純白少女と転生者

おすねこ

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第1章『聖霊樹の巫女』

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 冒険者のランクはFランクから始まって、E・D・C・B・A・S・SS・SSSと上昇していく。
 基本的にランクはSまでで、Sランク冒険者というのもこの世界に三人しか存在しないらしい。
 そしてSSランクより上は現時点ではだれも存在しないそうだ。

 冒険者ギルドではランクごとに依頼の難易度を割り振っており、一応自分の一つ上のランクまでは受注できるらしい。
 ただし例外としてFランクだけはFランクの依頼しか受けることはできない。

 これには理由があって、Fランクというのは成人していない未成年が与えられるランクであり、討伐依頼なんかの危険な依頼は受けられないようになっているのだ。
 Fランクは言ってみれば孤児などの働き口のない子供達への日雇い斡旋のような役割があるわけだ。

 ちなみに俺達のように成人しており、講習もしっかり受けた素人はEランクからのスタートになる。
 成人していれば講習の有無は関係ないらしいが、講習を受ける事によってランクアップに必要なギルドポイントをいくらか加算した状態で開始できるとのことだ。

 ギルドポイントというのは、こなす依頼によって設定されており、そのポイントがたまり切ったのちにギルドの提示した依頼をこなし終えると晴れてランクアップというわけだそうだ。
 なお、今回の講習で加算されるポイントは、講習での成績によって変動するそうだ。
 さっき俺達が行った小テストの成績なんかは、もろに響いてくることだろう。

「というわけで、今日の講習は以上よ。明日は実際のギルドカードの生成と実技試験が待ってるからね」

「つまり明日は俺様が輝くというわけだ!」

 リサ先生の隣で今まで暇そうにしていたロンド先生が、親指をびしっと自分に突き付けてニカっと笑った。
 それなら別に一日目からいる必要はなかったのでは……

「単純に暇だったのよ、この馬鹿は」

 俺の、というかおそらく俺たちの考えを読んだらしいリサ先生の適切な突っ込みにロンド先生ががっくりと落ち込んでいた。
 暇なのも本当なんだろうけど、一日目の講習でも何か出番があると思っていたら全くなかった事がより大きなショックを与えているのかもしれない。

「それじゃあ、開始時間は今日と同じで九の刻からになるから遅刻はしないようにね」

 そのリサ先生の言葉を合図に俺たちは解散となった。



「ほほう、これはなかなかの純度ですね……」

 一日目の講習が終わった俺は、ギルドの買い取り受付までやってきていた。
 ここでは魔物の素材や、武器や防具、薬といった諸々の買取を行ってくれるのだ。

 そして俺が買い取りに出しているのは……最初から俺の荷物の中にあった『小さな瓶に入った緑の液体』だ。
 見た目にゲームのポーションのイラストと酷似しているので、おそらくポーションだと思うのだがどの程度のレベルの物かがわからない。
 これがそこそこの値になれば、宿代ぐらいは稼げる……かもしれない。

 これが俺が今できる唯一のアテである。
 このアテが外れてしまえば、最悪エミリオにたかるかどこかで野宿するしか道はない。

「これなら、そうですね。一本につき銀貨五枚でどうでしょう?」

「銀貨五枚か……」

 となるとこれを二本とも売れば銀貨にして十枚。多分だが金貨一枚分の価値になるはず。
 そうなれば、当面の生活費程度にはなりそうだ。
 にしても、俺に鑑定の能力があればなぁ……物の価値もしっかりわかるってのに。

 これがゲームの中で、俺が輪廻士ソウルリンカーだったなら『宝石商ゴードウェル』の英魂をセットすれば『宝石研磨』『真贋判定』『鑑定眼』のアクティブスキルを使用可能になるので、簡単に鑑定できるんだが……
 そういえば、俺が最後の最後で引き当てた『錬金術師ユーディリット』はどんなスキルを使用可能になるんだったのだろうか。
 せっかく最後の最後に引き当てたのに、その能力をじっくり検証する事すらできなかったのが悔やまれる……

「おーい、兄さん。どうするんだい?」

「あ、すみません。ちょっとぼーっとしてしまって……」

「ふむ、少し疲れが出ているのかもしれないな。どうだろう、カイトよ。私もこれは銀貨五枚が妥当なところだと思う。ポーションを手放すのが危険ではないかとの心配もあろうが、ここは背に腹は代えられぬのではないか?もし、どうしても売り渋るというのであれば私が……」

「いや、売るよ。じゃあ二本お願いします」

 エミリオは宿代を出してくれようとしているようで、俺は慌ててそのまま即決する。
 彼は極力俺に恩着せがましいようなことはしないように言葉を選んでくれているが、これ以上彼に頼り切るのも納得がいかない。
 やはり冒険者たるもの、自分のことぐらいは極力自分でするものだ。

「よし、それじゃあどこへ行こうか?」

「それなんですが、提案があります。リックスさん達の泊まっている宿にご厄介になるのはどうでしょう?」

「彼らの?ああ……なるほど」

 彼らはどう見ても財政的に裕福な感じではない。
 となると、彼らが泊まっている宿屋は格安のお手頃料金設定である可能性が高いという事か。

 幸い彼らとは、夕飯も一緒に食べようと約束しているから、その時に紹介してもらえるかもしれない。
 どうやらこの講習を乗り切るまでの三日は、なんとか屋根と寝床のある生活ができそうだった。
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