていた。
 
 満月になると稀に獣人にある事はあるが、人狼になった翌日に獣人になるのは今までなかった。
 なので、この場合どうするべきか悩んだ。
 コンコン。
 悩んでいると、ドアがノックされた。
 一人で悩んでも仕方がないので、ザガードはこの事を話す事にした。
「今開ける」
 とだけ言って、ザガードはドアを開けた。
 ドアを開けると、そこに居たのはリエリナであった。

「これは、お嬢様。こんなに朝早くから何用で」
 ザガードはその場で畏まった。
 今日は学園は休みの日なので、てっきり、まだ寝ていると思っていたザガード。
「ああ、今日は出掛けるから、お供をしてもらおうと来たのだけど」
 リエリナはザガードの頭の上にある耳を見て、目をパチクリさせた。
「珍しいわね。人狼になった翌日に犬耳を生やすなんて」
「はっ。わたしも驚いております」
「・・・・・・まぁ、会話が出来ない状態ではないから来てもらえるかしら?」
「お嬢様が望むのであれば」
 ザガードはそう答えると、耳がピコピコと動いた。
「・・・・・・」
「何か?」
 リエリナが黙り込んだので、ザガードは不審に思い訊ねた。
「あ、ああ、何でもないわ。じゃあ、準備して頂戴ね」
 リエリナはそう言ってその場を離れた。
 ザガードは急ぎ、着替えの準備に取り掛かった。
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