【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

文字の大きさ
3 / 73
第1部 第1章 出逢う

 しばらく歩いた僕は、クレメンスさんに大きな扉の前に連れてこられていた。

 扉の前を塞ぐように三人の騎士さんが立っている。彼らはクレメンスさんのお顔を見て、一礼した。

「魔法使いの到着だ。――通せ」

 クレメンスさんの言葉に従うように、二人の騎士さんが左右に移動する。残りの騎士さんが合図をすると、二人がかりで扉を開いた。重厚な扉はごぅぅっと大きな音を立てて開いていく。

(――うわぁ!)

 扉が開くと、奥の空間が見える。

 広々とした空間。床には一直線に絨毯が敷かれている。絨毯の縁には金色の刺繍が施されていて、とても美しい。

 大きな窓からは陽の光が差し込んでいて、空間を明るく照らしていた。空間はどこもかしこもすごくきれいで、視線を引く。

 そんな中で最も視線をくぎ付けにするのは、絨毯の先にある一段高くなっている場所。玉座。

 見たこともないような豪華な椅子に腰かけているのは、四十代くらいに見える男性。彼の放つオーラはまさに強者のもの。

「陛下。こちら、アクセル氏が推薦してきた弟子になります」

 クレメンスさんが首をたらし、男性に僕を紹介する。椅子に腰かけた男性はすぐに立ち上がった。

 背丈はとても高く見え、体格もがっしりとしている――のだろう。遠目すぎて、よくわからないけど。

「――キミが例の弟子か。よい、こちらに来なさい」
「は、はい!」

 上ずった声で返事をしつつ、僕はゆっくりと足を踏み出し、絨毯の上を歩いた。

 玉座の前には二人の男性が立っていた。一人は僕に背中を向けており、顔が見えない。もう一人は僕のほうを見て、目を細めて笑いかけてくれている。対する僕は軽く礼をするのが精いっぱいだ。

 男性――陛下の前に跪く。礼儀作法は一通り師匠から教わっている。上手に出来ているかは未知数だけど。

「ジェリー・デルリーンと申します。本日はお会いでき、光栄でございます」

 声の震えを抑えながら、僕は習ったあいさつを一言一句間違えないように言う。噛まないようにしなくちゃってことで頭がいっぱいになる。

「そこまでかしこまらなくてもよい。立ち上がり、顔を見せなさい」

 陛下の命に従わないという選択肢はない。僕は立ち上がり、陛下をまっすぐに見据えた。

「全く、あの男の自由奔放さにも困ったものだな。しかし、弟子がいるとは知らなんだ。クレメンス、そういう話は聞いたことがあるか?」
「いえ、一言も聞いておりません」

 いつの間にか陛下のすぐそばに移動していたクレメンスさんが、呆れたように言葉を返す。

 この人の言葉は、やっぱり棘がある気がする。師匠が嫌いなのかも。

「全員揃ったな。今回の任務の説明をしよう」

 陛下が再度椅子に腰かけ、脚を組んだ。そのまま頬杖をつくと、視線だけでクレメンスさんを促す。

「かしこまりました、陛下。今回の任務につきましては――」

 クレメンスさんが説明をする。

 しかし、一つ言いたい。

(言葉だけだとわからないことも多いんだけど――)

 せめて小冊子みたいなものが欲しい。旅行じゃないから、難しいのかな。

 隣をちらりと窺うと、先ほどにっこりと僕に笑いかけてきた人は真剣にお話を聞いている。もう一人のほうは、退屈そうにあくびをしていた。

 陛下の前なのに、いいのかな。

「で、ありまして。最近魔族、魔物による被害が多数報告されております。そのため、一時的にでも魔物を倒し魔族側に忠告を――」

 クレメンスさんのグダグダとした説明に眠くなり始めていると。どこからか「ふわぁ」という大きなあくびが聞こえてくる。

 僕の顔から血の気が引く。もしかして、さっきの人が――?

 先ほどの彼のほうに視線を向けた。ただ、彼は退屈そうな表情こそしているものの、今はあくびをしていないよう。

「――なに?」

 目を細めた彼が僕を見つめ、小声で問いかけてくる。

 僕は慌てて首を横に振った。彼の吊り上がった目が怖い。瞳自体は黒曜石みたいできれいなのに。

「い、いえなにも……」

 今の僕には誤魔化すのが精いっぱいだ。

 僕たちが見つめ合うような形になっていると、玉座のほうから「わかりにくい」と端的な言葉が聞こえてきた。

「お前の説明は長ったるい。回りくどくて、もう聞き飽きた」
「ですが、陛下」
「若者の時間をもらっているんだ。出来る限り素早く済ませるのが年上の務めだろう」

 言葉を切り、陛下があくびをする。あ、先ほどのあくびって陛下のものだったんだ。

「この男が悪いな。とにかく、魔物の被害が多発している。魔物、場合によっては魔族を倒してほしいということだ。万が一変更点などがあれば、そのたび遣いを出そう」
「――かしこまりました」

 なにも反応できない僕と黒曜石の彼を放って、唯一真剣にお話を聞いていた彼が返事をする。

「この後は自己紹介でもしてくれ。初対面のやつもいるようだからな」

 陛下は場を締めくくるように大きな声で今後の流れを説明する。

 ――心の底からほっとした。

 ただ唯一、ほっと出来ないことがある。

(絶対に目をつけられたよ……)

 隣から感じる鋭い視線。先ほど軽く言葉を交わした黒曜石のような瞳の彼だ。

 元々彼のことをちょっと怖く感じていたのに。じっと見られてしまうともっと怖くてたまらない。
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!