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疑惑
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俺はライブハウスの二階に上がり『事務室』と表示してある部屋の前に立った。ドアを開けようとドアノブを握ろうとしたとき、事務室の中から話し声が聞こえた。話しを聴き取る事はできなかった。俺はわざとらしくドアをノックした。話し声はピタリとやみ、俺は扉を開けた。そして開口一番、普段聴き取りする前の口上を言った。
「城東警察の小林と言います。このライブハウスで死体らしき物を見たと相談がありまして、関係者にお話しを伺いたいのですが?」
事務室の奥に座っていた恰幅のいい男が
「警察?先ほども来ていましたが?」
俺は
(制服警官のことか?)
と思い
「ああ!その警官達は現場保存のために急行してもらいました。私は現場調査のために後から来まして・・一応こちらの受付で許可を頂きまして、現場とされる控室を調べさせて貰いました」
途端に恰幅のいい男の顔が曇る。男は
「・・そうですか。でも刑事さん?でいいのかな?それなら受付ではなく社長の私に直接許可を取ってほしかったなぁ・・」
俺は
(この男が社長か?あの表情・・何か知っているな?)
俺は
「申し訳ありません。何しろこの手の捜査は初動が大事でして・・先ずは現場に・・」
そこまで言うと、社長と名乗った男は立ち上がり、机の引き出しから名刺を取り出し俺に差し出した。
「申し遅れました。私がライブハウスを経営しております社長の清水 智哉と申します」
俺は名刺を受け取り、スーツの内ポケットから警察バッジを取り出し、開いて男に見せた。男はバッジを見た後
「これが警察バッジ・・ですか?初めて見ました」
俺はこの手の質問は初めてではないのでいつものように
「バッジを見た人は皆さんそう言いますよ。見ようと思っても見れる物ではないですが・・」
俺は警察バッジをしまい、改めて尋ねる。
「今日こちらのライブを見に来た人から『ライブの後、サインを貰おうと控室に行ったところそこで死体を見た』と相談を受けましてこうして駆けつけた訳ですが?」
男は
「死体?そんなものあるわけがないですよ!そもそも観客はライブの後だろうと控室には入って来れません!内のスタッフが常に会場や廊下にいますから」
俺は
「その相談者が言うには控室に行くまでの間、誰にも会わなかった・・と」
男の顔が再び曇る。俺は
(質問を変えてみるか?)
そう考え
「ちなみに今日のライブ出演者は誰ですか?」
男は
「刑事さんに言ってわかるかなぁ?神木 奏馬(かみき そうま)という若手アイドルですよ。駆け出しではあるんですけど、ちゃんと事務所にも所属しておりまして・・」
俺は
「事務所というと芸能事務所ですか?」
男は
「そうです。芸能界では誰もが知っている事務所でして『桜手(おうて)事務所』ですよ」
俺は芸能関係には疎いので聴いてみた。
「あの・・それほどの事務所なら地上波とか、ライブでももう少し規模の大きいライブからデビューさせるのでは?」
男は
「いきなり大々的にデビューしても実力や実績がないと人気は中々続かないんですよ。桜手もそこはわかっていて、こうして草の根的な活動をしているわけです。そのアイドルは半年程度の活動ですがファンは少しづつ増えていまして・・」
俺は話しを聴ける人間を増やすべく尋ねてみた。
「そのアイドルは普段はどれくらいの人を連れているんですか?・・その、マネージャーとか・・」
男は
「まだ駆け出しですから、刑事さんの言うとおりマネージャーが1人だけです」
俺は
「そのマネージャーさん、今日は?」
と尋ねたところ、男は慌てて
「そ、そうだ!今日はもうライブハウスを閉めようと思っていたんです!申し訳ありませんが本日はこのへんで・・」
俺は男の目を真っ直ぐに見つめた。男の目はぎこちなく泳いでいた。
「・・わかりました。長々と申し訳ありませんでした。また、後日お話しを聴きにお伺いしてもいいですか?」
俺がそう言うと男は
「勿論ですよ!時間の許す限り協力いたします」
俺はその言葉に
「いやぁ、ご協力感謝します。では失礼します」
そう言い事務室を後にした。
1階に降りると片倉もスタッフに話しを聴き終わっていたようで受付近くに立っていた。俺が
「どうだった?」
とだけ聞くと片倉は首を左右に振り
「ダメですね。誰に聞いても同じ答えです。『死体など見ていない』その一点張りです」
俺は多少納得する部分もあり片倉に
「ひとまず署に戻ろう。それと・・相談に来た女の子たちにも話しを聞かないとな・・」
片倉は
「小林さんの方はどうでした?」
と尋ねてきた。俺は周りに誰もいない事を確認して片倉に言った。
「・・ここの連中、何か隠してる・・恐らく」
暫しの沈黙の後、俺と片倉はライブハウスを後にした。
「城東警察の小林と言います。このライブハウスで死体らしき物を見たと相談がありまして、関係者にお話しを伺いたいのですが?」
事務室の奥に座っていた恰幅のいい男が
「警察?先ほども来ていましたが?」
俺は
(制服警官のことか?)
と思い
「ああ!その警官達は現場保存のために急行してもらいました。私は現場調査のために後から来まして・・一応こちらの受付で許可を頂きまして、現場とされる控室を調べさせて貰いました」
途端に恰幅のいい男の顔が曇る。男は
「・・そうですか。でも刑事さん?でいいのかな?それなら受付ではなく社長の私に直接許可を取ってほしかったなぁ・・」
俺は
(この男が社長か?あの表情・・何か知っているな?)
俺は
「申し訳ありません。何しろこの手の捜査は初動が大事でして・・先ずは現場に・・」
そこまで言うと、社長と名乗った男は立ち上がり、机の引き出しから名刺を取り出し俺に差し出した。
「申し遅れました。私がライブハウスを経営しております社長の清水 智哉と申します」
俺は名刺を受け取り、スーツの内ポケットから警察バッジを取り出し、開いて男に見せた。男はバッジを見た後
「これが警察バッジ・・ですか?初めて見ました」
俺はこの手の質問は初めてではないのでいつものように
「バッジを見た人は皆さんそう言いますよ。見ようと思っても見れる物ではないですが・・」
俺は警察バッジをしまい、改めて尋ねる。
「今日こちらのライブを見に来た人から『ライブの後、サインを貰おうと控室に行ったところそこで死体を見た』と相談を受けましてこうして駆けつけた訳ですが?」
男は
「死体?そんなものあるわけがないですよ!そもそも観客はライブの後だろうと控室には入って来れません!内のスタッフが常に会場や廊下にいますから」
俺は
「その相談者が言うには控室に行くまでの間、誰にも会わなかった・・と」
男の顔が再び曇る。俺は
(質問を変えてみるか?)
そう考え
「ちなみに今日のライブ出演者は誰ですか?」
男は
「刑事さんに言ってわかるかなぁ?神木 奏馬(かみき そうま)という若手アイドルですよ。駆け出しではあるんですけど、ちゃんと事務所にも所属しておりまして・・」
俺は
「事務所というと芸能事務所ですか?」
男は
「そうです。芸能界では誰もが知っている事務所でして『桜手(おうて)事務所』ですよ」
俺は芸能関係には疎いので聴いてみた。
「あの・・それほどの事務所なら地上波とか、ライブでももう少し規模の大きいライブからデビューさせるのでは?」
男は
「いきなり大々的にデビューしても実力や実績がないと人気は中々続かないんですよ。桜手もそこはわかっていて、こうして草の根的な活動をしているわけです。そのアイドルは半年程度の活動ですがファンは少しづつ増えていまして・・」
俺は話しを聴ける人間を増やすべく尋ねてみた。
「そのアイドルは普段はどれくらいの人を連れているんですか?・・その、マネージャーとか・・」
男は
「まだ駆け出しですから、刑事さんの言うとおりマネージャーが1人だけです」
俺は
「そのマネージャーさん、今日は?」
と尋ねたところ、男は慌てて
「そ、そうだ!今日はもうライブハウスを閉めようと思っていたんです!申し訳ありませんが本日はこのへんで・・」
俺は男の目を真っ直ぐに見つめた。男の目はぎこちなく泳いでいた。
「・・わかりました。長々と申し訳ありませんでした。また、後日お話しを聴きにお伺いしてもいいですか?」
俺がそう言うと男は
「勿論ですよ!時間の許す限り協力いたします」
俺はその言葉に
「いやぁ、ご協力感謝します。では失礼します」
そう言い事務室を後にした。
1階に降りると片倉もスタッフに話しを聴き終わっていたようで受付近くに立っていた。俺が
「どうだった?」
とだけ聞くと片倉は首を左右に振り
「ダメですね。誰に聞いても同じ答えです。『死体など見ていない』その一点張りです」
俺は多少納得する部分もあり片倉に
「ひとまず署に戻ろう。それと・・相談に来た女の子たちにも話しを聞かないとな・・」
片倉は
「小林さんの方はどうでした?」
と尋ねてきた。俺は周りに誰もいない事を確認して片倉に言った。
「・・ここの連中、何か隠してる・・恐らく」
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