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召喚失敗?
しおりを挟むこの建物の欠陥は、どこもかしこも同じようなデザインにしたことだな。
一人、廊下を歩きながらそんなことを考える。
何度も同じところをぐるぐると回っている気がしてきた。
迷子になって数十分。
誰ともすれ違うことなくここまで来たが、本当にこちらであっているのだろうか。
自分の方向感覚がおかしくなったのかと思いだしたところで、やっと人の気配を感じられた。
騒がしいが、何かあったのだろうか。
「こんなはずではーー!」
「だが、結果的にこうなっているではないか!!」
「落ち着いてくだされ!」
やっと広間まで戻って来られたと思えば、宰相のメルデと祭司長とで口論が起こっていた。
いつもは冷静なあの宰相がここまで怒るとは、相当なことがあったのかもしれない。
「あ、ノッテ。やっと帰って来た」
「ルーチェ兄さん。この騒ぎは?」
俺を見つけ近づいて来た兄に、事の詳細を聞いてみる。
「あー。実はね、、、」
「ーー勇者と言語が通じないなど、育成以前の問題でしょう!!」
広間に響き渡るほどの宰相の怒声が耳に入り、皆の視線がそちらへと向かう。普段は冷めた目で淡々と仕事をこなすあの宰相殿が…。
「……まぁ、そういうことなんだよねー」
気の抜けたような声が静まり返った室内に響く。
おかげで周りの者たちの緊張も幾分か和らいだようで、少し経てばすぐ対処の方法について話し合っていた。
「そうでしたか。で、どうなんですか。その勇者」
だが、正直意思疎通なんてジェスチャーやイラストでも使えばなんとかなるだろう。それより俺としては勇者の顔や能力の方が気になった。
「え、う~ん。髪と目の色が真っ黒だったのは気になったかな?あ、僕より魔力の量が多いのは非常に興味深かったね」
「………見ても?」
「ん~、見るだけならいいんじゃないかな」
「まだ奥の部屋にいるのですか?」
「うん、陣の上から動いてないと思うよ。でも、油断はしちゃだめだからね」
「はい。ご忠告ありがとうございます。では」
いい情報が手に入れられ気分が上がる。
それを顔に出すなんてこの場で出来るはずもなく、表情筋を引き締めながら奥の儀式の間へと向かっていく。
何か違和感の手掛かりになればいいけれど。
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