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ボスステージ、まさか僕がここにくるとはな……それもアスカさんの剣を手に。
小学生の僕に教えてやりたいよ。
《ボスステージに入りました。レベルの10倍のモンスターが現れます》
ステージの中央に光が集まる。煙に包まれたモンスターの影がうっすら現れる。
来い……叩き斬ってやるぜ! 緊張で足が震える。
「気をつけろ!」
ステージの外から不安な表情で見るアスカさん。
任せてください。
僕たちの愛の必殺技【キモオタ・ストラッシュ】をぶちかましてやりますよ!
必殺技のイメージはバッチリだ。何年この時を待ったと思う。
煙が晴れ、あのモンスターが姿を現した。
《ボスが現れました。レベル0 スライムです》
「ス、スライム!?」
もちろん知っている。モンスターの初歩の初歩。プルプルの粘液状の体、誰もが知るザコモンスターだ。
「木本君! 気を抜くな!」
「はい!」
確かにそうだ。スライムと言っても僕と同じレベルのスライム。一筋縄ではいかないだろう……
「スライムか……普通なら楽勝だが同じレベルのモンスターとなるとどうなんだろうな……」
「ええ……同レベルのモンスターは私たちでも苦労するわよ……」
外では格闘家と魔法使いも心配しているようだ。
ステージの中央ではスライムがピョンピョンと飛び跳ねている。
「ふふ……お前も死闘を予感してるって訳かい」
剣を構える。重く振り回すのは簡単ではない。隙を見せたら狩られる……!
緊張感がステージを覆う。
「……くっ! 木本君! 焦るな! 防具のポケットに飛び道具が入っている。それを使って距離を埋めるんだ!」
アスカさんからのアドバイス。なるほど! 冒険者らしい戦い方だ! これがトップ冒険者か!
トップ冒険者に畏怖しながらポケットに手を突っ込む。
手裏剣のような鉄の飛び道具。
よし、これで様子見してみるか……
僕はスライムに向け、手裏剣を放る。
『カツンッ』
スライムに当たる手裏剣。
『ピーピーッ』
スライムは体を不愉快そうに揺らしている。
これが僕たちの戦いのゴングってわけだな……さあ行くぞ! 剣を逆手に構える。冒険者を夢見た日から何度この構えをしてきただろう。
地面を強く蹴りだす。
走馬灯のように今までの思い出が蘇る。
レベル0と分かってからの辛い日々、自分ではどうしようもない闇の中を彷徨った青春時代。
……ふふ、全部この瞬間の為だったのかな?
もう弱い僕はいない! 僕は勇者 木本オタフクだ!!
「木本君! いけぇぇえ!」
アスカさんの声援がしっかりと聞こえる。思いのほか冷静な自分に気づく。スライムが止まって見えるぜ!! 剣を強く握りしめる。
「くらえスライム! キモオタ・ストラッ――」
『ぴえぇぇぇえええっーーー!』
「!?!?」
必殺技を放とうと走り出した刹那、スライムが地面を転げまわる。
『ピー……ピ……ィ……』
苦しそうに悶えるスライム。
「な、なんだ!? ハッ!!? 進化か!?!?」
再び剣を構える僕。
しかし、スライムは煙のように消滅した。
「……え?」
「……え?」
「……え?」
驚く一同。
「……まさか、あの手裏剣が当たって……死んだのか……?」
「……そんな。必殺技もまだなのに……」
僕たちはレベル0のモンスターの弱さを見誤っていたようだ。
「これがレベル0か……一歩間違えれば、逆だったかもしれねぇ……」
好敵手の残骸を哀しい目で見つめる。
こうして僕のダンジョンデビューは最強ギルドに見守られながら、一撃でボスを倒すという快挙で終わった……
小学生の僕に教えてやりたいよ。
《ボスステージに入りました。レベルの10倍のモンスターが現れます》
ステージの中央に光が集まる。煙に包まれたモンスターの影がうっすら現れる。
来い……叩き斬ってやるぜ! 緊張で足が震える。
「気をつけろ!」
ステージの外から不安な表情で見るアスカさん。
任せてください。
僕たちの愛の必殺技【キモオタ・ストラッシュ】をぶちかましてやりますよ!
必殺技のイメージはバッチリだ。何年この時を待ったと思う。
煙が晴れ、あのモンスターが姿を現した。
《ボスが現れました。レベル0 スライムです》
「ス、スライム!?」
もちろん知っている。モンスターの初歩の初歩。プルプルの粘液状の体、誰もが知るザコモンスターだ。
「木本君! 気を抜くな!」
「はい!」
確かにそうだ。スライムと言っても僕と同じレベルのスライム。一筋縄ではいかないだろう……
「スライムか……普通なら楽勝だが同じレベルのモンスターとなるとどうなんだろうな……」
「ええ……同レベルのモンスターは私たちでも苦労するわよ……」
外では格闘家と魔法使いも心配しているようだ。
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「ふふ……お前も死闘を予感してるって訳かい」
剣を構える。重く振り回すのは簡単ではない。隙を見せたら狩られる……!
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「……くっ! 木本君! 焦るな! 防具のポケットに飛び道具が入っている。それを使って距離を埋めるんだ!」
アスカさんからのアドバイス。なるほど! 冒険者らしい戦い方だ! これがトップ冒険者か!
トップ冒険者に畏怖しながらポケットに手を突っ込む。
手裏剣のような鉄の飛び道具。
よし、これで様子見してみるか……
僕はスライムに向け、手裏剣を放る。
『カツンッ』
スライムに当たる手裏剣。
『ピーピーッ』
スライムは体を不愉快そうに揺らしている。
これが僕たちの戦いのゴングってわけだな……さあ行くぞ! 剣を逆手に構える。冒険者を夢見た日から何度この構えをしてきただろう。
地面を強く蹴りだす。
走馬灯のように今までの思い出が蘇る。
レベル0と分かってからの辛い日々、自分ではどうしようもない闇の中を彷徨った青春時代。
……ふふ、全部この瞬間の為だったのかな?
もう弱い僕はいない! 僕は勇者 木本オタフクだ!!
「木本君! いけぇぇえ!」
アスカさんの声援がしっかりと聞こえる。思いのほか冷静な自分に気づく。スライムが止まって見えるぜ!! 剣を強く握りしめる。
「くらえスライム! キモオタ・ストラッ――」
『ぴえぇぇぇえええっーーー!』
「!?!?」
必殺技を放とうと走り出した刹那、スライムが地面を転げまわる。
『ピー……ピ……ィ……』
苦しそうに悶えるスライム。
「な、なんだ!? ハッ!!? 進化か!?!?」
再び剣を構える僕。
しかし、スライムは煙のように消滅した。
「……え?」
「……え?」
「……え?」
驚く一同。
「……まさか、あの手裏剣が当たって……死んだのか……?」
「……そんな。必殺技もまだなのに……」
僕たちはレベル0のモンスターの弱さを見誤っていたようだ。
「これがレベル0か……一歩間違えれば、逆だったかもしれねぇ……」
好敵手の残骸を哀しい目で見つめる。
こうして僕のダンジョンデビューは最強ギルドに見守られながら、一撃でボスを倒すという快挙で終わった……
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