Hate or Fate?

たきかわ由里

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「あれ、皆は知らなかったんだね?」
「今初めて言いましたからね」
 宵闇は冷めてしまったコーヒーを口にして、もう一度皆の顔を見て頷く。
「まあ、もうこいつらもやる気ですよ」
 皆の驚いた表情は、もう完全に新しい生贄を見つけた肉食獣だ。ワクワクして、興奮してんのが溢れ出してる。
 いい顔だ。
「それは楽しみだね。今までの楽曲を新しい形で体感出来るわけだ」
「これからのライブも、そうなっていきますから。楽しんでもらえますよ」
「これはライブも見逃せないね」
 牧村さんは持っているメモに何かを書きつけてめくる。
「それぞれの今作のプレイでの聴きどころを教えてもらえるかな。じゃあ…綺悧くんから」
「俺は…そうですね、Wheelの後半。前半の淡々としたところから、中盤過ぎてエンディングに向かってどんどんヒートアップしていく感じが、自分で気に入ってます」
「ああ、あれは聴いてて心配になったよ」
 牧村さんは笑って頷く。
「どこまで行っちゃうんだろうって」
「俺も帰って来られるか心配でしたよ」
 綺悧も明るく笑う。ほんと、この子犬みたいなヤツがあの死にそうなデスボイス出すんだからな。
「夕くんは?」
「俺ですか。俺は…Hate or Fateのイントロですかね」
「ああ、一発目ドラムで入る」
「はい。俺、参上! みたいな感じで」
「確かにね。シンセが厳かに流れてるところに突然殴り込んでくる感じは夕くんっぽいかもしれない」
「俺、そんな暴れん坊ですかね?」
 ま、暴れん坊だけどな。調和を上手い具合にぶっ壊すのは大好きだ。
「暴れん坊だよ。やんちゃ坊主。ガキ大将」
 朱雨が笑いながら絡んで来る。
「うっせ、お調子もんが」
 すっかり軽口叩ける仲になれたな。軽口叩けりゃ、意見も言えるってもんだ。
「じゃあ、そのお調子もんの朱雨くんは」
「俺ですか。俺は全部苦戦したんだけど、Wheelのソロは気に入ってますよ。何つーか、ループしてる感じが異様で」
「ああ、あそこ。ずっとリフをループで重ねながら、ズレてくのがいい意味で気持ち悪くていいね」
「音程狂ってんのか? みたいな感じが出せたのが、面白かったですね」
 それは不協和音ってヤツだ、朱雨。
 でも、あのソロはよく作ったと思うよ。隅から隅まで引き出し開けりゃ、何か出て来るもんだよな。
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