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しおりを挟む「うーん…たまたまご縁があったから、どんなもんなんかなと…」
嘘じゃない。嘘じゃないぞ。どんなヤツがどの面下げてやってんのか見に来たんだけど。嘘では、ない。
「今までヴィジュアル系は?」
「一応、知識としては。でも、ちゃんと聴いたり見たりしたことはなかったです」
「じゃあ、加入してみて結構カルチャーショックみたいなものはあったんじゃない?」
メンバーの顔を見渡す。偏見があった分カルチャーショックはあったし、でも、こいつらと出会ってそれが一変したことも確かだ。
「ありましたね。俺は全然化粧したこともなかったし、綺麗なカッコしたこともなかったし」
爪に残ってる紫のマニキュアを見ながら答える。
「俺に似合うとか思ったこともなかったし」
「でもすごく似合ってるよね」
牧村さんがにっこり笑って言ってくれる。宵闇の顔を見ると、真面目な表情でこのやり取りを見守ってる。
「ありがとうございます。様になってればいいんですけど」
「全然、遜色ないよ。とりあえず、そういうヴィジュアル面での話になるけど、やってみてどう?」
「…そう…ですね…。ちょうど、アー写とMVの撮影が終わったばっかなんですけど、案外面白いですね」
「面白い?」
「音楽だけじゃなくて、ヴィジュアルも含めていろんな方向から表現するっていうのが、新鮮だし面白い」
これは、本音だ。メタルだって見た目も含めて主張するけど、ヴィジュアル系におけるそのウェイトの高さは、ある意味異常でもあるし、特徴でもある。
「なるほどね」
「夕のポテンシャルは凄いですよ」
宵闇が、静かに言う。
「プレイはもちろんなんですけど、MVでも何でも全力で取り組んでくれるし、力を発揮してくれる」
お、褒めてくれるのか。やるからには中途半端じゃなく全力、が俺のモットーだからな。
「俺の意図するところも、すぐに理解しますし」
「そうなんだ。これからが楽しみだね」
「夕が加入したことで、ベルノワールは数段進歩しましたよ」
綺悧たちも、頷く。ああ、俺、ここのメンバーなんだな。受け入れられてる。改めてそれが実感出来る。
「いい化学反応が起きてますよ。綺悧も礼華も朱雨も、触発されて」
「ヴィジュアル系の経験がない夕さんが、限界以上に力を入れてるのを見たら、俺たちも負けてられないですから」
綺悧は笑顔でそう言う。
「プレイも凄いですからね。生半可なプレイじゃ吹っ飛ばされますよ。殴り合いです」
朱雨もにっと笑う。
「俺も…やる気にさせられてます」
左手の指先を見ながら、礼華はぼそりと言う。撮影の間はずしてたバンドエイドが、また貼られてる。
そうやって、お前らが食らいついてくるから、俺は本気が出せるんだよ。
すげぇな。ちゃんとバンドだな、俺ら。柄にもなく、ちょっと感動する。一緒にバンドやる意味って、こういうとこにもあんだよ。ただなあなあでやるだけなら、メジャーの土俵でやる意味なんかねぇ。
「音楽面でもいい影響が出てるんだね」
牧村さんは納得したように頷く。
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