52 / 233
17-1
しおりを挟む
◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇
ライブは予定通りの時刻で終了した。
出来は上々、お客さんの反応も最高。今回のツアーも楽しく終わらせてもらえた。
自分のプレイも、かなり納得出来るレベルが保てたから満足だ。
楽屋でそのまま軽く呑める人はビール、俺は烏龍茶とデリバリーの寿司なんかで中打ち上げをして、LEDを出たのは22時30分過ぎ。宵闇からLINEは入ってないから、まだレコーディングやってるはずだ。ここからレコーディングスタジオまでは、まあこの時間なら30分で行くか。
車を出して直接スタジオに向かう。ライブやった後だから、そりゃ俺だって疲れてるけど、立ち会うだけだから別に体力使わないし。少し眠いけどな。この3日は睡眠時間削っちまってるから、しょうがない。
期限通りにレコーディングを終わらせるのは、メジャーレーベルと契約してる以上、絶対だ。堂々と期限を引き延ばせるほどの大物じゃない。それに協力するのはメンバーとして当然だ。今の切羽詰まった状況がわかってて知らん顔は出来ない。
スタジオに到着して、6スタのドアを開けると、綺悧のハイトーンシャウトが耳に入った。おお、よく伸びてんじゃん。あと2拍伸びりゃ言うことなしだな。
振り返った宵闇と目が合う。ヤツは無表情のまま顎で俺を隣に呼びつける。それでこそ「宵闇」だ。隣の椅子に腰掛ける。
「よし綺悧、OKだ」
静かな宵闇の声。綺悧は宵闇に軽く頭を下げ、俺がいることに気付くと小さく手を振る。ほんと可愛いヤツだな。しっぽ振ってんのまで見える気がするわ。綺悧がどんな売り方してんのかまだよくわからんけど、このキャラ生かしたいよな。
インタビューとかチェックしとこう。
綺悧は深呼吸をして、息を整えてる。
「宵闇、どんな感じだ?」
「好調だよ。あと、こことここで終わる」
宵闇が手元の書き込みでいっぱいの歌詞を指さす。Cメロと大サビな。Wheelの中でもちょっと難しめの、音程が取りにくい部分だ。でも、綺悧ならそこは大丈夫だろう。どっちかっていうと、大サビラストのデスボイスでのシャウトがどこまで伸ばせるかが勝負になって来る感じだ。
何せ今のとこ喉から声出してるから、デスボイスが喉を痛める可能性が高いのと、上っ滑りになりがちなのが気がかりだ。俺はあんまり歌の方は得意じゃないから、テクニック的にどうこう言えないけど、腹からこう…重い地獄の叫びみたいなのがここには欲しいんだよな。
「次どっちからにするんだ」
「Cメロ。大サビやったら、その後声出なくなるからな」
「やっぱりか」
「いつもそうだよ」
いつもそうなら、早いうちに対策立ててやって欲しかったよな。本気でボイトレやらせよう。綺悧はそれで格段によくなるはずだ。
「綺悧、次行けるか?」
宵闇の問いかけに綺悧は頷く。まったくへこたれてない。目が輝いてるぜ。一昨日の死んだ魚の目とは全く違う。いいじゃないか。このまま、今晩中に終われるな。
宵闇はマイクの入力を下げ、小声で俺に聞く。
「このままやらせていいか? 休ませた方がいいか?」
「今どれくらい続けて歌ってんだ?」
「40分くらい」
「ちょっとキツいか。…でも」
ブースの中で伸びをしてる綺悧に疲れは見られない。機嫌も良さそうだ。それなら、テンションが切れないうちに次を録り始めるのも手だ。さっきのハイトーンも綺麗だったし。少し後で休憩を入れても構わないだろう。
ライブは予定通りの時刻で終了した。
出来は上々、お客さんの反応も最高。今回のツアーも楽しく終わらせてもらえた。
自分のプレイも、かなり納得出来るレベルが保てたから満足だ。
楽屋でそのまま軽く呑める人はビール、俺は烏龍茶とデリバリーの寿司なんかで中打ち上げをして、LEDを出たのは22時30分過ぎ。宵闇からLINEは入ってないから、まだレコーディングやってるはずだ。ここからレコーディングスタジオまでは、まあこの時間なら30分で行くか。
車を出して直接スタジオに向かう。ライブやった後だから、そりゃ俺だって疲れてるけど、立ち会うだけだから別に体力使わないし。少し眠いけどな。この3日は睡眠時間削っちまってるから、しょうがない。
期限通りにレコーディングを終わらせるのは、メジャーレーベルと契約してる以上、絶対だ。堂々と期限を引き延ばせるほどの大物じゃない。それに協力するのはメンバーとして当然だ。今の切羽詰まった状況がわかってて知らん顔は出来ない。
スタジオに到着して、6スタのドアを開けると、綺悧のハイトーンシャウトが耳に入った。おお、よく伸びてんじゃん。あと2拍伸びりゃ言うことなしだな。
振り返った宵闇と目が合う。ヤツは無表情のまま顎で俺を隣に呼びつける。それでこそ「宵闇」だ。隣の椅子に腰掛ける。
「よし綺悧、OKだ」
静かな宵闇の声。綺悧は宵闇に軽く頭を下げ、俺がいることに気付くと小さく手を振る。ほんと可愛いヤツだな。しっぽ振ってんのまで見える気がするわ。綺悧がどんな売り方してんのかまだよくわからんけど、このキャラ生かしたいよな。
インタビューとかチェックしとこう。
綺悧は深呼吸をして、息を整えてる。
「宵闇、どんな感じだ?」
「好調だよ。あと、こことここで終わる」
宵闇が手元の書き込みでいっぱいの歌詞を指さす。Cメロと大サビな。Wheelの中でもちょっと難しめの、音程が取りにくい部分だ。でも、綺悧ならそこは大丈夫だろう。どっちかっていうと、大サビラストのデスボイスでのシャウトがどこまで伸ばせるかが勝負になって来る感じだ。
何せ今のとこ喉から声出してるから、デスボイスが喉を痛める可能性が高いのと、上っ滑りになりがちなのが気がかりだ。俺はあんまり歌の方は得意じゃないから、テクニック的にどうこう言えないけど、腹からこう…重い地獄の叫びみたいなのがここには欲しいんだよな。
「次どっちからにするんだ」
「Cメロ。大サビやったら、その後声出なくなるからな」
「やっぱりか」
「いつもそうだよ」
いつもそうなら、早いうちに対策立ててやって欲しかったよな。本気でボイトレやらせよう。綺悧はそれで格段によくなるはずだ。
「綺悧、次行けるか?」
宵闇の問いかけに綺悧は頷く。まったくへこたれてない。目が輝いてるぜ。一昨日の死んだ魚の目とは全く違う。いいじゃないか。このまま、今晩中に終われるな。
宵闇はマイクの入力を下げ、小声で俺に聞く。
「このままやらせていいか? 休ませた方がいいか?」
「今どれくらい続けて歌ってんだ?」
「40分くらい」
「ちょっとキツいか。…でも」
ブースの中で伸びをしてる綺悧に疲れは見られない。機嫌も良さそうだ。それなら、テンションが切れないうちに次を録り始めるのも手だ。さっきのハイトーンも綺麗だったし。少し後で休憩を入れても構わないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
神様の住まう街
あさの紅茶
キャラ文芸
花屋で働く望月葵《もちづきあおい》。
彼氏との久しぶりのデートでケンカをして、山奥に置き去りにされてしまった。
真っ暗で行き場をなくした葵の前に、神社が現れ……
葵と神様の、ちょっと不思議で優しい出会いのお話です。ゆっくりと時間をかけて、いろんな神様に出会っていきます。そしてついに、葵の他にも神様が見える人と出会い――
※日本神話の神様と似たようなお名前が出てきますが、まったく関係ありません。お名前お借りしたりもじったりしております。神様ありがとうございます。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる