19 / 73
第1部 第3章 優しい人、不思議な気持ち
③
あの後、場は一旦解散となった。
旅の立て直しということで、僕は治癒に使う道具を買い足すことに。
(治癒魔法を使うほどでもないときは、普通に治療したほうがいいもんね)
宿から少し離れたところにある大きめの通り。宿の人曰く、ここなら大体のものは売っているということだった。
「そもそも、治療に使う道具ってどこに売ってるんだろ?」
ぽつりと言葉を零してしまう。
雑貨屋とかなんだろうか? それとも、治癒道具の専門店でもあるんだろうか?
……まったく、わからない。
「とりあえず、適当に歩いて――」
それっぽいお店を見つけたら中を覗いてみよう。
僕がそう思って歩き出そうとしたとき。後ろから「ジェリー」と名前を呼ばれる。この声にはとても聞き覚えがあった。
振り返って、僕は声の主を発見。彼を見つめる。
「キリアン」
僕の視線の先には仏頂面のキリアンがいた。
「どうしたの? キリアンも買い物?」
彼のほうに足を運んで、首をかしげて問いかけてみる。キリアンは「いや」と僕の言葉を否定した。
じゃあ、ここが目的地へと向かう通り道だったんだろうか?
「ということは、この通りを突っ切った先が目的地なんだね」
なんだろう。こういう風に話していると、本当に友人みたいだ。
感動を覚える僕をよそに、キリアンは首を横に振る。
「目的地なんてない」
「え」
「というか、今、目的地に着いた」
キリアンの言葉に僕は辺りをきょろきょろと見渡す。
ここが、目的地?
「えっと」
ここは大通りの入り口ってだけなんだけど。
不思議に思う僕を見て、キリアンが口元を緩める。彼の仕草に僕の心臓は一々反応するように大きく音を鳴らす。
「俺はお前を追いかけてきただけだ」
キリアンは僕の胸をとんっとたたいて言う。
――僕を、追いかけて来た?
え、もしかして。
「わ、忘れ物でもあったかな……?」
もしかしたら、僕は先ほどの場所に忘れ物でもしたのかもしれない。
不安になって手に持った小さなかばんを慌てて漁る。――必要なものは全部そろっていた。
「キリアン、僕のことをからかったの?」
ジト目になりつつ問いかける。まぁ、僕の場合は前髪が長いせいでジト目になっているのが見えないだろうけど。
「別にからかってなんてないぞ」
彼は僕の言葉を否定する。その後、僕の肩に手を置いた。優しくそっと、壊れ物でも扱うかのような触れ方だ。
キリアンが僕の耳元に自身の顔を近づける。動きの滑らかさに、僕は抵抗することを忘れていた。
「――俺を放って、一人でどこかに行くのは責任者失格だろ?」
甘くて、溶かすような。色気をまとった声でキリアンが囁く。
せ、責任者? いつから? 誰が?
「ぼ、僕は一体いつから責任者に……」
そもそも、僕はいったいなんの責任者なんだろうか。
僕、そんなのになった覚えはないんだけど!?
「責任者だろ。もしくは、俺を管理する管理人。あるいは保護者」
「は、はぁ?」
「それとも主と言ったほうがいいのか?」
意味がちっともわからない。
(責任者? 管理人? 保護者? 主?)
言葉の意味がまったくわからない。どうしてキリアンの口からこの単語たちが出てくるのかもわからない。
なにも言えない僕を無視して、キリアンは僕の手をつかんだ。
「ほら、行くんだろ。俺もついていく」
「あの……」
ちょっとは言葉の意味を説明してください!
僕の心の底からの叫びは、言葉になることもなくスーッと胸の中に消えていった。
旅の立て直しということで、僕は治癒に使う道具を買い足すことに。
(治癒魔法を使うほどでもないときは、普通に治療したほうがいいもんね)
宿から少し離れたところにある大きめの通り。宿の人曰く、ここなら大体のものは売っているということだった。
「そもそも、治療に使う道具ってどこに売ってるんだろ?」
ぽつりと言葉を零してしまう。
雑貨屋とかなんだろうか? それとも、治癒道具の専門店でもあるんだろうか?
……まったく、わからない。
「とりあえず、適当に歩いて――」
それっぽいお店を見つけたら中を覗いてみよう。
僕がそう思って歩き出そうとしたとき。後ろから「ジェリー」と名前を呼ばれる。この声にはとても聞き覚えがあった。
振り返って、僕は声の主を発見。彼を見つめる。
「キリアン」
僕の視線の先には仏頂面のキリアンがいた。
「どうしたの? キリアンも買い物?」
彼のほうに足を運んで、首をかしげて問いかけてみる。キリアンは「いや」と僕の言葉を否定した。
じゃあ、ここが目的地へと向かう通り道だったんだろうか?
「ということは、この通りを突っ切った先が目的地なんだね」
なんだろう。こういう風に話していると、本当に友人みたいだ。
感動を覚える僕をよそに、キリアンは首を横に振る。
「目的地なんてない」
「え」
「というか、今、目的地に着いた」
キリアンの言葉に僕は辺りをきょろきょろと見渡す。
ここが、目的地?
「えっと」
ここは大通りの入り口ってだけなんだけど。
不思議に思う僕を見て、キリアンが口元を緩める。彼の仕草に僕の心臓は一々反応するように大きく音を鳴らす。
「俺はお前を追いかけてきただけだ」
キリアンは僕の胸をとんっとたたいて言う。
――僕を、追いかけて来た?
え、もしかして。
「わ、忘れ物でもあったかな……?」
もしかしたら、僕は先ほどの場所に忘れ物でもしたのかもしれない。
不安になって手に持った小さなかばんを慌てて漁る。――必要なものは全部そろっていた。
「キリアン、僕のことをからかったの?」
ジト目になりつつ問いかける。まぁ、僕の場合は前髪が長いせいでジト目になっているのが見えないだろうけど。
「別にからかってなんてないぞ」
彼は僕の言葉を否定する。その後、僕の肩に手を置いた。優しくそっと、壊れ物でも扱うかのような触れ方だ。
キリアンが僕の耳元に自身の顔を近づける。動きの滑らかさに、僕は抵抗することを忘れていた。
「――俺を放って、一人でどこかに行くのは責任者失格だろ?」
甘くて、溶かすような。色気をまとった声でキリアンが囁く。
せ、責任者? いつから? 誰が?
「ぼ、僕は一体いつから責任者に……」
そもそも、僕はいったいなんの責任者なんだろうか。
僕、そんなのになった覚えはないんだけど!?
「責任者だろ。もしくは、俺を管理する管理人。あるいは保護者」
「は、はぁ?」
「それとも主と言ったほうがいいのか?」
意味がちっともわからない。
(責任者? 管理人? 保護者? 主?)
言葉の意味がまったくわからない。どうしてキリアンの口からこの単語たちが出てくるのかもわからない。
なにも言えない僕を無視して、キリアンは僕の手をつかんだ。
「ほら、行くんだろ。俺もついていく」
「あの……」
ちょっとは言葉の意味を説明してください!
僕の心の底からの叫びは、言葉になることもなくスーッと胸の中に消えていった。
あなたにおすすめの小説
【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は?
最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか?
人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。
よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。
ハッピーエンド確定
※は性的描写あり
【完結】2021/10/31
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ
2021/10/03 エブリスタ、BLカテゴリー 1位
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!