16 / 76
16
しおりを挟む
「お疲れ様……良い戦いだったぞ……」
戦いを終え僕にねぎらいの言葉をくれるアスカさん。
しかし、さすがに手裏剣一撃は予想していなかったようで苦笑いでアスカさん。
「……ハハ、圧勝でしたね」
さすがにあの弱さには驚いた。
レベル0のモンスター、おそらく自然界にはいないレベルの弱さだったのだろう……
わざわざついて来てくれたサポートメンバーにも申し訳ない。
ダンジョン冒険者という幼い頃からの夢が叶ったが何とも複雑な心境だ。
初めてのダンジョンクリアだっていうのにこの虚しさ。ほんとにこれでクリアになるんだろうか?
《ダンジョンクリアおめでとうございます》
あのアナウンスが流れだす。
よかった。無事にクリアできたようだ。
ボスステージの中央に光が集まる。
「気をつけろ!」
アスカさんが剣を構える。
「はい!」
俺も剣を構える。
「調子に乗るなぁ! 木本君は引っ込んでろ!」
「ぐわぁああ」
アスカさんは俺を蹴り飛ばす。
「モンスターが飛び出してくるかもしれないんだぞ! 危険だ、離れていろ!」
「……はい……」
ダンジョンをクリアしたとはいえレベル0の俺にアスカさんは厳しかった。ボスを倒したんだから少しくらい優しくしてくれてもよくないか?
トボトボと離れ、遠目に光を見る。
小さな何かがフラフラと光から出てきた。
「むっ!? モンスターか? くらえ!」
アスカさんがそれに斬りかかる。その時――
「キャーーーッ! 斬らないでぇぇえ!」
「!?」
部屋中に女の子の声が響き渡る。
「き……斬らないでください! わ、私は精霊です!」
「せ、精霊!?」
「はい……精霊です……この剣をどけてください……」
宙に浮く、ハムスターほどの大きさの羽の生えた女の子。
アスカさんに剣を突きつけられ怯えている。
「……どうやらモンスターではないようだな……紛らわしいな」
「いや……アスカさん、謝りましょうよ……」
「やめて……死にたくない! 逝きたくない!」
「ん!? どっちだ!?」
「アスカさん……とりあえず剣を下ろしましょうよ……」
泣きながら青ざめる精霊と名乗る女の子。
◇
「……とんでもない人ですね……いきなり斬るなんて! この世界の人はイカれてますね!」
いきなり斬られかけた精霊はやっと落ち着きを取り戻し、アスカさんを睨んでいる。
「ごめんね……アスカさんも悪気があったわけじゃないんだよ」
「ふんっ! ダンジョンで急にこんなチビスケが現れたら、誰だってモンスターだと思うだろ!」
「チビスケって……! 失礼ですね……わざわざこの世界に来た精霊に対してそんな態度は!」
アスカさんと険悪な精霊。
「そもそも精霊とはなんだ? お前は何者だ?」
「精霊も知らないなんて……本当にこの世界は遅れてるますね!」
「……この世界って? お前はどこから来たんだ?」
「……異世界からよ」
「異世界!?」
精霊はフワッと宙に浮き俺の目の前に飛んでくる。……近い。
「感謝してます。えっと……木本君? キモオタ君?」
「え、いやぁ……どちらでも……」
手のひらサイズだが至近距離の可愛い女の子に照れる。
「このダンジョンをクリアする人が現れるのをずっと待っていました。キモオタ君、あなたに世界を救ってほしいの!」
「世界を救う!?」
「ええ、あなたにしか魔王は倒せないんです!」
俺が……魔王を!?
「……なるほど、やはり……俺は運命の勇者……ってことな――」
『ガッ!』
「ぐわああ」
「ウロチョロするなチビスケ!」
なんで俺を蹴るんですか……アスカさん……
「ダンジョンのことを知っているんだろ!? 早く教えろ! あのダンジョンせいで……妹は……!」
アスカさんは泣きそうだ。前に言っていた寝たきりの家族のことだろうか?
精霊は真剣な表情になる。
「そうですね。ちゃんとお話ししないといけませんね……でも、その前に――」
ダンジョンの秘密を知っている精霊。重大な話に違いない……
「……その、お腹ペコペコで……なにか食べ物ありませんか?」
「……」
アスカさんは怒りの表情で剣を手をやる。
「アスカさん!! 斬っちゃダメだ!」
「離せ! 木本君! こいつは人を馬鹿にしている!」
「キャーーーッ! 斬らないでぇぇえ!」
「待てぇぇえ! チビスケ!」
異世界から来た精霊。彼女の出現でこの世界は大きく変わった。
とりあえずこの二人は犬猿の仲のようだ。
戦いを終え僕にねぎらいの言葉をくれるアスカさん。
しかし、さすがに手裏剣一撃は予想していなかったようで苦笑いでアスカさん。
「……ハハ、圧勝でしたね」
さすがにあの弱さには驚いた。
レベル0のモンスター、おそらく自然界にはいないレベルの弱さだったのだろう……
わざわざついて来てくれたサポートメンバーにも申し訳ない。
ダンジョン冒険者という幼い頃からの夢が叶ったが何とも複雑な心境だ。
初めてのダンジョンクリアだっていうのにこの虚しさ。ほんとにこれでクリアになるんだろうか?
《ダンジョンクリアおめでとうございます》
あのアナウンスが流れだす。
よかった。無事にクリアできたようだ。
ボスステージの中央に光が集まる。
「気をつけろ!」
アスカさんが剣を構える。
「はい!」
俺も剣を構える。
「調子に乗るなぁ! 木本君は引っ込んでろ!」
「ぐわぁああ」
アスカさんは俺を蹴り飛ばす。
「モンスターが飛び出してくるかもしれないんだぞ! 危険だ、離れていろ!」
「……はい……」
ダンジョンをクリアしたとはいえレベル0の俺にアスカさんは厳しかった。ボスを倒したんだから少しくらい優しくしてくれてもよくないか?
トボトボと離れ、遠目に光を見る。
小さな何かがフラフラと光から出てきた。
「むっ!? モンスターか? くらえ!」
アスカさんがそれに斬りかかる。その時――
「キャーーーッ! 斬らないでぇぇえ!」
「!?」
部屋中に女の子の声が響き渡る。
「き……斬らないでください! わ、私は精霊です!」
「せ、精霊!?」
「はい……精霊です……この剣をどけてください……」
宙に浮く、ハムスターほどの大きさの羽の生えた女の子。
アスカさんに剣を突きつけられ怯えている。
「……どうやらモンスターではないようだな……紛らわしいな」
「いや……アスカさん、謝りましょうよ……」
「やめて……死にたくない! 逝きたくない!」
「ん!? どっちだ!?」
「アスカさん……とりあえず剣を下ろしましょうよ……」
泣きながら青ざめる精霊と名乗る女の子。
◇
「……とんでもない人ですね……いきなり斬るなんて! この世界の人はイカれてますね!」
いきなり斬られかけた精霊はやっと落ち着きを取り戻し、アスカさんを睨んでいる。
「ごめんね……アスカさんも悪気があったわけじゃないんだよ」
「ふんっ! ダンジョンで急にこんなチビスケが現れたら、誰だってモンスターだと思うだろ!」
「チビスケって……! 失礼ですね……わざわざこの世界に来た精霊に対してそんな態度は!」
アスカさんと険悪な精霊。
「そもそも精霊とはなんだ? お前は何者だ?」
「精霊も知らないなんて……本当にこの世界は遅れてるますね!」
「……この世界って? お前はどこから来たんだ?」
「……異世界からよ」
「異世界!?」
精霊はフワッと宙に浮き俺の目の前に飛んでくる。……近い。
「感謝してます。えっと……木本君? キモオタ君?」
「え、いやぁ……どちらでも……」
手のひらサイズだが至近距離の可愛い女の子に照れる。
「このダンジョンをクリアする人が現れるのをずっと待っていました。キモオタ君、あなたに世界を救ってほしいの!」
「世界を救う!?」
「ええ、あなたにしか魔王は倒せないんです!」
俺が……魔王を!?
「……なるほど、やはり……俺は運命の勇者……ってことな――」
『ガッ!』
「ぐわああ」
「ウロチョロするなチビスケ!」
なんで俺を蹴るんですか……アスカさん……
「ダンジョンのことを知っているんだろ!? 早く教えろ! あのダンジョンせいで……妹は……!」
アスカさんは泣きそうだ。前に言っていた寝たきりの家族のことだろうか?
精霊は真剣な表情になる。
「そうですね。ちゃんとお話ししないといけませんね……でも、その前に――」
ダンジョンの秘密を知っている精霊。重大な話に違いない……
「……その、お腹ペコペコで……なにか食べ物ありませんか?」
「……」
アスカさんは怒りの表情で剣を手をやる。
「アスカさん!! 斬っちゃダメだ!」
「離せ! 木本君! こいつは人を馬鹿にしている!」
「キャーーーッ! 斬らないでぇぇえ!」
「待てぇぇえ! チビスケ!」
異世界から来た精霊。彼女の出現でこの世界は大きく変わった。
とりあえずこの二人は犬猿の仲のようだ。
26
あなたにおすすめの小説
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった
ぐうのすけ
ファンタジー
無才・貧乏・底辺高校生の稲生アキラ(イナセアキラ)にゲームの悪役貴族が憑依した。
悪役貴族がアキラに話しかける。
「そうか、お前、魂の片割れだな? はははははは!喜べ!魂が1つになれば強さも、女も、名声も思うがままだ!」
アキラは悪役貴族を警戒するがあらゆる事件を通してお互いの境遇を知り、魂が融合し力を手に入れていく。
ある時はモンスターを無双し、ある時は配信で人気を得て、ヒロインとパーティーを組み、アキラの人生は好転し、自分の人生を切り開いていく。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる