悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第75話 お嬢様。其処までしなくても

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「では、互いの宣誓は終わったので、双方前へ」
 オベランがそう言うと六人が前に出て来た。
 ライアン達は訓練用の剣を持ちながら余裕そうな笑みを浮かべていた。
「お前も大変だな。面倒な主を持つと」
 と全然そう思ってない様な口調で話しかけるのはラミレスであった。
「まぁ、これも自分の主の不明を恨むんだな」
 そう言って笑い出すラミレス。
「おい。よさないか。主の不明だからと言って笑うのはどうかと思うぞ」
 ダーマッドがラミレスを窘めた。
「だが、事実だ。リエリナ嬢はもっと賢い御方だと思っていたが、どんだ見掛け倒しだ」
 ロイドは肩を竦めた。
 それに同調するかのようにゴルドファも口を開いた。
「そうだな。まさか、従者一人に俺達の相手をさせるとはな」
 ゴルドファの口調には嘲っている様に聞こえた。
「ふん。こんな茶番はさっさと終わらせて、カトリーヌと共にサロンに行かないとな」
 ライアンも既に勝ったという顔をしていた。

「・・・・・・」
 ライアン達が好き勝手に話している中、ザガードは無言であった。
「おい。何か行ったらどうだ?」
 ザガードが何も言わないのでラミレスが話しかけるが、ザガードは何も言わなかった。
 ラミレスは舌打ちをしたが、直ぐにこいつ内心怯えているのではと思った。
 ラミレスへの対応から、他の四人もそう思った。

「私語は慎みうように。では、決闘を始める前にルールを説明する。今回の決闘はザガードがライアン王子達全員を戦闘不能又は気絶させれば勝利とするが、宜しいか?」
「・・・・・・(コクリ)」
 ザガードは頭を縦に振った。
「ライアン王子達はザガードが戦闘不能又は気絶した場合を勝利とする。宜しいか?」
「ああ、それで構わない」
 代表してライアンが答えた。
 それを聞いてオベランは手を掲げる。
「では、これより決闘を行う。双方、構え」
 ライアン達は剣を鞘から抜き放ったが、ザガードは鞘に納めたままであった。
 だが、オベランは構わず手を振り下ろした。
「始め‼」
 オベランが開始の宣言と同時にザガードは腰を落として駆け出した。
 その反応の速さにライアン達は付いて行けなかった。
「はやいっ」
 そう言い終わる頃にはザガードは五人を通り過ぎていた。
 ザガードが五人を通り過ぎた時には、鞘に納まっていた剣は抜かれていた。
覇極はきょく始天してんりゅう抜刀ばっとうじゅつ――――――『ふう一閃いっせん』」
 ザガードは剣を振り落とすと同時に、ライアン達五人が持っていた剣が綺麗に真っ二つになった。
「「「「「えっ⁉」」」」」
 驚きの声を上げると同時にライアン達が着ている服が横一文字に斬られていた。
 服は切れていたが身体には傷は無かった。

 その代わりに五人の腹には叩かれたと思われる跡があった。
 五人はそれを見て倒れだした。
「これも決闘。不敬ですが許されよ」
 ザガードは振り返る五人にそう言って刀を鞘に納めた。
「審判。王子達は戦闘不能の様ですが?」
「ああ、うむ。そうだな。勝負あり。勝者ザガード」

 オベランがそう宣言すると、観客席からは喜びと悲哀の歓声が響いた。
 皆口々に勝った事を喜んでいたり、王子達が負けた事に悲しんでいたりという反応であった。
 ザガードはリエリナを探したが、観客席の何処を見回してもリエリナの姿は無かった。
 更に言えばカトリーヌもローザアリア達の姿も無かった。

「よくやったわ。流石ね」
 そう声を掛けるのはリエリナであった。
「これはお嬢様。何時の間に」
 ザガードは驚きながらも一礼した。
 何時の間にかアリーナにリエリナ達が居たのだから驚くのも当然であった。
 更に言えば、何故かティルズ達男子生徒数人の姿もあった。
「あの、リエリナ嬢。俺達に何をする為に此処に?」

 男子生徒の一人がリエリナに訊ねた。
「ちょっと手伝って欲しかったのよ。ザガードも手伝いなさい」
 リエリナがそう言って何をするのだろうと皆思った。
 数分後。それが何なのか分かった。

「ほら、ちゃんとやりなさい。じゃないと、ちゃんとした罰にならないでしょう」
「で、ですが」
「いいから、早くやりなさい」
「・・・・・・はい」
 男子生徒とリエリナが話していた。
 男子生徒は躊躇っていたが、リエリナは睨み付けると行動を開始した。

 それは、絵を描いている様だ。
 勿論描いているのはライアン達だ。
 未だに気を失っているライアン達を仰向けにさせて、首にプラカードを下げていた。
『僕達、五人掛かりでリエリナの従者と決闘をしたけど負けました。見掛け倒しのボンクラです』
 と書かれていた。
 それを絵に描かれていた。
「これで、この人達は当分は大きな顔は出来ないでしょうね」
 ホホホと上品に笑うリエリナ。
 それを見て決闘場に居る者達は皆、リエリナの事を恐ろしい物を見るかのような目で見た。
 それから、学校ではリエリナの事を『女帝』と呼ばれる様になった。
 本人は何でそう言われるのは不思議そうであったが、その現場に居たザガードもやり過ぎだと思った。
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