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既にBADENDしている世界から
1話-② 絶望と絶望
しおりを挟むエイミーが納屋を去ってからどれ位たったのだろうか?
何処かで、俺にほんの少しだけでも勇気があれば、こんな結末になる事は無かったかも知れない。
(なんだか騒がしいな)
起きろ……起きろって……目を覚ませナウス!
身体を揺らさせているのか、まぶたをゆるりと開くと、そこには怪訝な顔の父さんがいた。
「なんだよ……もう朝か?」
「違う! 魔界の軍団が村に迫って来たんだ!!」
ッッ!?
普段なら軽い冗談として、受け流してるかも知れないが、父さんの表情が、事の重大さを知らしめている。
「み、みんなは、無事なのか?」
「あぁ、エイミーちゃんを母さん達が今、迎えに行ってる。 父さん達も今から北側に避難するぞ」
俺は父さんに手を引かれ、納屋を出た時……
ドシッ、ドシッ。
二足で歩く大きな豚顔の魔族が現れた……
父さんと俺はお互い顔を合わせた訳では無いのに、全身から血の気が引いていくのを感じた。
ふと、我に返った父さんは、俺を抱えて走りだす。
だが、その光景を目撃した魔族は、俺達の方を振り返ると、まっすぐ向かって来る。
「と、父さん……」
俺は呼び掛ける。
「ねぇ、父さんってば!」
豚顔の魔族は、見た目からは考えられない程、足が早く、必死に走る父さんに簡単に追いつく。
「父さ……ッッ!!
俺は追い付かれそうな事を、必死で伝えようとしたが、間に合わなかった。
いや、間に合った所でどうにかなっていたとも思えないが、俺と父さんは魔族の拳によって吹き飛ばされた。
(うぅ……ッ、全身が痛い。 骨が折れた位じゃ済まないな)
もうダメだと思って魔族の方を俺は見上げた。
豚顔の魔族は何かを握っているのか、拳を見つめて動かない。
……ッ 父さん!
拳の中で父さんは、鷲掴みにされている。
苦痛の表情を見せる父さんは、魔族によって今にも握り潰されそうだ。
や、やめてくれ、離してくれ……
あぁ、俺が物語の英雄や騎士ならここで真の力を引き出せたのに……
ドシャッ
音と共に父さんからは血飛沫が飛び散り、魔族は拳からダラダラと流れる血を飲み、手を開き父さんの死体を貪る。
豚顔の魔族は、その醜い顔同様に、丁寧に手の平まで舐めており、越に浸った顔から、全ての状況を思い出した。
あぁ、今度は俺の番か。
ドシッ、ドジッ。
俺は思い出す、この音を聞いたのが全ての始まりだった。
終わる時も同じ音を聞くんだな。
俺は覚悟を決め、ギュッと目を瞑る。
電光石火
プギャァァァァッッ!!
雷鳴
…………ドスンッ。
俺の耳には聞き覚えの無い声と、激しい炸裂音、断末魔が一瞬の間に聞こえた。
俺はギュッと瞑っていた瞼をゆっくりと開き、目の前を確認すると……
先程まで、俺に向かって来ていた魔族は、地に伏せており、その変わりに見た事が無い、白銀の騎士が目の前に居た。
あ、あぁ
声が上手く出ない。
俺はあまりにの恐怖で上手く声がでず、立ち上がろにも力が入らなかった。
呆然としている内に、騎士は目の前で倒れている魔族に、剣を刺し、魔族を灰にしてその場を後にした。
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