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レコーディングがひと段落ついたのは、予想通りてっぺんまわって1時30分。俺は腹減ってしょうがなかったから、寿司の出前とって食いながら眺めてた。
録ってる間の俺からの指示出しは、宵闇を通じて。俺が止めたいところでヤツもストップを入れるし、朱雨に聞こえないところでアイデア出ししたのも、ちゃんとすぐに飲み込んで上手く伝えてくれる
そこんとこの感性は、やっぱり似てるのかもしれない。組んで仕事するには、やり易い相手だ。
収録済の礼華のトラックも聴かせてもらったけど、問題なくディレクションしてある。朱雨と同じで「この時間制限の中では」って注釈付きだけど。どこを直したいって言われたらいくらでも言えるけど、これが今回の精一杯だってのはわかる。
ここまででも、今までベルノワールを「見た目だけのファッションバンド」ってバカにしてた層を驚かせるには充分な出来だ。ここから、ベルノワールは本気のバンドになるって宣言を叩きつけてやれる。
レコーディングが終わるまでは時間が取れねぇけど、そこんとこのヴィジョンを共有するのは必須だから、ミーティングで宵闇から檄を飛ばすように仕向けよう。ま、こいつのことだ。それくらいはもう考えてるに違いない。
「ディスコードってどんなバンドなんだ?」
助手席の宵闇が、俺に尋ねる。
うちに宵闇リクエストの手羽先が置いてあるし、この時間はタクシーで帰るらしいから、ついでに乗せて帰って来た。近所だし。
「様式美メタルプラスプログレ」
俺は運転しながら、カーステのタッチパネルを操作する。
「何か固そうだな。メタルのジャンルはよく知らないけど」
「あー、そうだな。結構かっちりしてる感じだな」
ディスコードの最新アルバムを履歴から呼び出して、再生する。荘厳な鐘の音から始まる、ストーリー仕立ての作品だ。壮大なファンタジー映画のサントラみたいな感じ、って言えばわかりやすいか。
「ふうん…かなり難しいな」
「ああ、どのパートもめちゃくちゃ難しい」
「これ叩いてるのも夕か?」
「そうだよ。俺の限界ギリギリ」
宵闇はふっと黙る。ちゃんと聴き込んでいるんだろう。宵闇の理解の範囲を超えてるとは思うけど、ディスコードみたいな要素がベルノワールにあっても良い。
「……まだ1曲目か?」
「1曲目。これ、9分あるからな」
「長いな」
「これはまだ普通。最長の曲は17分」
俺がサポートに入る前のアルバムの曲だから音源は俺のプレイじゃないんだけど、たまにライブのセットリストに組み込まれるドラマー殺しの一曲だ。セットリストにそのタイトルを見ると泣こうかなって思う、流石に。
「17分!?」
「このアルバムで一番長いのは13分な」
案の定、宵闇はビックリした声をあげる。
「Xのアートオブライフなんか30分くらいあるじゃねぇか」
「聴いたことないな」
「えっ!? マジで!?」
今度は俺がビックリする。ビックリするわ、そりゃ。Xはヴィジュアル系の語源になったバンドだぞ。
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