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残るは俺と宵闇だ。俺、先に行こうかな。礼華が終わる頃合に宵闇の顔を見ると、顎で「行け」と指示される。
「お願いしまーす!」
終わった礼華と入れ替わりで、パーテーションの前に立つ。
「お願いします。何か指定ありますか?」
「俺、こういうの初めてなんでお任せします」
「じゃあ、スタンダードに腰から上で撮りますね」
「はい!」
俺は返事をして、とりあえず胸の高さでピース。ダセェ。ダセェけど、ポーズのストックはない。
ただ、いい笑顔だけは心がける。思いっきり、明るい笑顔。アーティスト写真のキメ顔でも、映像のキレてイカれてる笑いでもなく、ただの俺の笑顔。俺に出来る事っつったらこれくらいだ。チェキくらいでしか手に入らないものなら、スペシャルなプレゼントになるだろ。俺なんかにそんなファンがつくか? って疑問は捨てる。一人でもそんな人がいるなら、少しでも応える。こいつらはそうやって来たんだ。俺もそうするさ。
ガッツポーズしたり、腰に手を当てたり、試行錯誤しながら、それぞれ違う5枚を撮り終わる。
「これ、振らないで下さいね。振ると写真がボヤけちゃいますから」
カメラの人は、親切にそう教えてくれる。受け取って、大事にテーブルに持って行く。これ、プレゼントなんだからさ、丁重に扱わなきゃな。
書き終わって暇を持て余してた綺悧が覗きに来る。
「あはは、夕さんポーズかたい!」
「そうかぁ?」
それを聞いて、朱雨も覗き込む。
「夕、ダセェ!」
「うっせぇ! 精一杯だわ!」
まったくもう、もうちょっと歯に衣着せやがれ! かたいのもダセェのも知ってるわ。
「でも、いい笑顔だね。これもらったら嬉しいだろうなぁ」
綺悧が言うと、朱雨も頷く。
「そうか? そんなら良かった」
俺はちょっと安心する。自分ではやっぱ、最終的にこれでいいのか、のジャッジが出来ねぇ。
ポスカいろいろあるな。どれ使おうか…。ふと紫が目に入る。これにするか、宵闇が俺に紫ゴリ推しして来るし。多分、俺っぽいんだろ。
紫を手に取って、さて、と考える。昨夜何とか考えたサイン…間違うといけないから、一回練習しよう。見回すとメモ用紙があった。そこに、サインを書いてみる。「Yu」「Ds」「BelleNoir」「20191023」これだけ書いてありゃいいだろう。夕のアルファベット表記はYouかyuhかyuwかって迷ったんだけど、Yuが一番シンプルで夕に近い気がする。
「なあ、これサインに見えるか?」
手が空いた礼華も巻き込んでサインを見せ、感想を求める。
「見えるんじゃね?」
「さっぱりしてるとこが夕さんらしいっていうか」
「…大丈夫」
「サンキュ。これで行くわ」
「お願いしまーす!」
終わった礼華と入れ替わりで、パーテーションの前に立つ。
「お願いします。何か指定ありますか?」
「俺、こういうの初めてなんでお任せします」
「じゃあ、スタンダードに腰から上で撮りますね」
「はい!」
俺は返事をして、とりあえず胸の高さでピース。ダセェ。ダセェけど、ポーズのストックはない。
ただ、いい笑顔だけは心がける。思いっきり、明るい笑顔。アーティスト写真のキメ顔でも、映像のキレてイカれてる笑いでもなく、ただの俺の笑顔。俺に出来る事っつったらこれくらいだ。チェキくらいでしか手に入らないものなら、スペシャルなプレゼントになるだろ。俺なんかにそんなファンがつくか? って疑問は捨てる。一人でもそんな人がいるなら、少しでも応える。こいつらはそうやって来たんだ。俺もそうするさ。
ガッツポーズしたり、腰に手を当てたり、試行錯誤しながら、それぞれ違う5枚を撮り終わる。
「これ、振らないで下さいね。振ると写真がボヤけちゃいますから」
カメラの人は、親切にそう教えてくれる。受け取って、大事にテーブルに持って行く。これ、プレゼントなんだからさ、丁重に扱わなきゃな。
書き終わって暇を持て余してた綺悧が覗きに来る。
「あはは、夕さんポーズかたい!」
「そうかぁ?」
それを聞いて、朱雨も覗き込む。
「夕、ダセェ!」
「うっせぇ! 精一杯だわ!」
まったくもう、もうちょっと歯に衣着せやがれ! かたいのもダセェのも知ってるわ。
「でも、いい笑顔だね。これもらったら嬉しいだろうなぁ」
綺悧が言うと、朱雨も頷く。
「そうか? そんなら良かった」
俺はちょっと安心する。自分ではやっぱ、最終的にこれでいいのか、のジャッジが出来ねぇ。
ポスカいろいろあるな。どれ使おうか…。ふと紫が目に入る。これにするか、宵闇が俺に紫ゴリ推しして来るし。多分、俺っぽいんだろ。
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「なあ、これサインに見えるか?」
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「サンキュ。これで行くわ」
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