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しおりを挟む「夕、そこに寝ろ。上半身だけな」
「こうか?」
上半身をソファの上によこたえる。まあ、体の向きは正面で合ってるだろう。
「そうだ。目を閉じろ。監督、ここからスタートで」
宵闇の声だけが聞こえる。
「スタート!」
1秒、2秒、3秒…宵闇の指示はまだ聞こえない。5秒、6秒。
「3カウントでゆっくり目を開けろ」
おっ、わかりやすい。1、2、3。
「そのまま止まる」
正面には、腕を組んで俺を見ている宵闇。
「かっと目を見開け」
全力で目を見開く。
「そのまま。……瞬き3回。一気に起き上がれ」
がばっと起き上がる。ちょっと髪が乱れたんじゃないか。でも、これも宵闇の計算だろう。
「右向け! …はい、左! ストップ」
ここはどこだ、って感じか。
「睨みながらカメラを見ろ」
お、睨んでいいのか。力いっぱい睨みつけながら、カメラの方へ向く。
「少しずつ顎を上げて。カメラを見たままだ。よし。そのまま停止」
禁断の顎上げ来ましたよ。これなら得意だ。
「一回深呼吸。後ろを振り向く。後ろを見回して…そう。はい、今呼ばれた。眉間に皺を寄せてくるっとこっちに」
勢いよく振り向く。目が合った宵闇は頷く。これでいいんだな。
「悔しそうな顔をしろ。…そうだ、その顔だ。歯ぎしりして」
ぎりっと奥歯が音を立てる。
「こっちを見たまま、右の拳で背もたれを一発殴れ」
面白いな。俺は何となく不安なイメージで動いたけど、宵闇の指示は怒りだ。俺が怒ってる印象、そんなに強いのか。
「拳をゆっくりおろして、ソファの右隅をゆっくり見ろ。そう、そこから俯く。大きく息を吸って、吐いて」
これラジオ体操じゃねぇかよ。やっぱり運動会だな。
「ゆっくり、顔だけこっちを見ろ。よし。……目線を先に右隅にやりながら、もう一回右向きに俯け。1、2、3…最初のボーズだ。顔は正面で上半身、倒れ込め。目は開けたまま、瞬きはするな」
言われた通りに倒れ込み、瞬きを我慢する。
「1、2、3、4、5。カット」
終わった! 目が乾いた。急いで何回も瞬きをして起き上がる。
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