【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

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第1部 第2章 旅の始まり、変化する関係

 けど、やっぱり僕は気が弱い。

 二人の視線が僕に集まったのを感じて、頭の中が真っ白になっていく。

 視線を地面に向け、「えっと」とつぶやいては、口をはくはくと動かす。

「ぼ、くは。キリアンさんがその。本当は優しい人だって思ってますからっ!」

 だからエカードさんのことを心配してもおかしくはないんだよ――って伝えたつもりだった。

 もちろん、きちんと伝わったのかはわからない。そもそも僕の小さな声が彼らに届いたかもわからない。

(――師匠、助けて!)

 心の声で師匠に助けを乞う。

 口に出ていないし、師匠に聞こえるわけもない。つまり、助けは来ない。むしろ、師匠のことだ。

 ――面白がって見ているだけだ。わかる。

「お前なぁ」

 キリアンさんが呆れたように僕を見る。

 そして、彼の手が僕の頭に載せられた。軽く叩かれ、僕は彼の目を見つめる。キリアンさんは僕を見つめている。

 彼の黒色の目はちょっと優しそう。まるで、励ましてくれているみたいだ。

「気が弱いのによくこの空気の中、口を挟んだな」

 エカードさんも声をかけてくる。

 僕だって口を挟まなくても済むのならば、口を挟みたくはなかった。ただ、邪険な空気が嫌だったというだけ。

「だって、邪険な空気のままの旅なんて嫌じゃないですか……」

 この旅の存在自体に不安が尽きないというのに。

 視線を彷徨わせつつ意見を述べると、「ぷっ」と噴き出すような声が耳に届いた。

 どうやらエカードさんが笑っているらしい。彼は面白いものを見るような目で僕を見つめている。

「まぁ、そうだな。ごめんな。少しやけになってた」

 エカードさんが僕に笑いかけて言う。次にキリアンさんに視線を向け、肩をたたいた。

「お前も悪かったな。蹴りは手加減してほしかったけど」
「口で言っても分からんだろうと思ったんだよ」

 二人の会話は先ほどよりも穏やかなものになっている。

 よかった。心の底から安心して、僕はほっと息を吐く。

「俺が出来るのはアイツが今後幸せになれるように願うだけだよな」

 空を見上げたエカードさんがつぶやく。

 なんだか、それって切ない気もする。

「切ないですね」
「そうだな」

 僕の言葉にエカードさんが同意する。

 なんだろうか。空気がしみじみとしている。邪険なものよりはマシだけど、これはこれで辛い。

「ジェリーって、今まで恋人がいたことがないんだな」

 エカードさんがしみじみとした空気を振り払うように確認してくる。

 そこを拾わないでほしいという気持ちもある。いや、空気が変わるだけマシか。

「はい。僕は子供のころから師匠の元で住み込みで弟子をしていて。師匠は偏屈な人嫌いで、辺境の森に住んでて」
「出逢いがないってやつか」

 確かにその表現が正しいかも。

 僕には出逢いなんてなかった。それに僕の容姿は優れたものではないし、僕自身もあまり人が好きじゃないし。

「でも別に、絶対に恋人がほしいっていうわけじゃないんです」
「そうなのか?」
「僕は身の丈に合った生活が出来たら十分ですから」

 今は恋人云々といよりも、師匠の元に無事に帰ることのほうが大切だしね。

「ただ、たまに思いはしますよ。僕のことをすごく愛してくれる人がいたら、幸せだろうなぁって」

 僕は家族との仲がよくない。家族は僕のことを「出来損ない」とか「醜い」とか罵ってばかりだった。

 そのせいで、僕は誰かを愛し愛するという関係にひそかに憧れていた。

(師匠の愛は、なんか変なものだし)

 もちろん嬉しいものであることに間違いはないのだけど。

 僕が求めている愛と師匠の愛はなんか違う気がする。――多分。

「だからって、僕がそれを望むのはなんか違う気がするんです。僕は今だって十分幸せですから」

 これ以上の幸せは、僕には抱えることが出来ない大きさになってしまう。

 僕の言葉に返事をしたのはエカードさんではなかった。

「違うもなにもないだろ」
「え――?」
「人は愛されたいって願うのが普通だ」

 隣から聞こえてくる声は間違いなくキリアンさんのもの。

 彼は僕のことをじっと見て、口を開いた。
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