【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

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第1部 第1章 出逢う

(もしかして、僕の食べ方が見苦しかった――?)

 最初に思い当った可能性に、僕は顔からサーっと血の気が引くのを感じた。

 サンドイッチを持ったまま固まる僕に、エカードさんが「悪い!」と慌てたように謝罪の言葉を口にする。

 違う。悪いのは僕だ。僕がいるだけで、この空間は葬儀場みたいなものだろうから。

「すみません。僕の食べ方、見苦しかったですよね」

 身体を縮めて言うと、エカードさんは目を見開いた。

「違う!」

 彼はやっぱり優しい。僕みたいな羽虫くらいの存在に気を遣ってくれているんだから。

「ただ、そうだな。お前の一口があんまりにもちっさいなぁって思っただけだよ」

 頬を掻くエカードさんは言葉を付け足す。

 一口が小さい。

「そうだな。なんだ、小鳥がついばんでいるのかってくらいだ」

 キリアンさんもぶっきらぼうに同意する。僕の一口は小さいわけではないはず。

「僕が小さいというよりは、みなさんが大きすぎるだけのような気が」

 先ほどのキリアンさんの豪快な食べっぷりを思い出して、僕は零した。

 すると、エカードさんが声を上げて笑い始めた。僕とキリアンさんは驚きつつもエカードさんを見つめる。

「いやぁ、ジェリーは自覚がないみたいだな。浮世離れした儚げな美人さんだ」
「美人だなんて、そんな……」

 エカードさんは口が本当に口が上手い。僕は醜い容貌をしていて、見るに堪えない顔立ちだ。

 僕自身この顔を隠したくて、目元が見えないようにと前髪を伸ばしているくらいだから。

「その前髪は上げたほうがいいと思うよ。そっちのほうが可愛い」
「か、わいい?」

 生まれて二十年。一度も言われたことのない単語に僕は放心する。

 可愛い? 僕が? 羽虫以下の存在の僕が?

「エカード。コイツ、固まってるぞ。さすがに男に可愛いはマズイだろ。不快になる」

 キリアンさんが僕の態度を違う意味に解釈した。違う。全然不快になんてなってない!

「ち、違います! ただ可愛いなんて言われたことがなくて――!」

 首を横に振って、僕は自分の気持ちを言葉にする。

 不快になったわけじゃなくて、驚いただけだって。それが伝わったらいいんだけど。

「そう? 美人とか可愛いとか、言われないか?」
「言われたことありません! 一度たりとも!」

 必死に否定を繰り返した。だって、僕のせいでエカードさんの美醜感覚がおかしいなんて思われたら申し訳ない。

「僕はそこら辺の羽虫以下です! だから可愛いとか、きれいとか。そういうのと僕は縁遠いです!」

 首を横に振り続けて、僕は言う。今度はエカードさんが驚く番だったらしい。

 でも、彼はすぐに僕に痛々しいものを見るような視線を向けてくる。

「なんだろうな。自己肯定感が底辺というか、地面にめり込んでいるというか」
「はい、もう地層の奥深くにめり込んでいます……」

 師匠にもよく指摘される。

 だが、自己肯定感なんてものは幼少期に培われていくものだ。僕はすでに二十歳。今更培うことなんて出来ない。

「独特の言い回しだな」

 エカードさんが頬を引きつらせている。彼を一瞥したキリアンさんは、「はぁ」と大きなため息をつく。

「別に自己肯定感が地面にめり込んでいようが、地層の奥深くにめり込んでいようが。実力さえあればいいだろ」
「そりゃそうだけれどさぁ」
「俺らは仲良しこよしをするわけじゃないんだ」

 キリアンさんの言葉の冷たさが、まるで距離をおきたいと言っているように聞こえる。

 そうだ。彼の言うことは正しい。

「そ、そうですよね」

 わかっている。わかっていたけど、どうしてか気持ちが沈む。

 お二人の人柄について、不安ばかり募っていた。ただ、話してみると案外フレンドリーというか、面白い人たちだった。

 だから、僕は勘違いをしてしまったんだと思う。――もしかしたら仲良くなることが出来るかもって。
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