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10、東京
リネンの海へ
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貴広は先に立ち上がった。
「おいで」と言って手を差し伸べると、良平は濡れた指をギュッと絡めてきた。貴広はその細い指を引き、ベッドへ引き上げた。
濡れた頬をバスタオルで拭ってやる。されるがままに良平は顎を上げた。
部屋の中はかすかな間接照明だけ。窓の外のビルの灯りが、良平の濡れた睫毛にまたたく。
「ごめん、良平。俺、お前を悲しませる積もりじゃなくて、ただ俺は……」
「うん……」
ひくと咽を鳴らして、良平はかすかに笑った。白い歯が窓の外のビルの灯りにきらめいた。
「もうあんなこと言うなよ」
「言わない。もう言わないよ」
「許してやる。だからもうひとつ」
「ん? 何? 良平」
良平の望むことなら何だって。貴広は良平の瞳の奥をのぞき込む。
良平は熱い裸身を震わせた。
「して……」
全身の血を沸騰させる呪文の言葉。
「ん……っ」
勢いよく唇を奪われ、良平が溜まらず声を漏らす。
「んん……ン……んっ」
良平は腕を貴広の首に巻きつかせ、白いリネンの海に沈んでいく。
唇が離れると、良平は甘えと敵意の混ざったようなキラキラした瞳で貴広を見上げた。
初めて会った頃の良平は、これと似た目をしていた。貴広を試すような、どこか縋るような悲しい目の色。
今は少し違う。
「良平……愛してる」
ほら、こう言うと、こんなに嬉しそうに潤ませる。好きな男の腕で、幸せに笑って。
「うん……俺も」
きつく閉じられた両脚が、貴広の手を待たずに緩く開いた。
「おいで」と言って手を差し伸べると、良平は濡れた指をギュッと絡めてきた。貴広はその細い指を引き、ベッドへ引き上げた。
濡れた頬をバスタオルで拭ってやる。されるがままに良平は顎を上げた。
部屋の中はかすかな間接照明だけ。窓の外のビルの灯りが、良平の濡れた睫毛にまたたく。
「ごめん、良平。俺、お前を悲しませる積もりじゃなくて、ただ俺は……」
「うん……」
ひくと咽を鳴らして、良平はかすかに笑った。白い歯が窓の外のビルの灯りにきらめいた。
「もうあんなこと言うなよ」
「言わない。もう言わないよ」
「許してやる。だからもうひとつ」
「ん? 何? 良平」
良平の望むことなら何だって。貴広は良平の瞳の奥をのぞき込む。
良平は熱い裸身を震わせた。
「して……」
全身の血を沸騰させる呪文の言葉。
「ん……っ」
勢いよく唇を奪われ、良平が溜まらず声を漏らす。
「んん……ン……んっ」
良平は腕を貴広の首に巻きつかせ、白いリネンの海に沈んでいく。
唇が離れると、良平は甘えと敵意の混ざったようなキラキラした瞳で貴広を見上げた。
初めて会った頃の良平は、これと似た目をしていた。貴広を試すような、どこか縋るような悲しい目の色。
今は少し違う。
「良平……愛してる」
ほら、こう言うと、こんなに嬉しそうに潤ませる。好きな男の腕で、幸せに笑って。
「うん……俺も」
きつく閉じられた両脚が、貴広の手を待たずに緩く開いた。
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