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第一章・十階層編
第二話・ミケさんのお願い
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シャワーから浴びて戻ってくると茶髪の少年が話しかけてきた。
「僕はダンテス。よろしくね。」
「よろしく。ところでミケさんは?」
辺りを見渡すが、ミケさんの姿は見えない。
「エルフの受付嬢ならまだシャワー室だよ。そんなことより君!もしかして不死身なの!?すごい!傷がもう塞がってる!」
そんなことより。
その物言いに俺は頭にきた。
「そんなことより!?ミケさんがいないなんてことは一大事だぞ!?ミケさんがいなくなったら……この村は終わるぞ」
「うん、君はやっぱり面白いね。よほどエルフの受付嬢が好きなんだね。」
「好き?チョットナニイッテルカワカラナイ。だいたいロリコンじゃねーし」
俺がそう言うと後ろから殺気を感じた。
これは……子供とよく間違えられるのが軽くコンプレックスになっているミケさんが放つ殺気!
「クロノス君?誰がロリっ子だって?」
後ろには笑顔のミケさんが立っていた。
笑っているのに何故か怖い。
そして可愛い。
まだ濡れている髪、ほんのりと香るシャンプーの匂い……うん、ミケさんは最高だ。
「ミケさんって可愛いですよね!大人な女性って感じがします」
俺はミケさんを悲しませたくない。
だから俺は嘘をついた。
ミケさんは子供っぽいです、ごめんなさい。
「えへへ、そうかな?ありがとう」
ミケさんは照れくさそうにはにかんだ。
ミケさんは純真無垢だ。
チョロすぎて心配になるレベル。
これは……決まりだ。俺が守ってやらねば!
「えーと、クロノス君?」
俺がミケさんと二人だけの世界に入っているとエルシーが話しかけてきた。
「さっきはごめんね。うちのシトがあんなことしちゃって」
エルシーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「全然気にしてないから大丈夫だよ。気持ちかっ、ゲフンゲフン!ナンデモナイヨー」
「それなら良かった」
エルシーは安心したのか、「はぁ」とため息をついた。
その時、今までに感じたことのないほどの殺気を感じた。
「おいっ!エルに何やらせてんだ!」
声を荒げたのは黒髪の少年だ。
「文句ならシトに言ってくれよ」
「シトに勝てるわけないだろうが!」
いや、それ堂々と言うことじゃないでしょ。
「お前には死んでもらう」
そう言うと、黒髪の少年は手から黒い炎を出した。
なにそれ!?カッコいい!
「死にたくなけりゃ土下座しろ!」
俺は迷った。
「炎に体を焼かれる痛みはどれくらい気持ちいいものなのか?攻撃を受けてみてもいいのではないか?」と。
しかし、結論はすぐ出た。
俺は男に痛めつけられて興奮する変態じゃない。
「断る。土下座はしないが攻撃を受ける気はない」
俺はエルシーの後ろに素早く回り込む。
女の子を盾にするのはどうかと思ったけど、ミケさん以外の女の子なんてどうでもいいしね。
すると、笑い声が聞こえてきた。
「ははは、リュウガ君。ぷっ、ダメだってそれは」
笑い声はダンテスのものだった。
「くくく、やめよう?ね?」
「ちっ!」
リュウガは舌打ちをすると炎を消した。
「いやー、クロノス君。これはね、このリュウガ君の能力なんだ」
この国ではごく稀に、特殊な能力を持って生まれてくる子供がいた。
その子供は魔力を持たず、魔法が使えない代わりに強力な能力を使える。
俺の場合は『不死身』が能力だ。
「ちなみに僕の能力は『幸運』ね。それで、リュウガ君の能力なんだけど手から……ふふ」
ダンテスは笑いをこらえ、リュウガは顔を真っ赤にしている。
シトとエルシーもニヤニヤしている。
「手から炎を出す能力」
「だろうな」
これは予想通りだ。さっきのを見れば誰でもわかる。
それより気になるのはダンテスの能力だ。
幸運ってなんだ?
「じゃなくて、『手から炎を出しているように見せる』能力なんだ」
「えっあっ、……ちょっ、は?」
俺は驚きのあまり固まってしまった。
え?能力者って魔法使えないんだよ?その代わりに強力な能力を使えるんだよ?
「ダサっ!」
シトが笑いをこらえながらそう言った。
「うるせーっ!殺してやろうか!?ブス女!」
「やってみる?死んでも知らないからね?」
「ちっ!」
シトが少し睨んだだけでリュウガは引っ込んでしまった。
えぇー!もしかして本当にそんな能力なの!?戦闘力皆無じゃん。
「とまあ、私たちはこんな感じなんだけど……君の能力は?」
「あ、ああ。えーと『不死身』だ」
「うん、ありがとう。えーと、私たちの仲間になってくれると嬉しいなぁ?パーティーに入ってくれない?」
俺は動揺していたが、エルシーの言葉で動揺は吹き飛んだ。
「断る!」
俺にはパーティーを組む資格はない。
もちろん、パーティーをもう一度組みたいと思ったことはある。
でも、仲間を見捨てた俺が新しい仲間を作るなんてことしてはいけないんだと思う。
親友の最期の言葉がフラッシュバックする。
「クロノス!お前は……逃げろ!新しい仲間と楽しく過ごせ!」
俺は……どうすればいい?
俺は新しい仲間を作っていいのか?
俺は多分一生死ねない。
だから、この罪を一生背負っていかなければいかないと思っていた。
罪を忘れるなんてことは考えもしなかった。
罪を忘れてもいいのか?
「そこをなんとか……お願い!」
エルシーは手を合わせて頭を下げる。
俺の前にはみんながいる。
エルシーがいる。
シトがいる。
ダンテスがいる。
リュウガがいる。
俺が思ったのはただ一つ。
「このメンバーで過ごす日常は楽しいんだろうな」と。
そう思った。
「ねえ、クロノス君。これは罪滅ぼしだよ。君はみんなに助けられた。だから、今度は君が助ける番なんだ」
「俺が……助ける番?」
「そうだよ。彼らがいるとギルドは人が寄り付かなくてね?私を助けると思って、ね?」
ミケさんは最高の笑顔で言葉を続けた。
「私を助けて!」
ミケさんのお願いだ。答えは決まっている。
「はい!パーティーに入ります!」
「僕はダンテス。よろしくね。」
「よろしく。ところでミケさんは?」
辺りを見渡すが、ミケさんの姿は見えない。
「エルフの受付嬢ならまだシャワー室だよ。そんなことより君!もしかして不死身なの!?すごい!傷がもう塞がってる!」
そんなことより。
その物言いに俺は頭にきた。
「そんなことより!?ミケさんがいないなんてことは一大事だぞ!?ミケさんがいなくなったら……この村は終わるぞ」
「うん、君はやっぱり面白いね。よほどエルフの受付嬢が好きなんだね。」
「好き?チョットナニイッテルカワカラナイ。だいたいロリコンじゃねーし」
俺がそう言うと後ろから殺気を感じた。
これは……子供とよく間違えられるのが軽くコンプレックスになっているミケさんが放つ殺気!
「クロノス君?誰がロリっ子だって?」
後ろには笑顔のミケさんが立っていた。
笑っているのに何故か怖い。
そして可愛い。
まだ濡れている髪、ほんのりと香るシャンプーの匂い……うん、ミケさんは最高だ。
「ミケさんって可愛いですよね!大人な女性って感じがします」
俺はミケさんを悲しませたくない。
だから俺は嘘をついた。
ミケさんは子供っぽいです、ごめんなさい。
「えへへ、そうかな?ありがとう」
ミケさんは照れくさそうにはにかんだ。
ミケさんは純真無垢だ。
チョロすぎて心配になるレベル。
これは……決まりだ。俺が守ってやらねば!
「えーと、クロノス君?」
俺がミケさんと二人だけの世界に入っているとエルシーが話しかけてきた。
「さっきはごめんね。うちのシトがあんなことしちゃって」
エルシーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「全然気にしてないから大丈夫だよ。気持ちかっ、ゲフンゲフン!ナンデモナイヨー」
「それなら良かった」
エルシーは安心したのか、「はぁ」とため息をついた。
その時、今までに感じたことのないほどの殺気を感じた。
「おいっ!エルに何やらせてんだ!」
声を荒げたのは黒髪の少年だ。
「文句ならシトに言ってくれよ」
「シトに勝てるわけないだろうが!」
いや、それ堂々と言うことじゃないでしょ。
「お前には死んでもらう」
そう言うと、黒髪の少年は手から黒い炎を出した。
なにそれ!?カッコいい!
「死にたくなけりゃ土下座しろ!」
俺は迷った。
「炎に体を焼かれる痛みはどれくらい気持ちいいものなのか?攻撃を受けてみてもいいのではないか?」と。
しかし、結論はすぐ出た。
俺は男に痛めつけられて興奮する変態じゃない。
「断る。土下座はしないが攻撃を受ける気はない」
俺はエルシーの後ろに素早く回り込む。
女の子を盾にするのはどうかと思ったけど、ミケさん以外の女の子なんてどうでもいいしね。
すると、笑い声が聞こえてきた。
「ははは、リュウガ君。ぷっ、ダメだってそれは」
笑い声はダンテスのものだった。
「くくく、やめよう?ね?」
「ちっ!」
リュウガは舌打ちをすると炎を消した。
「いやー、クロノス君。これはね、このリュウガ君の能力なんだ」
この国ではごく稀に、特殊な能力を持って生まれてくる子供がいた。
その子供は魔力を持たず、魔法が使えない代わりに強力な能力を使える。
俺の場合は『不死身』が能力だ。
「ちなみに僕の能力は『幸運』ね。それで、リュウガ君の能力なんだけど手から……ふふ」
ダンテスは笑いをこらえ、リュウガは顔を真っ赤にしている。
シトとエルシーもニヤニヤしている。
「手から炎を出す能力」
「だろうな」
これは予想通りだ。さっきのを見れば誰でもわかる。
それより気になるのはダンテスの能力だ。
幸運ってなんだ?
「じゃなくて、『手から炎を出しているように見せる』能力なんだ」
「えっあっ、……ちょっ、は?」
俺は驚きのあまり固まってしまった。
え?能力者って魔法使えないんだよ?その代わりに強力な能力を使えるんだよ?
「ダサっ!」
シトが笑いをこらえながらそう言った。
「うるせーっ!殺してやろうか!?ブス女!」
「やってみる?死んでも知らないからね?」
「ちっ!」
シトが少し睨んだだけでリュウガは引っ込んでしまった。
えぇー!もしかして本当にそんな能力なの!?戦闘力皆無じゃん。
「とまあ、私たちはこんな感じなんだけど……君の能力は?」
「あ、ああ。えーと『不死身』だ」
「うん、ありがとう。えーと、私たちの仲間になってくれると嬉しいなぁ?パーティーに入ってくれない?」
俺は動揺していたが、エルシーの言葉で動揺は吹き飛んだ。
「断る!」
俺にはパーティーを組む資格はない。
もちろん、パーティーをもう一度組みたいと思ったことはある。
でも、仲間を見捨てた俺が新しい仲間を作るなんてことしてはいけないんだと思う。
親友の最期の言葉がフラッシュバックする。
「クロノス!お前は……逃げろ!新しい仲間と楽しく過ごせ!」
俺は……どうすればいい?
俺は新しい仲間を作っていいのか?
俺は多分一生死ねない。
だから、この罪を一生背負っていかなければいかないと思っていた。
罪を忘れるなんてことは考えもしなかった。
罪を忘れてもいいのか?
「そこをなんとか……お願い!」
エルシーは手を合わせて頭を下げる。
俺の前にはみんながいる。
エルシーがいる。
シトがいる。
ダンテスがいる。
リュウガがいる。
俺が思ったのはただ一つ。
「このメンバーで過ごす日常は楽しいんだろうな」と。
そう思った。
「ねえ、クロノス君。これは罪滅ぼしだよ。君はみんなに助けられた。だから、今度は君が助ける番なんだ」
「俺が……助ける番?」
「そうだよ。彼らがいるとギルドは人が寄り付かなくてね?私を助けると思って、ね?」
ミケさんは最高の笑顔で言葉を続けた。
「私を助けて!」
ミケさんのお願いだ。答えは決まっている。
「はい!パーティーに入ります!」
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