星導の魔術士

かもしか

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第一章 魔術学校編

第16話 星と魔術

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 ──翌日、レント達は校庭に来ていた。

「はい。皆さん集まりましたね」

 点呼を取るのは担任教師のティルフィング先生だ。名前が長いのでティル先生とみんな呼んでいる。
 この場所に集まっている理由だが、

「はい、どうやらライゴウさんとレントさんは戦っていたみたいですが私が残念ながら見ていないんですよね。なので、何がどの程度出来るのか私に見せてください」

 レントは昨日と同じく朝になって教室へ向かうと、黒板に『朝礼は校庭でやります』とだけ書かれており、教室に来た生徒はみんな校庭に集まったのだ。

「黒竜や先輩達と戦った人達もお願いしますね」

 黒竜……レントしか戦ってる人はこの場にはいない。
 そう思っているとティル先生から名指しで呼ばれた。

「そうそう、レントさんは校庭を壊さないでくださいね」
「僕だけ……?」
「うーん、とりあえず壊しそうな人って言うとレントさんくらいだけど……」

 ライゴウやアガーテも壊しそうなもんだが……。
 そうレントが思って居ると、最初にアガーテから始めるようで1人で校庭の中心に立っていた。

「とりあえず……簡単にできるものでいいかしら」
「いいですよ、お願いします」

 そうしてアガーテは銃を水平に構えて弾を撃ち出した。

魔弾ショット

 それだけ口にして銃口から出たものは親指の先くらいの魔力の弾。
 それは校庭の的をめがけて飛んでいき爆発四散した。
 え?何がって?魔力の弾がだよ。

「え? 結構強めにしたはずなんですけれど」
「あの的は我々教師陣でも壊すのは難しいですよ。アガーテさん」
「じゃあ次はもっと強めに出しますわ」

 そう言って今度は上に向けて銃を向ける。
 その時、マスケット銃のような形の銃は形を変えてロケットランチャーのような大物になった。

獄炎弾頭デスペラード

 そう口にしたアガーテは上に向けていた銃口を的に向けて魔力を込めていた。

 ──ドゴンッ

 とても重く地面を震わせるような音と共に、的に向かって今度は人の頭位の魔力の弾が飛んでいく。

 ──バガッ

 的と弾が当たった時にやはり弾が消えていた。
 あの的はかなり頑丈そうだ。

「きぃーーー! 悔しいですわ!! ……あら、おほほ」

 地団駄を踏むアガーテは人の目に気づくと取り繕うように笑った。

「はい、もう結構ですよ。一応、力の把握はしてますからね。この目で確認しておきたかったんで」
「わかりましたわ」

 そう会話を交わすとアガーテがレントの横に戻ってきた。

「壊せませんでしたわ」
「仕方ないよ、だって教師でも壊せないらしいし」
「はい、次はケイスさん。お願いします」
「……はい」

 次に呼ばれたのはケイスだ。
 召喚魔獣というものを駆使する彼だが、何をするんだろうか?
 魔獣を呼び出して的に攻撃でもするんだろうか。

「では始めてください」

 コクリとケイスは頷くと詠唱を始めた。

「宙に宿りし星の王、この手に宿るは誓いの証。我は願う……我は導き……我は顕す!『召喚魔術・星馬ペガサス』」

 詠唱とともに足元に現れた魔法陣には、次第にその中心に呼び出した魔獣が姿を現す。

 ──星馬ペガサス

 その馬ははるか昔、星魔大戦にて人族と共に魔物と戦いそのほとんどが絶滅したとされていた魔獣だ。

 ──ブルルルァ

 馬が鼻息を荒くしてケイスの元へと寄り添った。

(やっぱり仲がいいなぁ……)

「ペガサス……やって」
 ブルルゥ……ヒヒーン

 ペガサスはその意図を受け取ったのかその場で自身の魔力を解放させた。
 たちまち風は荒ぶり、砂埃が舞い始める。

「……いけ」

 そう合図したケイスの言葉通りなのかは分からないが、その言葉を受けてどんどん魔力を凝縮させていく。
 たちまちその風は小指の頭位のサイズにまで小さくなり、的に向かって射出された。

 最大まで溜め込まれた風の玉はその形を鋭く長く変形させて的に一直線に向かう。
 その一撃はあまりにも強大で、先のアガーテの時ではビクともしなかった的に穿った。

 当たった瞬間、甲高い音が辺り一面に広がりその攻撃の強さの程がうかがえる。
 しかし、やはり頑丈なのか的はビクともしない。

 いや、正確には傷しかつかない……が正しいだろう。

「……これでも無理」

 ケイスは落ち込んではいないようで、次に移ろうとした。

「待ってください、ケイスさん。それ以上の威力を出されては校庭が……」

 確かに今のでもギリギリだっただろう。
 もし壊そうと、もっと力を出したら校庭がどうにかなってしまうかもしれない。

「残念……じゃあ、また呼ぶ」
 ブルルルン

 鼻息で返事をしたペガサスはその身を光に変えて消滅した。

「残念だったね」
「……まだいける」

 ケイスはやる気のようだ。

「まぁ、校庭が壊れたら授業どころじゃないし……」
「……ね」

 どうにも口数が少ないと意思疎通が取りづらい。慣れが必要そうだ。

「では、次はライゴウさん」
「うむ」

 ライゴウが的?
 レントのその疑問をよそに、ライゴウは的とは関係ないところでスタンバイした。

「ライゴウは近接戦闘がメインだもんね。遠距離が出来ても得意分野はそっちだね」
「うむ」

 そう言ったライゴウは拳に力を貯めて解き放った。

天地反転反地・天てんちはんてんたんち・リバース

 その拳は地面に叩きつけられ、そこを中心にヒビが入る。

 ──おぉぉ!

 歓声が飛び交う中、ティル先生がライゴウに近寄ろうと歩いていった。

「近寄らない方がいいぞ」

 その言葉を終えた途端、地面がものすごい勢いと範囲で割れていった。
 もはやひび割れと言ってはいけない。
 あれは、地割れだ。

「ちょ、ちょっとライゴウさん!? 校庭は壊さないように……って……え?」

 ライゴウが拳を地面から離すと、割れた地面が元に戻っていく。
 まるで何も無かったかのように。

「天地反転反地・天、これは殴ったものを元に戻す技だ。元通りにも戻せるし、少しだけ戻す事も出来る」

 その言葉の通りに既に校庭にはひび割れは存在しなかった。

「はぁ……流石にビビってしまいました。これからこの手の魔術を使う時は一声下さい……」
「うむ、わかった」

 そう言うとライゴウは生徒の元へと歩き出した。

「もういいんですか?」
「……そういえば魔術使ってなかったな」

 あれはおそらくライゴウの鍛錬の賜物だろう。
 魔術というより技術だ。

「では、これでいこう」

 その途端、ライゴウは全身に雷の魔力を纏わせて全身から放電しだした。
 バチバチと音を立てながら全身に走る電気は、触っただけでも怪我をしそうだ。

『雷魔術・荷電身マテリアボディ』 

 この魔術は雷魔術だけでは無い、全ての魔術が行える基礎的なものだった。
 その魔術を身に纏ってその特性を身体に宿すものだ。
 火魔術なら燃え盛りながら周囲のものを溶かし、水魔術ならあらゆる攻撃をいなし、風魔術なら全ての攻撃が斬撃となる。

「雷魔術のそれは、速度だったかな」

 レントが思い出しながら雷魔術の効果を口に出す。
 もちろん、攻撃に使われない水魔術や雷魔術も身体に魔力を纏わせている以上触れたらダメージは受けてしまう。

(雷魔術なら感電するし、水魔術なら……)
「水魔術なら爆発するね」

 ミラが心でも読んだかのように声を出す。

「そうだね、水蒸気爆発だ」
「自分は水を纏ってるからダメージないのに相手だけ爆発の餌食とは……なかなかえぐいよなぁ」

 ミラとレントは頷き合うと、目線をライゴウに移した。

 目にも止まらぬ速さで移動しながら、その拳を打ち付ける。
 その影響なのかそれも含めてこの魔術なのか、放たれた拳から空気の弾が打ち出されていた。
 リーチから外れているようでその弾は途中で消えてはいるが、その速さから出てくる弾に当たっては無事では済まないだろう。

「こんなものか」
「はい、ありがとうございました。では、次にレントさん」

 ようやっと呼ばれて立ち上がるとティル先生の方へと向かっていく。

「その……僕の魔術って影魔術なんですよね」
「はい、わかってま……そうですね。忘れてました。私が的になりましょう」

 ありがとうございます、とレントは先にお礼を済ませておくと先生から10歩くらいの位置でまで歩いて止まった。

『精霊術・霊真体スピリットエリア

 ティル先生は精霊術の使い手だ。
 この星では珍しいというものですらなく、むしろこの人以外居ないんじゃないだろうか。

「ではいきます」
「はい、いつでもどうぞ」

 影魔術とは基本的に搦手と受けを得意としている都合上、対象がいなかったり反応がない的が相手では分かりづらいのだ。
 攻撃魔術も幾つかあるが、どれも遅い代わりに威力がとても高く、的がいくら頑丈とはいえ何かあるかもしれないし校庭もどうにかなるかもしれない。
 やらないに越したことはないだろう。

『影魔術・時影式シャディウムコマンド

 その魔術を使った瞬間レントとティル先生、そして見ていた生徒たちはドーム状の真っ暗な世界に閉じ込められた。

「……なんですの!?」
「ふむ、思えばレントの力もあまり見ていなかったな」
「いやぁ、ワクワクするねぇ!」

 人の考えは人それぞれとは言うが、楽しんでいるのはミラだけである。
 1人だけ精神イッちゃってるのかな。
 そう思わざるをえなかったレントは少し驚愕した。

「ほぅ、闇の支配する空間……ですか」
「えぇ、この領域内において僕は」

 その言葉の途中にレントはその力の一片を使った。

「このように距離を無視して移動ができます」
「影魔術の弱点をよく知ってますね」

 これでも入学前に色々していた身だ。
 自分の力の弱いところは少しはわかっているつもりだ。

「では、続きます」
「えぇ、どうぞ」

 先生はその守りに自信があるのか油断なくレントを待ち構えた。

『影魔術・赦影双ツインシャドー

 両手に影を纏わせ刃と化す魔術、赦影双。
 その刃に当たると鈍足効果と盲目効果が付与される。
 戦場において、足が遅く目が見えないというのは脅威そのものだ。
 仮にこの影魔術の使い手を倒したとて他の者に倒されるのは必至だろう。

「これはこれはなかなかやりますね」

 レントの攻撃は間違いなくティル先生の首元へと吸い込まれていった。
 確実に当たったのだ、効果が出てもおかしくない。
 しかし、そこは教師だ。

「やはりこの魔術を使っておいて正解でした」

 この先生の使っている魔術は常に自動負傷回復と自動異常回復が働いている。
 この状態の先生に怪我をおわせるのは至難の業かもしれない。

「はい、次をどうぞ」
「あ……はい」

 次は何をするかレントは悩んだ。
 しかし、それを見たティル先生は好きなようにやりなさいと言ってくれたので試したい新魔術を試すことにした。

「じゃあ、ちょっと無理そうなら避けてくださいね」
「わかりました」

 その言葉をきちんと受け止め、いつでも避けられる体勢になる先生。
 相手を侮らず適した動きができる、いい人物だ。

『星影魔術・時穹切断イマジナリーキル』 

 レントの目が光り『星痕』が出現した。

「!?うおっと……」

 流石の先生だ。
 受けきれない攻撃は避けるに限る。
 如何にこの状態の先生とはいえ《即死》の状態異常は受けれない。

「それは流石に想定外でした。避けなければ私、死んでましたよ?」
「だから危なそうなら避けてって言ったんですよ」

 でしょうね、と先生は言ってくれたから良かったものの普通なら怒られるような行為だ。

「新たに作った魔術です。どうでした? 先生」
「後で教員室に来なさい」

 当然の判断だ。
 致し方なしとレントは後で教員室に向かう事になる。





 ──そこで起きたことは良くも悪くもレントの想定外な出来事だった。

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