純白少女と転生者

おすねこ

文字の大きさ
19 / 38
第1章『聖霊樹の巫女』

18

しおりを挟む
「ふぅ、ゲームじゃなくて実際動くとなると少し不安なところもあったが……結構思い通りになるものなんだな」

 脳内ではターゲットカーソルやスキルウインドウが、ゲームをプレイしている時のように表示されている錯覚があった。
 廃ゲーマーとまではいかないまでも結構やりこんだからなぁ。

「大丈夫だったか、リーフィア?」

「ん、平気。カイト凄い」

 そう言って俺を見上げてくるリーフィアは、表情までは変わらないものの瞳だけはキラキラ輝いているような気がした。
 あまりに強い存在に対して人が覚える感情は、きっと二つ。
 恐怖か憧れだ。
 幸いにして、リーフィアが俺に抱いたのは後者だったようだ。

「………お?」

 ドロップアイテムのバウンドウルフの牙や毛皮を拾っていると、リーフィアのいる側に帰還用の魔法陣が展開した。
 という事は、隠しイレギュラー扱いだったが、今のバウンドウルフの群れが個々のボス扱いになっていたという事になる。
 戻る方法自体あるかどうかわからなかったから、これはありがたい。

 問題はこれを使って戻ると、完全にエミリオ達とは分断状態になってしまう事だが……まぁ、しょうがないだろう。
 一度戻って彼らが戻っていなければ、再度ダンジョンに足を踏み入れて彼らと合流するしかないと思う。
 幸いリサ先生の使い魔はエミリオ達と一緒だから、リサ先生なら二人の位置は把握できるだろう。

 まぁ、それよりも問題はリーフィアなんだよな……ここに放置していくなんていうのは論外だし、とはいえ連れて帰ってそれからどうしたものか……

「なぁ、リーフィア。とりあえず……俺と一緒にここを出るか?」

「ん、出る」

 俺の問いかけに彼女は素直に頷いた。
 あまりに素直すぎて、悪い奴に騙されたりしないかと俺は今からそんな心配をしていた。



『カイト!』

 俺がリーフィアを背負って帰還魔法陣からダンジョンの外に出てくると、そこにはリサ先生とエミリオとセレンさんの三人が待っていた。

「よかった、無事だったのね!エミリオ君たちも丁度いま戻ってきたところで、これから二人を街に帰してから、あたしも捜索に入ろうと思ってたんだけど……」

「いやいや、私達ももちろんリサ先生と同行し再度入るつもりだったのだよ。とはいえ、リサ先生に止められてしまってね。いやはや、しかし無事でよかった!」

「ちなみにロンドはあたしが使い魔で君が消えた状況を見てそれを伝えたと同時に中に入ったわ。あいつならこのダンジョンなんて目を瞑っても踏破できる……はずだったんだけどね。まさかこんな未発見の仕掛けがあって、しかもその先が完全に未探査区域だとは思わなかったわ。カイト君、悪いけど一度ギルドに戻って詳しい報告をお願いしていいかしら?」

「ええ、まぁ、それは構いませんが……」

 まいったな、そうなるとバウンドウルフの事も話さないわけにはいかないか。
 俺一人でバウンドウルフ四体を、非戦闘員のリーフィアと俺自身も無傷のままに殲滅したとか報告しづらいんだが……かといって、ダンジョンの調査報告となると下手な嘘もつけないしな。
 というか、リサ先生はなんで未探査区域ってことが分かったんだろう?

「ああ、隠しルートからの隠しボスの存在は他のダンジョンでも、いくつかの報告例があるの。エミリオ君達もここの普通のボスを倒して帰ってきているし、あなたはそれとほとんど間を置かずに戻ってきたわ。それなら、別の場所に転移された後エミリオ君たちの後でボス部屋に入ってボスを倒して出てくるにしては時間が早すぎると思ったのよ。それなら、別ルートの隠しボス部屋を攻略したって言われた方がすっきりするしね」

「ところでカイトよ。そちらの少女はどうしたのかね?」

「あ、ああ。えーっとこの子はリーフィアって言って……未探査区域で出会ってだな」

「拾われた」

「そう、拾った……って、人聞き悪いな!?せめて救助したとかそんな感じに言ってくれよ」

「そう、それ。そう言いたかった」

 かなり疑わしい。どうせいつもの冗談だろうな。
 どうも彼女は冗談を言った時の俺の反応を気に入ってるらしく、事あるごとに変なことを口走る。
 まぁそれが彼女の情操教育?になるのなら、突っ込みぐらい付き合ってあげたってかまわないんだが。

 俺は一応かなり大雑把にリサ先生に説明し……それでも「は?バウンドウルフ四体をソロで?しかも護衛対象ありで……冗談でしょ?」等と少し驚き半分疑い半分の視線を向けられたが……ロンド先生が戻ってくるのを待って冒険者ギルドへと戻るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...