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言葉のプレゼント
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「メール?」
「はい、メールは考えるなって言われたり、よく考えろって言われたり。もうどうすればいいのか」
「あー、なるほどねー。なんだか、分からなくはないなぁ」
「分かります?」
「うん、なんとなくね」
「春奈さんはメール書く時に何を気をつけてますか?」
「私はね、もらって嬉しいメールっていうのと、想いを伝えるってことを意識してるな」
「もらって嬉しいメール?」
「うん、メールはね、相手に対しての言葉のプレゼントなの。私からのメールが来ると、嬉しくなるような、そんな気持ちになってもらいたいの」
「それはいいですねぇ」
「うん、直接会って話す言葉も一緒。こうしてお話をしてくれて、黒川君に悩みがあれば、その悩みを半分にしたいし、嬉しいことがあったら、私に伝えて二倍にして欲しかったりね」
やはりちゃんと考えているんだ。
同じ業務内容ではないけれど、いつもスマートに仕事をしている様に見える。
やはり、言葉一つにも意識をしているんだ。
「あ、なんかごめんね、変なこと言っちゃったね」
「ううん、ありがとうございます。なんだか今まで、来たメールはとにかく返さなきゃって義務感みたいな感じで書いてしまってました。でも、言葉のプレゼントっていい言葉ですね」
「良かったら使ってみてね」
「明日から使います!」
「明日はお休みの土曜だよ。土曜があるのは月末よ」
「明後日から!」お酒もあってか、一言一言が余計に面白い。
「笑わないで下さい。僕は真剣ですよ」って言いながら、黒川君も笑っている。
「ごめんごめん、知ってるよ」
「後もう一つ、何でしたっけ?さっき春奈さんが言ってたの」
「え、私何言ったかな?」それは梅酒を飲み干しても出てこなかった。
「もう一杯飲みます?」
「うん、楽しいからあと一杯だけ。黒川君も飲むでしょ」
「僕も楽しいから、あと一杯」
「僕は二杯目もビールです」
「誇らしげに言っちゃってー」仕事でも見せないキリッとした表情が、可愛く見えた。
「かんぱーい」二回目の乾杯。乾杯の音が響いた時、ふと思い出した。
「想いを伝えるだ」
「それです。想いを伝えるです。教えて欲しいです」
「結局メールもね、自分の想いを伝える一つの手段でしかないのよ。話し言葉、書き言葉、電話やプレゼンに手紙。時代は変わっても、想いを相手に伝えるってことは変わらないのよね」
「想い、ですか」
「黒川君も相手にこうして欲しいとか、こう思ってるとか伝えるでしょ?」
「はい」
「その手段でしかないのよ。あとね、これだけは覚えてて。心がこもった言葉や話は必ず相手に伝わるの。自分が逃げたい時ほど、気持ちを強く持つのよ」
「春奈さん、ぼく、」
「どうしたの、泣きそうにならないで」
「なってないです。なってないですけど、今泣きそうです。正直この一ヶ月、怒られることしかしてなくて、正直何の役にもなってなくて、水谷部長と林さんが僕のことを給料泥棒だって言ってたのをたまたま聞いちゃって、辞め」
「簡単にそんな言葉言っちゃダメ。私の前でそんなこと言わないで」
「ごめんなさい」
「ううん、痛い程わかるよ。辛かったよね。でも、ここで逃げたら、何も黒川君変わらない。そのまま歳を取るだけ。そんな君は見たくない。年齢は苦労と共に重ねていくものよ。私も偉そうに言ってるけど、まだまだなの。一緒に頑張っていこ?」
黒川君を遠くからでも精一杯育ててあげたいと思う。
同時に、社長が私を一人の社会人として見てくれている厳しさの愛情を感じた。
人に話している言葉が自分に一番突き刺さる。
君が私を成長させてくれている。
キツイことを言ってごめんね。
だけど、君はこんなとこで負ける男じゃないでしょ?私はそう思うの。
「あの、ありがとうございます」
「え?」
「今、想いを伝えました」泣きそうな笑ってる顔は人生の青春をしている。青春はいつも心が決めている。
そう思う。
「なら私も一言。格好いい男になれよ。負けるな、黒川景」
「頑張る!」
「よし、よく言った。今日は私が奢ってあげよう」
「待って待って、結局さっきの日本料理屋さんも出してもらってて、いつもそんな」
「今日はこれからも頑張れ代だからね、特別だよ」
「ありがとうございます」一緒に居酒屋を出る恋人の距離感は少し恥ずかしく、それはお互いに言葉にしなくても伝わってくるものがあった。
「じゃあ、またね」
「はい、ご馳走様でした。ありがとうございました」夜風が少し冷たく、いい気持ちだ。
気持ちを切り替えた次の日も、翌週も翌々週もその答えは出ないまま無謀にも過ぎて行った。
「春奈さん、今日は営業に付き添ってもらっても良いかな?関東さんには許可を取ってあるから」
自分の仕事の段取りもあったが、別部署とはいえ上司なので、断る術はなかった。
怒肩の黒川君がポチポチとパソコンをしており、素敵なメールをかけていたらいいななんて思い、会社を後にした。
「どう?会社は。そろそろ慣れた?」
「そうですね、もう皆さんの顔と名前が一致してきました」
「それは良かった。何か質問あったら何でもいいよ。何でも答えるから」
「黒川君はどんな感じですか?」
「黒川?あぁ、ちょっとのろいかな。効率が悪いってゆうか、空回りしてるって言うか。もう少し見習ってほしんだけどね」
この人に聞いたことを後悔した。自分が言われている以上に嫌な気持ちになった。
その後はもう何も聞く気分になれなかった。
「え?他にはないの?休日は何をしていますか?とか好きなタイプはとか」
「そういう話はちょっと。同じ会社の人なので遠慮しときます」
苦笑いをすることが精一杯だった。
「はい、メールは考えるなって言われたり、よく考えろって言われたり。もうどうすればいいのか」
「あー、なるほどねー。なんだか、分からなくはないなぁ」
「分かります?」
「うん、なんとなくね」
「春奈さんはメール書く時に何を気をつけてますか?」
「私はね、もらって嬉しいメールっていうのと、想いを伝えるってことを意識してるな」
「もらって嬉しいメール?」
「うん、メールはね、相手に対しての言葉のプレゼントなの。私からのメールが来ると、嬉しくなるような、そんな気持ちになってもらいたいの」
「それはいいですねぇ」
「うん、直接会って話す言葉も一緒。こうしてお話をしてくれて、黒川君に悩みがあれば、その悩みを半分にしたいし、嬉しいことがあったら、私に伝えて二倍にして欲しかったりね」
やはりちゃんと考えているんだ。
同じ業務内容ではないけれど、いつもスマートに仕事をしている様に見える。
やはり、言葉一つにも意識をしているんだ。
「あ、なんかごめんね、変なこと言っちゃったね」
「ううん、ありがとうございます。なんだか今まで、来たメールはとにかく返さなきゃって義務感みたいな感じで書いてしまってました。でも、言葉のプレゼントっていい言葉ですね」
「良かったら使ってみてね」
「明日から使います!」
「明日はお休みの土曜だよ。土曜があるのは月末よ」
「明後日から!」お酒もあってか、一言一言が余計に面白い。
「笑わないで下さい。僕は真剣ですよ」って言いながら、黒川君も笑っている。
「ごめんごめん、知ってるよ」
「後もう一つ、何でしたっけ?さっき春奈さんが言ってたの」
「え、私何言ったかな?」それは梅酒を飲み干しても出てこなかった。
「もう一杯飲みます?」
「うん、楽しいからあと一杯だけ。黒川君も飲むでしょ」
「僕も楽しいから、あと一杯」
「僕は二杯目もビールです」
「誇らしげに言っちゃってー」仕事でも見せないキリッとした表情が、可愛く見えた。
「かんぱーい」二回目の乾杯。乾杯の音が響いた時、ふと思い出した。
「想いを伝えるだ」
「それです。想いを伝えるです。教えて欲しいです」
「結局メールもね、自分の想いを伝える一つの手段でしかないのよ。話し言葉、書き言葉、電話やプレゼンに手紙。時代は変わっても、想いを相手に伝えるってことは変わらないのよね」
「想い、ですか」
「黒川君も相手にこうして欲しいとか、こう思ってるとか伝えるでしょ?」
「はい」
「その手段でしかないのよ。あとね、これだけは覚えてて。心がこもった言葉や話は必ず相手に伝わるの。自分が逃げたい時ほど、気持ちを強く持つのよ」
「春奈さん、ぼく、」
「どうしたの、泣きそうにならないで」
「なってないです。なってないですけど、今泣きそうです。正直この一ヶ月、怒られることしかしてなくて、正直何の役にもなってなくて、水谷部長と林さんが僕のことを給料泥棒だって言ってたのをたまたま聞いちゃって、辞め」
「簡単にそんな言葉言っちゃダメ。私の前でそんなこと言わないで」
「ごめんなさい」
「ううん、痛い程わかるよ。辛かったよね。でも、ここで逃げたら、何も黒川君変わらない。そのまま歳を取るだけ。そんな君は見たくない。年齢は苦労と共に重ねていくものよ。私も偉そうに言ってるけど、まだまだなの。一緒に頑張っていこ?」
黒川君を遠くからでも精一杯育ててあげたいと思う。
同時に、社長が私を一人の社会人として見てくれている厳しさの愛情を感じた。
人に話している言葉が自分に一番突き刺さる。
君が私を成長させてくれている。
キツイことを言ってごめんね。
だけど、君はこんなとこで負ける男じゃないでしょ?私はそう思うの。
「あの、ありがとうございます」
「え?」
「今、想いを伝えました」泣きそうな笑ってる顔は人生の青春をしている。青春はいつも心が決めている。
そう思う。
「なら私も一言。格好いい男になれよ。負けるな、黒川景」
「頑張る!」
「よし、よく言った。今日は私が奢ってあげよう」
「待って待って、結局さっきの日本料理屋さんも出してもらってて、いつもそんな」
「今日はこれからも頑張れ代だからね、特別だよ」
「ありがとうございます」一緒に居酒屋を出る恋人の距離感は少し恥ずかしく、それはお互いに言葉にしなくても伝わってくるものがあった。
「じゃあ、またね」
「はい、ご馳走様でした。ありがとうございました」夜風が少し冷たく、いい気持ちだ。
気持ちを切り替えた次の日も、翌週も翌々週もその答えは出ないまま無謀にも過ぎて行った。
「春奈さん、今日は営業に付き添ってもらっても良いかな?関東さんには許可を取ってあるから」
自分の仕事の段取りもあったが、別部署とはいえ上司なので、断る術はなかった。
怒肩の黒川君がポチポチとパソコンをしており、素敵なメールをかけていたらいいななんて思い、会社を後にした。
「どう?会社は。そろそろ慣れた?」
「そうですね、もう皆さんの顔と名前が一致してきました」
「それは良かった。何か質問あったら何でもいいよ。何でも答えるから」
「黒川君はどんな感じですか?」
「黒川?あぁ、ちょっとのろいかな。効率が悪いってゆうか、空回りしてるって言うか。もう少し見習ってほしんだけどね」
この人に聞いたことを後悔した。自分が言われている以上に嫌な気持ちになった。
その後はもう何も聞く気分になれなかった。
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