師匠はヴァンパイア、スキル強奪で世界に反逆をします。

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既にBADENDしている世界から

1話-④ 絶望と絶望

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  電光石火《ライトニング》

  騎士の1人が彼女に向けて魔法放つ。

  俺は豚顔の魔族を思い出していた。

(ヤバい!  避けられない!)

  クッと目を逸らしていたが、その必要は無かった。

「無傷か……」

「大隊長……  あいつ何なんですか?!  魔法が効かないじゃないですか!!」

「あれはヴァンパイアだ」

「どうした?  傀儡人形風情である、人界騎士の魔法が妾に効果があると思ったか?」

  彼女は、騎士の1人に指を刺して言葉を放った。

  斬撃《スラッシュ》

  彼女に対峙していた騎士の1人の首が吹っ飛び、代わりに母さんが切られた時よりも、激しく血を吹き出していた。

「あらあら、なんて脆い騎士様なんでしょう笑、所詮は操られるだけの残滓にしか過ぎないからかしら?  まさか1番弱い攻撃だけで倒せるなんて笑」

  大隊長と言われていた騎士の1人は仲間の死に対して動揺を見せる事なく、淡々と言い放つ。

「各班に伝達、最大戦力を持って中央より北部地点に合流せよ」

「了解だぜ、大隊長~  まずは!」

  横にいた3人目の騎士が、剣を構えこちらを向いた途端……!!  

「え、え?」

「エイミィィッッ!!!!」

  動けない俺のそばに居てくれたはずのエイミー は倒れ込み、変わりにさっきまで剣を構えていた騎士が俺の前に対峙する。

  エイミーは騎士の剣によって身体を貫かれており、倒れたエイミーからはダクダクと血液が流れ出ている。

  俺は運ばれていた台車から身を乗り出して、狼狽えることしか出来ない。

  何でこんな事をしたんだ?  そう訴え掛けるように騎士を見上げる。

  ハァハァ

極度の興奮状態であるのだろう、騎士の吐息は兜より漏れ出し、白くひろがる。

  兜から微かに零れた瞳は酷く歪み、その醜悪さを如実に表しているだろう。

  増強《ブースト》

  騎士が叫び、俺は畏怖する。

  斬撃《スラッシュ》

「痛ってぇなぁ、えぇ?  お掛けで手元が狂っちまったじゃねーか」

「同族を殺さなければ生きる事が出来ない寄生虫共が……」

  ヴァンパイアの彼女が騎士に向けて言い放つと、騎士は振り返り答えた。

「ヘッ、そんな事、この俺には関係ねぇな、お掛けで元同族が、余計に苦しむ事になったじゃねーか」

  先程まで、ヴァンパイアの彼女に向けて話していた騎士は俺の方をチラッと見た。
  
  その視線の先を、俺が恐る恐る確認すると、俺の右腕があった部位から、ダラダラと血が流れ、在るべき腕が無くなっていた。

  うぁぁぁぁっっっ!!??

  痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!

  あぁ、もう駄目だ。

  意識が朦朧として、死を覚悟した俺は、少し安心したのだろうか、家族の事を思い出した。

(あぁ、これでみんなに会えるかな……)

  父さん、母さん、妹、そしてエイミーだ。

  他人事の様に聞いていた出来事が、いざ自分に振りかっても、やはり、事前の準備を怠っていたからだろう。

  家族は喰われたり、切られたり、そして俺ももうすぐ死ぬ。

  短い人生だったけど、楽しかった。

  早く会いたい

…………

ーー



  ゥッ……

  こ、ここは?  って俺ん家じゃねーか。

  さっきまでのは何だったんだ?  

  俺は眠る前の出来事が夢の様に感じれなかったが、自分で右腕があった事で、夢だと確信出来た。

「良かった、夢だったのか……」

「ん、どうしたのじゃ?  何か嫌な悪夢でも見たのか?」

  聞き覚えがある声ではあったが、今、この瞬間では、1番聞きたくない声の持ち主だ。

「お、お前、なんでいるんだ」

「ん?  おかしな事を聞くではないか?  貴様が先に妾を助けたのでは無いか。  で、あれば礼を尽くすのは当然のはずでは?」

「い、いやおかしい!  お前が元気になったのはおかしいが、あの出来事は夢のはずだ!  現に俺の腕は繋がってるじゃないか!!」

「き、きっと何処かに皆隠れて居るんだろう?」

「妾の眷属になったのじゃ、腕くらいは当然、再生するのじゃ」

「さ、再生?  それか、俺はトカゲのシッポみたいに生えたのか?  馬鹿言うな!  人間の腕が生える訳無いだろ!」

「ん?  いや、貴様は既に人間では無いぞ」

「は…...?  そんな馬鹿な事がある訳ないだろ!  現に何の変化も無いじゃないか!」

  彼女は深い溜息と共に徐にに鏡ををこちらに向けて来た。

  な、なんだこれ……

  俺の目は真っ赤に光っていた。

  人間ばなれした《ヴァンパイア》と同じ様に赤く光る瞳と同じであった。

  「さて、少年。  ようこそ夜の世界へ」
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