ヘルメースの遺児

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初動

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署に戻った俺は片倉と別れた後、聴き取りをした婦警を訪ねた。地域課に行き、取り次ぎを頼むと若い婦警が
「奥田巡査長!小林さんが巡査長を口説きに来ましたよ!どうします?」
俺は
(他に言い方はあるだろうが!普通に取り次いでくれればいいんだ!)
心の中で取り次ぎの婦警をなじる。奥田巡査長が俺の前まで歩いてきて尋ねてきた。
「小林さん。私は既婚者ですよ?ヘタすれば監察室行きですよ?・・・それで、現場に行ってみてどうでした?」
俺は『監察室』という言葉に意地の悪さを感じながらも
「巡査長!俺も亡き妻とは今でも夫婦だと思ってますよ!それで、先行した警官達から聞いたのかもしれませんが、死体を発見できませんでした。ですが、ライブハウス関係者から話を聴くと不審な点が出てきて・・・」
そこまで話すと奥田巡査長は話を遮り
「そこで・・・あの子達に話を聴いてみたいと?」
俺は頷く。そして巡査長に
「女の子達に話を聴く前に、巡査長にも聞きたいことが・・・確認したいことがあって」
奥田巡査長は
「聞きたいこと? ・・何でしょうか?」
俺は
「女の子達から聴き取りをした時、不審な点は感じませんでしたか?・・例えば、狂言じみてるとか?」
奥田巡査長は少しムッととした表情で
「小林さん!私も警察官です。確かに始めは疑いもしましたが、あの子達が嘘を言っていない事は今でも確信してます!」
それに、と奥田巡査長は言葉を続ける。
「友達同士連れだって嘘を言いに警察まで来るとは思えません。しかも、『死体を見た』なんて・・」
俺は、巡査長の目を真っ直ぐに見つめていた。そして確信めいた物を感じた。俺はふと浮かんだ疑問を巡査長に聞いてみた。
「聴き取りをした女の子達なんですが、友達?なんですよね?」
巡査長は
「SNSで知り合ったと言ってました。3人共年齢は違いますが共通の『アイドル推し』で意気投合したとか・・」
(やはり話しを聴かないとな)
俺は巡査長に
「連絡先・・教えてもらえますか?」
と尋ねるも
「私のですか?」
巡査長の言葉に驚き、咄嗟に俺は
「あなたの連絡先な訳ないでしょう!聴き取りした女の子達のですよ!」
そう言うのが精一杯だった。巡査長が
「冗談ですよ。少し待ってて下さい」
巡査長は自分の机の上のファイルをめくると、メモ用紙に書きこみ始めた。そしてメモ用紙を俺に渡すと
「これでいいですか?」
との声に俺は
「仕事が早くて助かります!早速行ってきますよ!」
その場を立ち去ろうとするも、巡査長が俺の背中に向けて声をかけてきた。
「小林さん!女の子達には私から連絡しておきます。コワイおじさんが話しを聴きに行くからと。あなたに睨みつけられたら女の子はショック死するかもしれないので」
俺は振り返り
「俺と話す前に、『ショック死しないように心臓叩いておいて』と伝えておいて下さい」
とだけ返した。俺は事務室を出ると
「さて・・女の子達に聴き取りに行く前に、鑑識にも行かないとな・・」
俺は憂鬱な気分で2階に上がって行った。
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