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しおりを挟む「目も大きいし、白目が綺麗。めちゃめちゃメイク映えするなぁ」
「そーすか」
確かに目は大きい方だと思う。それは知ってた。白目が綺麗とかそうじゃないとかあんのか?
「鼻も高いし。そんなにシェーディング入れなくてもちゃんと目鼻立ちくっきりするね」
シェーディングって何じゃそれ。まあ、知らなくても生きていけるからいいか。
目の周りは、黒から青みがかった紫へのグラデーションになってる。元々大きい目が余計に大きく見えるな。怖くねーかこれ。大丈夫か。
「じゃ、軽く口開けて」
言われた通りに、少しだけ口を開ける。何色もずらりと並んだパレットからメイクさんが選んだのは、アイシャドウと似た色味の紫。
宵闇にもらった薔薇の色に似てるな。そんなことを思い出す。
唇に口紅を塗られて、これで今度こそ完成か? 鏡を覗き込んだ時、メイク室に宵闇が入って来た。多分、カメラマンと打ち合わせでもしてたんだろう。
宵闇は全体的に髪を立てて、前髪はしっかり顔を隠してる。真ん中で分けた左右の前髪同士の隙間は5cmないんじゃないか。目は殆ど見えない。その隙間から見える唯一目立つパーツ、唇は真っ黒。そのインパクトが如何にも宵闇様って雰囲気を見事に演出してる。
衣装もこいつは黒一色だ。他のメンバーは少しずつ他の色を差し色にしたり、鎖や鋲をあしらったりしてるけど、宵闇だけはシルバーすら使ってない。
スタイリッシュな死神って感じだ。かなりカッコいい。
いいじゃん。
「あ、宵闇くん、夕くんだけど」
「はい」
「顔に何か描いたりとか、そういうのは良かった?」
顔に何か描くってどういうことだ。
「額に肉とか?」
俺が聞くと、メイクさんは吹き出す。宵闇はしれっとしてるけど、肩が僅かに震えてる。絶対めちゃめちゃ笑いをこらえてる。
「夕くんいくつなの! そうじゃなくて、こう、十字架とか涙とかそういうの。ほら、綺悧くんみたいな」
メイクさんが指した先では、顔が仕上がった綺悧が爪を塗ってもらってる。
そのメイクを見ると、確かに目の下に涙みたいな模様が描き入れられている。
「あー、なるほど。見たことあるわ」
「でしょ? もう、面白いなぁ」
「いやいや、普通に生きてたら、顔に何か描くって肉ぐらいっすよ」
寝てるヤツの顔にラクガキするっつったら、肉が定番じゃん。
「確かにね? で、宵闇くん、どうする?」
宵闇は俺の前に来て、俺の顔をまじまじと見る。近付いたから、前髪の下に目が透けて見えた。こんなに隠れてんのに、めちゃめちゃ真っ黒に塗ってあんな。
ちょうど目が合って、至近距離で見詰め合っちまう。この男前め。
「何も描かなくていいです。これでカラコン入れて完了で」
「OK。ネイルは?」
「紫で」
宵闇はほんの少しだけ唇を歪めて、俺にだけわかる程度にこっそり微笑むと、他のメンバーのチェックに行ってしまう。
「じゃあ…目自体が大きいから、16㎜でバランスいいぐらいかな」
箱の中にたくさんの瓶や箱が入ってる中から、メイクさんはいくつかピックアップして俺の前に並べる。
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