63 / 233
19-7
しおりを挟むツイッター始めてから、早い段階で何百とフォロワーがついた。他のメンバーとバンド公式のアカウントから誘導されて来たのはわかってるんだけど、やっぱ驚いた。
何回かツイートしてるけど、「今から練習」とか「今日はディスコードのサポート」とかで、そんな面白いとは自分でも思えない。言いつけられてた自撮りもほぼあげてないし。
「俺は面白いけど?」
「そんなもんか?」
「昨日のツーショットとか、リプ多かったな」
「あれな」
宵闇とのツーショットは、やっぱり反応多かった。宵闇の方にアップされてるはずの、同じ写真のツイートは見てないんだけど。
「そういえば」
宵闇は自分のバッグをごそごそと漁り、スマホを出して来る。
「ほら」
ロックをはずして、ホーム画面を俺に向けて来た。見せたそうだし、視界に入って来たから見てみる。
「はあ? 何で」
ホーム画面の壁紙は、そのツーショットだ。趣味悪いぞお前。
「せっかく撮ったから」
何の悪気もない笑顔。よく見ると、俺が持ってるオリジナルの画像と何か違うぞ。…あ、宵闇がちょっと切れてる。俺メインで拡大してあるじゃねぇか。
リュウトくんの読み通りなのか? そういう、恋愛的な感じで俺のことが好きなのか?じゃなきゃ、ちょっともう説明つかなくなって来てる。
客観的に見て、このシチュエーションもそうじゃないか。個室のいい感じの夜景が見える…夜景そのものがないけど…居酒屋で二人きりで飯って、完全にこれデートコースじゃねぇか。
いやいや、付き合ってるつもりねぇし。
「…あー、そう。そうか」
かと言って、わざわざ俺に惚れるんじゃねぇって言うのもな。好きだって言われてもないのに、俺からそれ言うのも自意識過剰っぽいし。人のそういう気持ちに否定的なこと言うのも嫌だし。俺が受け入れるかどうかと、人が俺を好きだってのは、別の話だからな。
「他のメンバーに見られるなよ、それ。俺だけ贔屓してるみたいになんのは良くねぇ」
「贔屓っていうか…」
ヤツはスマホをテーブルに置いて、ちょっと口ごもる。
「…夕、俺」
少しの間の後に、真面目な声。もしかしてこれは。ちょっと待て。待て待て。まだ気持ちの準備が出来てない。早い。
そこに、ノックの音がまた響く。ナイスタイミング!
「お待たせ致しました」
店員が運んで来た料理をテーブルに並べる。刺身と、里芋サラダ。よし、まだ注文した料理揃わないってことは、また来てくれるな。頼んだぞ店員。
店員が扉を閉めてから、宵闇の顔をちらっと見る。何とも言えない、複雑な表情だ。これは不可抗力だ、諦めろ。
飲み物来てから、喋ってばっかでお互い飲んでなかったな。生中のジョッキを持ち上げ、宵闇の方へ突き出す。
「乾杯しようぜ。ほら」
「ああ、うん」
宵闇もグレープフルーツジュースのグラスを手に取る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる