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僕、「吉原 葵」(よしばら あお)は1人の少女に恋をしていた。
そのキッカケは、単純だった。
僕は昔から女顔とよく言われ女の子が欲しかったお母さんにとっては、好都合だった。
そのため、髪型はいつも少し女子っぽいボブにさせられた。
しかし、僕はそれが嫌で嫌で仕方なかった。
小・中と好きな女の子に告白するたびにキモいだのと罵倒されフられていたからである。
でも、彼女「三和 柚月」(みわ ゆづき)は違った。
僕と彼女は名前が近かったため席が隣だった。
彼女は、明るくて気さくな性格でクラスの男女問わず人気があったため、僕にも時折喋りかけてくれた。
「ねぇ、吉原君。」
「な…なに…?」
「葵君って呼んでいー?」
「べ…別にいいよ。」
「やった!」
「じゃあ、私のことも柚月でいーよっ(^ν^)」
「う…うん。」
「ところで、葵君ってさー。髪綺麗でサラサラだよね~。私なんてボサボサでさぁ((汗
シャンプー何使ってるの?!笑」
「別に…市販のやつだよ。」
「そーなんだぁ~。やっぱ、髪質の問題なのかな…?」
などと、柚月は無邪気に笑いながら喋っていた。
そして、その数ヶ月後僕たちは付き合うことになった。なんでも、柚月が僕みたいな髪型の人がタイプだったらしい。
僕は、初めてこのコンプレックスを認めてもらえたようで嬉しかった。
だが、この幸せな時間はそう長くは続かなかった。
柚月はバイトで僕は、大学受験に向けての勉強。
お互いに、忙しくて一緒に居る時間も減っていった。
そして、とうとう…
「あのね…。大事な話があるの。聞いてくれる?」
「何?」
「………………………………………………………………………………別れ…よ…う。」
あまりに唐突な言葉だった。
柚月は、涙を浮かべながらそう言った。
「…………うん。」
これ以上何も言えなかった。
僕はその日、初めて失恋の痛みを知った。
ご飯をまともに食べることもできないし、誰かが面白い話をしてても笑えない。
ただただ、ベッドで泣くことしかできなかった。
三日三晩、トイレとお風呂以外は部屋の中。
「……もう。彼女のことなんて全て忘れてやる。」
少し怒り交じりにそう思った。
彼女との写真やペアストラップなどの思い出の物は、全て燃やした。
若干、やりすぎたと後悔してしまった。
が、過ぎたことは仕方ない。自業自得だ。
いっそのこと、柚月が褒めてくれたこの髪も切ってしまおうか。
「そうだ。そうしよう。気分転換にもなるだろう。きっと。」
「葵ー。どこ行くの~?」
母が、反射的に問う。
しかし、母に床屋などと言うと止められるので
「コンビニ。」
と、適当に返事をした。
3日ぶりに出た外は心地よかった。
雨がシトシトと降っていたが今、気持ちが上がらない葵にとって、濡れるのはどうでも良かった。
15分ほど歩いた、町外れにあるその床屋さんはどこか懐かしい感じの温かそうな店だった。
チリリーン
「いらっしゃいませー!」と、威勢のいい店員の声が聞こえる。
日曜日の夕方だからなのか、人は全然いない。
すぐに、椅子に座らされる。
「お客様ー。どのような髪型にいたしましょう?」
その店にそぐわない、若い女の店員さんが言う。
「み…短くしてください。」
若干、緊張気味の葵は頬を赤く染めながら言った。
「わかりましたー!」
髪を霧吹きで濡らされたあと、ブラシで整えられいよいよカットだ。
シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ…………………
髪を切る音以外沈黙が流れる。
シャキシャキシャキシャキ…
ザクッザクッ…
バサッッッ…
どんどん短くなっていく。
今、思えばいつぶりだろうかこんなに短くするのは。
家に帰ったらお母さんに怒られるだろうなぁ…
なんて、思いながら寝てしまった。
「……さまー。客さまー。…お客様ー!」
店員の声が聞こえる。
「はっ…。すいません。」
「いえいえー!お客様仕上がりましたよ!」
と、嬉しそうに語る彼女はどことなく柚月に少し似ていた。忘れるために切りに来たのにこれでは、意味がない。まぁ、仕方ないか…
鏡を見ると、今まで頑張れば結ぶことができるくらいあった髪は結べない長さにカットされ、目にかかってヘアピンで留めていた前髪も眉毛が見えそうなほど切られていた。
そして、代金を払って外に出た。
少し頭が軽くなったような気がした。
家に帰ると、案の定母に怒られた。
「葵っ…。どうしたの?!その髪型は?!?」
「切った。」
「なんで…!長いほうが可愛らしくて良かったのに…。」
お母さんは、残念そうに見てきたがもうめんどうなので、さっさと自分の部屋に入った。
ー翌日ー
教室に入ると、教室の中に居た人全員の視線が葵に向いた。
その理由は、明確だったもののクラスメイトの1人が駆け寄ってきて…
「葵!髪切ってる!前よりいいじゃん!」
と、意外な反応を示した。
「でも、なんで切っちゃったの~?」
と、不思議そうに問われたので。
「まぁ。なんとなくかな!」
と、明るく振舞って見せた。
しかし、元カノと同じクラスと言う状況は極めて深刻だった。
なぜなら、忘れようにも忘れられないからだ。
しかし、この時の僕が考えもしないようなことが数年後起こるのであった。
次回へ続く。
そのキッカケは、単純だった。
僕は昔から女顔とよく言われ女の子が欲しかったお母さんにとっては、好都合だった。
そのため、髪型はいつも少し女子っぽいボブにさせられた。
しかし、僕はそれが嫌で嫌で仕方なかった。
小・中と好きな女の子に告白するたびにキモいだのと罵倒されフられていたからである。
でも、彼女「三和 柚月」(みわ ゆづき)は違った。
僕と彼女は名前が近かったため席が隣だった。
彼女は、明るくて気さくな性格でクラスの男女問わず人気があったため、僕にも時折喋りかけてくれた。
「ねぇ、吉原君。」
「な…なに…?」
「葵君って呼んでいー?」
「べ…別にいいよ。」
「やった!」
「じゃあ、私のことも柚月でいーよっ(^ν^)」
「う…うん。」
「ところで、葵君ってさー。髪綺麗でサラサラだよね~。私なんてボサボサでさぁ((汗
シャンプー何使ってるの?!笑」
「別に…市販のやつだよ。」
「そーなんだぁ~。やっぱ、髪質の問題なのかな…?」
などと、柚月は無邪気に笑いながら喋っていた。
そして、その数ヶ月後僕たちは付き合うことになった。なんでも、柚月が僕みたいな髪型の人がタイプだったらしい。
僕は、初めてこのコンプレックスを認めてもらえたようで嬉しかった。
だが、この幸せな時間はそう長くは続かなかった。
柚月はバイトで僕は、大学受験に向けての勉強。
お互いに、忙しくて一緒に居る時間も減っていった。
そして、とうとう…
「あのね…。大事な話があるの。聞いてくれる?」
「何?」
「………………………………………………………………………………別れ…よ…う。」
あまりに唐突な言葉だった。
柚月は、涙を浮かべながらそう言った。
「…………うん。」
これ以上何も言えなかった。
僕はその日、初めて失恋の痛みを知った。
ご飯をまともに食べることもできないし、誰かが面白い話をしてても笑えない。
ただただ、ベッドで泣くことしかできなかった。
三日三晩、トイレとお風呂以外は部屋の中。
「……もう。彼女のことなんて全て忘れてやる。」
少し怒り交じりにそう思った。
彼女との写真やペアストラップなどの思い出の物は、全て燃やした。
若干、やりすぎたと後悔してしまった。
が、過ぎたことは仕方ない。自業自得だ。
いっそのこと、柚月が褒めてくれたこの髪も切ってしまおうか。
「そうだ。そうしよう。気分転換にもなるだろう。きっと。」
「葵ー。どこ行くの~?」
母が、反射的に問う。
しかし、母に床屋などと言うと止められるので
「コンビニ。」
と、適当に返事をした。
3日ぶりに出た外は心地よかった。
雨がシトシトと降っていたが今、気持ちが上がらない葵にとって、濡れるのはどうでも良かった。
15分ほど歩いた、町外れにあるその床屋さんはどこか懐かしい感じの温かそうな店だった。
チリリーン
「いらっしゃいませー!」と、威勢のいい店員の声が聞こえる。
日曜日の夕方だからなのか、人は全然いない。
すぐに、椅子に座らされる。
「お客様ー。どのような髪型にいたしましょう?」
その店にそぐわない、若い女の店員さんが言う。
「み…短くしてください。」
若干、緊張気味の葵は頬を赤く染めながら言った。
「わかりましたー!」
髪を霧吹きで濡らされたあと、ブラシで整えられいよいよカットだ。
シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ…………………
髪を切る音以外沈黙が流れる。
シャキシャキシャキシャキ…
ザクッザクッ…
バサッッッ…
どんどん短くなっていく。
今、思えばいつぶりだろうかこんなに短くするのは。
家に帰ったらお母さんに怒られるだろうなぁ…
なんて、思いながら寝てしまった。
「……さまー。客さまー。…お客様ー!」
店員の声が聞こえる。
「はっ…。すいません。」
「いえいえー!お客様仕上がりましたよ!」
と、嬉しそうに語る彼女はどことなく柚月に少し似ていた。忘れるために切りに来たのにこれでは、意味がない。まぁ、仕方ないか…
鏡を見ると、今まで頑張れば結ぶことができるくらいあった髪は結べない長さにカットされ、目にかかってヘアピンで留めていた前髪も眉毛が見えそうなほど切られていた。
そして、代金を払って外に出た。
少し頭が軽くなったような気がした。
家に帰ると、案の定母に怒られた。
「葵っ…。どうしたの?!その髪型は?!?」
「切った。」
「なんで…!長いほうが可愛らしくて良かったのに…。」
お母さんは、残念そうに見てきたがもうめんどうなので、さっさと自分の部屋に入った。
ー翌日ー
教室に入ると、教室の中に居た人全員の視線が葵に向いた。
その理由は、明確だったもののクラスメイトの1人が駆け寄ってきて…
「葵!髪切ってる!前よりいいじゃん!」
と、意外な反応を示した。
「でも、なんで切っちゃったの~?」
と、不思議そうに問われたので。
「まぁ。なんとなくかな!」
と、明るく振舞って見せた。
しかし、元カノと同じクラスと言う状況は極めて深刻だった。
なぜなら、忘れようにも忘れられないからだ。
しかし、この時の僕が考えもしないようなことが数年後起こるのであった。
次回へ続く。
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