師匠はヴァンパイア、スキル強奪で世界に反逆をします。

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既にBADENDしている世界から

1話-③ 絶望と絶望

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俺は何が何だか全く理解が出来なかった。

  唯一、理解が出来たのはさっきの騎士が魔族を倒してくれた事だ。

  それでも、父さんはもう帰って来ない。

  父さんの亡骸ももう無い、あの魔族が全てを奪ったからだ。

  俺は先程の光景を思い出してしまい、吐き気をもようした一一

「ナウスっ!」

「生きてるの?  聞こえる?!  ねぇっば!!」

(……エミリーか?)

「こりゃ骨も折れてるかもしれないね、とりあえずゆっくり運ぶんだ」

「分かったわ」

「お兄ちゃん死んじゃ嫌だよ……」  

  俺が朧気な意識の中で、最後に聞こえた声であった一一

「あんたら、それでも人間かい!!  一体どんな理屈があればこんな事許されるんだ!!」

  俺は母さんの、聞いた事のない怒声で、目が覚める。

(身体中が痛い、  少し動かすだけでズキズキする)

  目が覚めたのも束の間に、母さんが怒声を浴びせてる方向に目を向ける。

「何があったんだ?」

  俺は目の前の光景が信じられず、思わず声を出した。

  白銀の騎士がこちらに、ギラりと光る剣先を向けているからだ。

「ナ、ナウス目が覚めたの?  まだ動いちゃダメだよ。  骨が折れてるかもって……」

  「何がどうなってるんだ?   あの騎士達は……」

  エミリーに対して話し掛けた次の瞬間。

  スパッッ、と言う音と共に、水滴の様な何かが顔に飛んできた。

  きゃァァァァァァ!!

  俺は事態が掴めず、ゆっくり振り向く。

  そこには首から上が無くなり、代わりに激流の様に血を吹き出す、母さんの身体だった。
 
  あ、あぁ

  ァァァァっっ!!??

  何が?!  どうなっているんだよ!!??

  どうして、母さんは切られたんだ。

  あぁ、動こうにも身体に力が入らねぇぇぇ!!

  叫ぶ事しか出来ずにいると、放心状態になった妹は母さんの亡骸に近づく。

  今度はハッキリと目撃した。

  妹に向けて真っ直ぐ振り抜かれた一刀を。

  やめてくれぇぇぇぇ!!!!

 俺はこの短時間で、人の、いや、家族の死を目撃しすぎたのかもしれない。

  エミリーだけでも、逃がす事は出来ないのか!?  この最悪からだけで良いんだ!!

  な、何か無いのか?!

「ふむ、一体何処の阿呆が妾の休息を邪魔するのかと思えば……  醜悪な《人界騎士》ごいっこうでは無いか」

  突然の事に誰もが声の方を見上げた。

  そこには、俺が助けたはずの、金髪の美少女が浮いていた。

  彼女の目は赤く光、その輝きは見えないはずの口元までもが見えるかの様に。

  容姿は人間でも、月を背に浮かぶ彼女はそれ以外の何かとたらしめるのも納得だろう。

  まさにその姿は、ある意味神々しく、妖艶でもあり、希望に感じてしまった。

「ヴァンパイアか、また厄介な……」


  

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