今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生

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6、味覚の戻る日

星の上を歩くように

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「『ここ』はもういい? じゃあ、瞬はどこをどうして欲しいの」

「伸幸さん……」

 自分の声がどうしようもないほど濡れている。

「ん? 瞬はどうされるのが好き?」

 瞬は小さく首を振った。

「そんなにいじめないでよ……」

「いじめてないよ。瞬の好きなこと、知りたいんだ」

 伸幸の声は切なく熱い。自分の欲望をコントロールしようとして。それは瞬のためだ。瞬をこの上なく大事にしてくれている。

「そんな……好きなことなんて」

 多分、伸幸に任せた方が気持ちよくなれる。男運のよくなかった瞬には、大した経験値もない。

「伸幸さんのしたいようにして」

 こんな恥ずかしいことを口にしたのは初めてだ。

 瞬の太ももに当たった伸幸の欲望が、瞬の言葉でぶるとふるえた。

 苦しげな息の下で伸幸は言った。

「分かった。じゃあ瞬も、気持ちよかったらそう言って」

 潤滑剤をタップリ使って、伸幸は、瞬が伸幸のために準備してきた深いところを押し開いた。

 初めはそろそろと指を差しいれ、深いところが心地よさそうに伸縮するポイントを探る。一度探りあてたことのあるそこは、今夜すぐに見つかった。

「ん……っ」

 瞬は握った拳をかんだ。

 伸幸は腕を伸ばし、瞬の手首をつかんで口からその拳を外した。

「声、がまんしちゃダメ。気持ちよかったら気持ちいいって教えてくれなきゃ」

「のぶゆき……さ……」

 伸幸は見つかったそこを揺さぶりつづける。

「ここ、好き? 気持ちいい?」

 瞬はもうろうとしながらコクコクとうなずいた。

「気持ちイイ。スキ」

「じゃあ、もう一本指増やすよ」

 ぬるりとした感覚とともに、瞬の深いところがきつくなった。

「あ」

 瞬の腰がキュッと浮いた。

 宙へ向けて脚を大きく開かれて、一番深いところをまさぐられているのに、痛くもないし不快でもない。

「あ……あ……あ……」

 瞬はもう声をこらえるのを止めた。言葉で伝える余裕はすでに失っていた。瞬にできるのは、伸幸の指が的確に瞬の身体を目覚めさせていることを、声のトーンで表すことだけだ。

(気持ちイイ……気持ちイイから、止めないで。もっとして)

 きつくなって瞬がそれを受け容れて、またきつくなってを繰り返し。

 充分に開かれたことを確かめて、伸幸は耐えに耐えた欲望を瞬の深いところに差しいれた。

「ああ……っ!」

 そこから先は、甘い刑罰のようなものだった。

 伸幸は、瞬の内側の鋭敏な場所を執拗に責めた。

 瞬はもっとも感じる部分を責めつづけられ、声も腰もとろけさせられた。

 長い長い拷問のような快楽の後。

「ん……ふうっ」

 瞬は小さく叫んでしまった。

 伸幸が瞬の体内からその欲望を引き抜いたのだ。そして伸幸は瞬の身体を裏返した。

「伸幸さん……っ?」

 瞬の腰を持ち上げ、瞬の膝を立てさせてから、伸幸はもう一度自身の欲望を瞬の中へ進めた。

「ああぁん」

 欲望の攻めてくる角度が変わり、瞬の腰は快楽をむさぼるようにひとりでに揺れた。

「ここ……ここ、スキ」

 瞬が伸幸の欲望による刺激がもっとも強くなる位置を見つけたとき。

「ああっ!」

 瞬の腰を抱いていた腕を片方外し、伸幸は瞬の欲望をつかんだ。

 伸幸に深いところを長く愛されているうちに、瞬の欲望はとろとろに濡れて光っていた。

 濡れたそれを伸幸は強く握り、それとともに自身の動きのペースを上げた。

「も……ダメ……」

「瞬……っ」

「あん……あん……のぶゆき……さんっ」

 はあんっ……とひときわ切ない声を上げて、瞬は身体を反らした。

 瞬の背で、伸幸も大きく痙攣した。

 はあはあと大きく息をつきながら、瞬はふとんの上にくずおれた。

 伸幸はかいがいしく後始末をし、脱力している瞬を胸に抱いた。

「瞬」

「……なに」

 伸幸は瞬の身体に回した腕に力を入れた。

「今日もカワイかった」

「バカ」

 まだ全身がじんじんしている。

 伸幸の腕の重さを感じながら、瞬はまぶたを閉じた。

(一緒にイケたね)

 瞬は心の中でそう言ったはずだった。

 伸幸は瞬を抱えたまま、転がるように跳ねて瞬の唇にキスをした。

 瞬の言葉は思わず知らず、口から出ていたようだった。

 快楽に絡めとられて正体を失くすなんて。

 瞬にとって、初めての経験だった。
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