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本編
④
あれから九年が経ち。
俺とルドヴィックはともに十九歳になり、ついにシナリオ開始の時期となった。
シナリオ通りなら屋敷に引きこもっている俺だが、現状――かなりアグレッシブに動き回っている。
「ルドヴィック!」
カンブリーヴ伯爵家の庭園。ベンチに横になったルドヴィックが、俺の声に反応するように上半身を起こす。
対する俺は仁王立ちだ。
「ノアム?」
「なんで来るとき連絡入れてくれないんだよ」
「七割は入れてるだろ」
ルドヴィックの隣に腰を下ろした俺に対し、ルドヴィックが言い返してくる。
な、七割じゃなくて十割にしてくれ!
「残りの三割も追加で」
「それは無理だ。突然ノアムに会いたくなるときもあるんだよ」
俺の肩に頭を預け、上目遣いで俺を見るルドヴィック。
……俺はこの顔に弱い。とても弱い。ゆえになにも反論できず、黙ることになる。
「っていうか、お前が突然来るのって俺が来客対応してるときがほとんどだよな」
「偶然じゃない? 来客予定なんて俺が知る由もないし」
「そうなんだけどさぁ……」
世話役のメイドに来訪を知らされるたびに、めちゃくちゃビビるんだよなぁ。
「ノアムは俺を優先してたらいいんだよ」
「……そういうのダメだろ」
ゲームでは人とつかず離れずの距離を保つはずのルドヴィック・トゥラチエ。しかし、この世界では全然違う。
交流は最低限で、ずっと俺の後ろを引っ付いている。そして、俺と俺の家族以外にはとても愛想が悪い。
「ルドヴィックも……ほら。交流をしなくちゃ。思わぬところに運命の出逢いがあるかもじゃんか」
たとえば、リュリュとか、リュリュとか、リュリュとか――。
「必要ない。人との交流なんて面倒なだけだ」
「そういわずにさぁ」
ルドヴィックがさりげなく俺の手を取る。流れるように指を絡めて、ぎゅっと握る。
幼いころからの些細なふれあい。最近では増えているような気もするが。
「それに、運命の出逢いはもう済ませてる」
「――え?」
けど、いきなりの爆弾発言に俺は目を見開いた。
もうすでにリュリュと出逢ってるのか!?
(確かに出逢っててもおかしくはないけど、この時期でそこまで親しくなるか? 今だとよくて知り合いでは?)
ルドヴィックは攻略難易度がとても高く、そう簡単には攻略できない。
知り合いから友人、友人から恋人――という段階をステップアップするためには、選択肢のすべてに正解せねばならない。そして、フラグを一つたりとも取り忘れてはならない。
(いやいや、俺というイレギュラーな存在もいるわけだし。ルドヴィックの性格もシナリオとはかなり違う。多少攻略方法が変わっていてもおかしくはない――はず)
うん、そうだ。ゲーム通りに進んでいるはず!
「だから、俺にはこれ以上運命なんていらない」
「そ、っか」
親友としては、運命に出逢ったことをすぐに報告してほしかったが――仕方がない。
俺も経験してるからわかるけど、今の時期はとても面倒だ。羞恥心が邪魔をしたのだと思うと、許せる。
「でも、今後は俺にも教えてよ。俺はルドヴィックの運命を応援するから」
顔をぐっと近づけると、ルドヴィックが不満そうに眉をひそめる。え、そんなに俺に教えるのが嫌?
(それとも嫉妬ですか? リュリュに俺が近づくのが嫌ですか?)
だったらまぁ――ありかも。
俺の目標は当て馬ではなく、友人代表スピーチをすることだ。邪魔はしません。
「もちろん、ルドヴィックが嫌ならいいんだよ。俺、お前の心をかき乱したいわけじゃないしさ」
遠回しの『当て馬にはなりません』発言である。
「俺たち『親友』だし」
笑いかけると、ルドヴィックがムスッとする。
……俺が親友なのが嫌なのだろうか。
(考えてみたら、そりゃそうだよ。十歳のころに親友だって言い合っただけで、ルドヴィックは流されただけかもだし)
もちろん、そうだったとしたら――悲しい。でも、仕方ないことだ。我慢我慢。
「――ノアムはさ」
ルドヴィックが声を上げた。驚いてルドヴィックを見つめると、青の双眸が俺を見つめている。
吊り上がった目は、俺を責めるような色を宿していた。
「俺のこと本当に『親友』って思ってるの?」
俺とルドヴィックはともに十九歳になり、ついにシナリオ開始の時期となった。
シナリオ通りなら屋敷に引きこもっている俺だが、現状――かなりアグレッシブに動き回っている。
「ルドヴィック!」
カンブリーヴ伯爵家の庭園。ベンチに横になったルドヴィックが、俺の声に反応するように上半身を起こす。
対する俺は仁王立ちだ。
「ノアム?」
「なんで来るとき連絡入れてくれないんだよ」
「七割は入れてるだろ」
ルドヴィックの隣に腰を下ろした俺に対し、ルドヴィックが言い返してくる。
な、七割じゃなくて十割にしてくれ!
「残りの三割も追加で」
「それは無理だ。突然ノアムに会いたくなるときもあるんだよ」
俺の肩に頭を預け、上目遣いで俺を見るルドヴィック。
……俺はこの顔に弱い。とても弱い。ゆえになにも反論できず、黙ることになる。
「っていうか、お前が突然来るのって俺が来客対応してるときがほとんどだよな」
「偶然じゃない? 来客予定なんて俺が知る由もないし」
「そうなんだけどさぁ……」
世話役のメイドに来訪を知らされるたびに、めちゃくちゃビビるんだよなぁ。
「ノアムは俺を優先してたらいいんだよ」
「……そういうのダメだろ」
ゲームでは人とつかず離れずの距離を保つはずのルドヴィック・トゥラチエ。しかし、この世界では全然違う。
交流は最低限で、ずっと俺の後ろを引っ付いている。そして、俺と俺の家族以外にはとても愛想が悪い。
「ルドヴィックも……ほら。交流をしなくちゃ。思わぬところに運命の出逢いがあるかもじゃんか」
たとえば、リュリュとか、リュリュとか、リュリュとか――。
「必要ない。人との交流なんて面倒なだけだ」
「そういわずにさぁ」
ルドヴィックがさりげなく俺の手を取る。流れるように指を絡めて、ぎゅっと握る。
幼いころからの些細なふれあい。最近では増えているような気もするが。
「それに、運命の出逢いはもう済ませてる」
「――え?」
けど、いきなりの爆弾発言に俺は目を見開いた。
もうすでにリュリュと出逢ってるのか!?
(確かに出逢っててもおかしくはないけど、この時期でそこまで親しくなるか? 今だとよくて知り合いでは?)
ルドヴィックは攻略難易度がとても高く、そう簡単には攻略できない。
知り合いから友人、友人から恋人――という段階をステップアップするためには、選択肢のすべてに正解せねばならない。そして、フラグを一つたりとも取り忘れてはならない。
(いやいや、俺というイレギュラーな存在もいるわけだし。ルドヴィックの性格もシナリオとはかなり違う。多少攻略方法が変わっていてもおかしくはない――はず)
うん、そうだ。ゲーム通りに進んでいるはず!
「だから、俺にはこれ以上運命なんていらない」
「そ、っか」
親友としては、運命に出逢ったことをすぐに報告してほしかったが――仕方がない。
俺も経験してるからわかるけど、今の時期はとても面倒だ。羞恥心が邪魔をしたのだと思うと、許せる。
「でも、今後は俺にも教えてよ。俺はルドヴィックの運命を応援するから」
顔をぐっと近づけると、ルドヴィックが不満そうに眉をひそめる。え、そんなに俺に教えるのが嫌?
(それとも嫉妬ですか? リュリュに俺が近づくのが嫌ですか?)
だったらまぁ――ありかも。
俺の目標は当て馬ではなく、友人代表スピーチをすることだ。邪魔はしません。
「もちろん、ルドヴィックが嫌ならいいんだよ。俺、お前の心をかき乱したいわけじゃないしさ」
遠回しの『当て馬にはなりません』発言である。
「俺たち『親友』だし」
笑いかけると、ルドヴィックがムスッとする。
……俺が親友なのが嫌なのだろうか。
(考えてみたら、そりゃそうだよ。十歳のころに親友だって言い合っただけで、ルドヴィックは流されただけかもだし)
もちろん、そうだったとしたら――悲しい。でも、仕方ないことだ。我慢我慢。
「――ノアムはさ」
ルドヴィックが声を上げた。驚いてルドヴィックを見つめると、青の双眸が俺を見つめている。
吊り上がった目は、俺を責めるような色を宿していた。
「俺のこと本当に『親友』って思ってるの?」
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