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ザコ戦士の僕が上級ダンジョンに?
「おい!チンタラ歩いてんじゃねえよ!」
ゴンザレスに大声で怒鳴られ、泣きそうになりながら歩くスピードを上げる。
僕はこのゴンザレス戦士団で荷物運びをしているペルーサだ。
このゴンザレス戦士団はダンジョンに眠る財宝や、魔獣の毛皮や牙などの貴重なアイテムを見つけるハンター集団。
小さなパーティだが、個々の【スキル】レベルも高く、最近注目されているパーティだ。
……まあ荒くれ者も多く、いい注目のされ方だけではない。
「お前はホントにノロマだなペルーサ」
「すいません……」
口答えしても殴られるだけだ。ゴンザレスのスキルは【怪力】。腕っぷしが強い暴力的なこの戦士団の隊長だ。
「まあまあ隊長。こんなノロマでもいなくなると誰が雑用をやるんです? 逃げられたら困りますよ。こんなザコでもうまく使わないと」
ニヤニヤと小馬鹿にしてくる副隊長の魔法使い。
「このガキがここまで役立たずだとは思わなくてな……」
ゴンザレスも呆れた目で僕を見てくる。
◇
数週間前、たまたま僕の住む村に宿泊していたゴンザレス戦士団に、僕はスカウトされた。
僕のスキル【鑑定】と【バランス】が珍しいからということだ。
多くの人間はスキルを1つしか持たない。
僕は珍しくスキルを2つ持つっていたのでスカウトされたのだ。
【鑑定】は相手の攻撃力、防御力、魔力、スキルなどの能力を鑑定できるスキル。
【バランス】は炎、水、雷など様々な魔法を使えるというスキルだ。
しかし、2つのスキルというと聞こえはいいが、どちらのレベルも低いものだった。
【鑑定】は分析に時間がかかり、実戦ではとても使える代物ではない。
【バランス】は炎魔法はマッチの火の代わりなるくらい、回復魔法はささくれを治せるくらいのレベルだ。
当然、ゴンザレスは2つのスキルに【鑑定】【バランス】というレアスキルの僕をスカウトした訳だがここまで実戦で使えないとは思っていなかったようだ。
もちろん僕はスキルレベルが弱いことは説明していたが、そんなことを聞き入れるゴンザレスではない。荷物運びで使えればいいと思っていたのだろう。
僕の村は平和な村で魔獣を見るのもこのダンジョンに入って初めてだった。
そんな経験値を積んでいない僕がダンジョンの魔獣を相手に出来る訳もなく荷物運びをしている。
本来、この恵まれたスキルを活かすためにレベルの低いダンジョンで弱い魔獣を倒し経験値を積み、スキルのレベル必要があったのだが、僕は今、場違いなA級ダンジョンにいる。
◇
「よし、そろそろゴールが近づいてきたぞ」
ゴンザレスが僕らパーティメンバーに言う。
「いよいよですね。長かった。とくに今回はペルーサみたいなお荷物がいましたからね。あっ、お荷物がお荷物を運んでるんですから笑えますね」
副隊長はまた僕を馬鹿にする。僕はもう相手にはしない。
僕がこのパーティに入って数週間、いよいよこの【ゴーレムのダンジョン(A級)】に最深部まで来た。
はやくこのダンジョンを抜け、パーティも辞めて村に帰りたい……
「よし、この扉の向こうにボスのゴーレムがいる。おいペルーサ! ここからゴーレムの力を【鑑定】しろ!」
「はい!」
ようやく僕の出番が来た。
扉越しにこの奥にいるダンジョンの主、ゴーレムの力を【鑑定】する。
少しくらい離れていても時間さえかければ能力の分析はできるはずだ。
◇
「……おい! まだ【鑑定】できないのか?」
10分ほど経ち、ゴンザレスがしびれを切らし僕に怒鳴りだした。
「すみません……いつもならこれだけ時間をかければ【鑑定】できるんですが……」
「なんのためにお前を雇ったと思ってるんだ! ホントに使えないゴミだな!」
ゴンザレスが怒り出すのも無理はない。自分でもなぜ【鑑定】できないのか分からない……もしかして……?
「あの……ひょっとしてこの扉の奥にゴーレムがいないってことは……?」
扉の奥にゴーレムがいれば【鑑定】はできる。考えられる可能性はゴーレムがいないことくらいだが……
「はぁ? そんなことありえないだろ!」
「まあまあ隊長。稀にボスがいないダンジョンもあるっていうし、ホントにいないのかもしれませんよ?」
珍しく副隊長が僕をかばう。
「だから……ペルーサ。お前1人でボスの部屋の宝箱から【石化の首飾り】を持ってきてくれよ? ボスはいないんだろ?」
「えっ!?」
副隊長がまたニヤニヤしながら僕に言う。ホントに性格の悪い男だ……
「うむ、副隊長の言う通りだ。ここまでなにもしてこなかったお荷物のお前が活躍できるチャンスだぞ。【石化の首飾り】を持ってきてくれ」
ゴンザレスは僕を指さす。
「「「そうだそうだ! ペルーサが1人で行けよ!」」」
ほかのメンバーも囃し立てる。
そんな………ろくに戦うこともできない僕が!?
「……わかりました。1人で行ってきます」
僕も引くに引けなくなっていた。
【鑑定】によるとゴーレムはいないはずだし大丈夫か……?
「ふっ、お前みたいなゴミにもこんな使い道があったとはな」
◇
「いいか? もう一度説明するぞ? このボスの部屋の扉を開け、奥にある宝箱からアイテムを持ってくるんだ。【石化の首飾り】だぞ?」
ゴンザレスは僕にしつこいほどに念押しする。
【石化の首飾り】 このダンジョンの宝で身に着ける者の体をゴーレムと同じ【石化】の状態にできる幻のアイテムだ。
アイテムショップに売ればとんでもない金額で買い取ってくれるという幻のアイテム。
「もしゴーレムがいて襲われても【石化の首飾り】だけば外に持ち出すんだ」
ゴンザレスは当然、僕の命などどうでもいい。アイテムさえ手に入ればそれでいいのだ。
「それから、こっちの崖には絶対にアイテムを落とすなよ?」
ゴンザレスが崖を指さす。扉の左右に広がる深い崖。底の見えない深い崖だ。
言われなくても分かっている。
こんなところに落ちたらまず助からないだろう。
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